魚類学雑誌
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イトヒキイタチウオ属の分類学的再検討
町田 吉彦岡村 収
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1992 年 38 巻 4 号 p. 341-347

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抄録

アシロ科のHomostolusイトヒキイタチウオ属にはH.acer Smith et Radcliffe, 1913とH.japonicus Matsubara, 1943が記載されている.本研究で, 44個体に基づき, 本属の分類学的再検討を行った.標本を産地により3群に分け, 計測・計数形質を比較したが, いずれの数値も3群間で重複した.同時に, これらの数値はH.acerの完模式標本と, H.japonicusの原記載の数値と一致することから, 本属はH.acerのみを含むと判断される.H.acerの計数形質にみられる地理的変異を統計処理した結果, 特に第1鯉弓の平均鯉耙数は, フィリピン・セラム海産の標本が日本産およびチモール海・オーストラリア産の標本に比べ明らかに少ないが, 後2群間には有意差が認められなかった.したがって, 本種はフィリピン海域から南北両方向へ分布を拡大したと考えられる.本種が日本, フィリピン, インドネシア, オーストラリア北西部のインド洋と東部のタスマン海にかけての水深400-700mの海洋底に生息することが判明した.

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