魚類学雑誌
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ニュージーランド周辺海域におけるトガリドチザメの分布と食性
矢野 和成
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1993 年 39 巻 4 号 p. 345-356

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抄録

ニュージーランド周辺海域のチャレンジャープラトウ, ワンガネラバンク, スリーキングズリッジで底延縄漁法により採集されたトガリドチザメの漁獲状況, 水平および垂直分布, 食性に関する研究を行った.採集されたトガリドチザメは, 雌373個体と雄385個体であり, それらの体長範囲は, 雌では440-1092mm, 雄では442-1067mmであった.釣獲率 (釣り針100本当たりの漁獲尾数) は, チャレンジャープラウトでは0.41, ワンガネラバンクでは0.14, スリーキングズリッジでは4.52であった.採集された標本の性比は1: 1であった.100m間隔の水深区分による本種の釣獲率は, 採集された3海域のすべてで500から599mの問で最高であった.海底から釣り針までの位置を違えた4種類の漁具 (海底のおもりから幹縄までの間の縄の長さが0m, 2m, 5m, 10mの4タイプ) による各タイプ別の釣獲率は, 海底に釣り針が接している状態のもの (0mタイプ) が最高で, 釣り針が海底より離れるにしたがって釣獲率が低下していった.胃内容物は, 他のサメ類, 硬骨魚類, 巻貝類, 頭足類, 十脚類, 等脚類, クモヒトデ類海中のゴミのビニール類が出現した.海底から海底付近に設置された釣り針での釣獲率が高いこと, 胃内容物として出現するものの多くが底生性の種類であることから, 本種の索餌層は海底か海底付近であると推定された.

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