魚類学雑誌
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ヨコスジフエダイとタテフエダイの分類学的再検討
岩槻 幸雄赤崎 正人吉野 哲夫
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1993 年 40 巻 1 号 p. 47-59

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抄録

体側に眼状斑を持っヨコスジフエダイと眼状斑を持たないタテフエダイは日本では区別されてきたが, 両者は最近同種としてタテフエダイ, Lutjanus vitta (Quoyet Gaimard) とされた.タテフエダイの特徴は稚魚期に眼状斑を持ち, その眼状斑は成長とともに消えるとされるが, 日本でみられるヨコスジフエダイは生涯この眼状斑を持っており, タテフエダイの記載は不十分である考えられた.そこで両者の再検討を行った.ヨコスジフエダイは体側縦線上に眼状斑を生涯持ち, 前鰓蓋骨後部下縁に小鱗を持たない, 側線鱗数は46上49であり, 背鰭及び臀鰭軟条の伸び率が大きい (背鰭第1軟条1.2-2.0;臀鰭第1軟条1.5-2.2) が, タテフエダイは体側縦線上に生涯眼状斑を持たず, 前鰓蓋骨後下縁に小鱗を持ち, 側線鱗数は49つ2であり, 背鰭及び臀鰭軟条の伸び率が小さい (背鰭第1軟条0.9-1.4;臀鰭第1軟条1.1-1.7) ことで両者は明かに区別出来た.更に両者の分布域は, 台湾西南部及び香港周辺においては重なっているものの, ヨコスジフエダイは南日本から (琉球列島を除く) 山陰地方, 韓国南部, 黄海, 台湾西部及び香港周辺の東アジア大陸棚上の限定した海域にのみ分布するのに対し, タテフエダイはヨコスジフエダイの分布域以外のインド-西太平洋 (日本の琉球列島を含む) の熱帯域から亜熱帯域に広く分布していた.これらの点から, 両者は別種として判断された.尚, ヨコスジフエダイの学名は日本の長崎を模式産地とするL. ophuysenii (Bleeker) が有効であり, タテフエダイの学名はスマトラを模式産地とするL.vitta (Quoy et Gai-mard) が正しい.

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