魚類学雑誌
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キンチャクダイ科の1種Chaetodontoplus duboulayi の水槽内での産卵行動と初期発生
荒井 寛
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1994 年 41 巻 2 号 p. 181-187

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抄録

オーストラリア北部周辺に分布するキンチャクダイ属Chaetodontoplusの1種, C. duboulayiの産卵を初めて水槽内で観察した.雄は, 尾鰭の上下両葉が尖っており, 体側には多数の細い淡色縦線があった.雌の尾鰭後縁は丸く, 体側には多数の淡色点および短い淡色線が散在していた.
1992年3月14日から5月19日まで産卵が観察された.3月14日から4月27日までほぼ毎日, 水槽の水銀灯が消える約50分前から消灯後70分の間に産卵が行われた (18: 40-20: 40).一晩に同じ雌が2回産卵したのを3回確認した.1回の産卵数は5, 000-33, 000粒であった.産卵行動を既知のキンチャクダイ科と比較すると, いくつかの相違点が認められた.雄の唯一の求愛行動である, 頭部を白く変化させ, からだを傾け尾鰭で急速に泳ぎ回ること, そして雌が雄の前ですべての鰭を拡げてさかんに求愛するとともに, 雄と同様な求愛行動を示すことが, 他のキンチャクダイ科魚類にはみられない本種の特徴であった.
卵は無色透明な球形で, 卵径0.92-0.97mm, 分離浮遊性であった.やや黄色い直径0.22-0.24mmの油球が1個認められた.水温25.0-25.4℃で, 24-25時間で孵化した.孵化仔魚は全長2.40-2.63mm, 12+16=28の筋節があり, 楕円形の卵黄の先端が吻より前方へ突出していた.卵黄には亀裂が認められた.油球は卵黄の後端に位置していた.孵化後2日で, ほぼ卵黄を吸収し, 全長2.97-3.17mmでは開口していた.黒色色素が頭部および躯幹部, 先端を除く尾部に一様に分布し, 背側および腹側の膜鰭にも認あられた.本種の孵化後48時間の仔魚は, 色素の分布パターンによって既知のキンチャクダイ科魚類と識別できた.

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