魚類学雑誌
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ウスメバルの初期生活史
永澤 亨小林 時正
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1995 年 41 巻 4 号 p. 385-396

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抄録

各種ネット採集で得られた標本に基づいてウスメバル仔稚魚の形態発育史を記載するとともに, 分布, 食性などについての知見を取りまとめた.本種仔魚は脊索長4.5mm前後で産出され, 4.6-7.9mmにかけて脊索後端が屈曲する.背鰭および臀鰭の最終棘条の棘化を指標とする変態は体長16-20mmで起こり, 体長22mm以上ではすべての個体が浮遊期稚魚となっていた.頭部の各棘要素は仔稚魚期を通して比較的小さい.前屈曲期から変態期 (体長4.5-18mm) の仔魚は主に表層で浮遊生活をおくる.体長20-40mmの浮遊期稚魚は流れ藻に随伴する.流れ藻への移動・蝟集は主に体長16-20mmの変態期に行なわれるものと判断されるが, このプロセスには潮目等が仔魚の集積場所として機能している可能性が示唆された.前屈曲期から屈曲期にかけてのウスメバル仔魚は主にかいあし類のノープリウスを, 後屈曲期以降の仔稚魚はParacalanus sp.を主に摂餌し, 流れ藻に随伴する浮遊期稚魚についてもこの傾向は変わらなかった.日本海におけるウスメバル仔稚魚の出現域は対馬海峡から津軽海峡にかけての本州沿岸域に広く認められるが, 沖合の冷水域には出現しない.

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