1995 年 41 巻 4 号 p. 437-445
最近, 養殖用種苗としてさかんに日本に移入されている中国産 “スズキ” について, 日本産のものとの形態的および遺伝的差異について調べた.外部形態については, いくつかの形質において両者に大きな差異が認められ, 計数形質の相違が顕著であった.特に, 側線有孔鱗数と鰓耙数は明瞭に相違し, これら2形質の組み合わせによって両者を完全に識別することが可能であった.遺伝形質としてアイソザイムを用い, 20遺伝子座を推定したが, このうちPROT-1*遺伝子座では遺伝子の完全置換, GPI-1*とLDH*遺伝子座では遺伝子頻度の著しい相違が認められた.アイソザイム遺伝子による両集団間の遺伝的距離 (D値) は0.174となり, 種間の水準に達していた.これらの形態的および遺伝的相違により, 中国産のものはスズキLateolabrax japonicusとは別種である可能性が示唆された.