魚類学雑誌
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日本産硬骨魚類の甲状腺に就いて
本間 義治
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1957 年 6 巻 4-6 号 p. 113-120

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抄録

新たに日本産硬骨魚類6種 (マサバ, キハダ, マカジキ, イシダイ, コブダイ, ホテイウオ) の甲状腺を記載し, 更に他の資料を加えて, 硬骨魚類甲状腺の形状や組織構造について議論した。
1.キハダとマカジキの甲状腺の形態は, 夫々既報のマグロとバショウカジキのそれに似ており, 腹動脈上, 第1, 第2入鰓動脈の分岐部に位置して, 前後両葉より成る緻密な軟塊である。
この様な形態の甲状腺は, マサバ, マルソウダ, シイラ, ブリ, ヒラマサなどに見られる。
2.イシダイとコブダイの甲状腺は, 前後両要素の区別が明瞭のまゝ一塊となつており, ホテイウオでは, 完全に一葉から成つている。これ等の事実は, 腹動脈より派生する入鰓動脈の状態に支配されているものと思われる。
3.体重1kg当りの甲状腺重量は, マサバの9.00mgを最低に, ホテイウオの52.5mgを最大とし, 既報の4種を加えた10種類につき平均すると29.07mgとなる。
4.本報した6種の魚類中, 機能亢進の甲状腺組織像を示したのはコブダイのみで, 他の5種はいずれも正常の活動状態にあつたと考えられる。塊状の甲状腺を有つ魚類では, 組織像のみによって機能の状態を正しく判断する事は困難である。

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