魚類学雑誌
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ビワ湖産コアユの生殖腺における週年変化
本間 義治田村 栄光
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1962 年 9 巻 1-6 号 p. 135-152

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抄録

ビワ湖産コアユの生殖腺にみられる季節的変化について, 組織学的に観察し, つぎのような諸点を明らかにした。
1.コアユの生殖腺の発育は生殖細胞の数の増加および成長と相関しており, そのさい, 外部形態にも変化を伴う。
2.11~12月に得たヒウオの生殖腺は, 腹膜の背方の一部分が膨大したものにすぎないが, 性分化の状態は確かめ得なかった。1月には, 卵, 精巣の区別が明瞭となり, 卵巣内には第1次卵母細胞が, また精巣内には精原細胞が認められる。
3.卵巣卵は, 1~7月までの間は無卵黄期の段階のままにとどまり, 産卵期間近の8~9月になると, 急激に卵黄形成が進展し, 成熟期に入る。卵巣卵の発育度は決して一様ではないが, 体の成長がおさえられたまま成熟させねばならないことが一因らしい。
4.越冬したコアユの卵巣には, 卵巣外被や小葉膜 (卵巣褶) にそって染色仁期に属す若い卵群が認められた。これらは, 多分残渣卵原細胞に由来したものらしい。また, その後これらの卵に卵黄形成が行なわれ, 機能卵にまで発達するかどうかも不明である。越年アユの卵巣卵は, 部分同時発生型に入る。
5.経産卵巣内に存在する閉鎖卵の黄体形成過程において, 肥大した顆粒層細胞は単に, 卵膜や卵黄を侵食, 吸収することに関与しているだけらしい。この黄体形成過程には, A-, B-, C相のものがみられたが, 終局的な黄体と目されるD相のものは, 認められなかった。しかし, 卵巣内の結合組織内には, 排卵痕に由来したと思われる多数の黄色顆粒群が散在していた。
6.1~6月の間に捕えたコアユの精巣には, 成長期の第1次精原細胞, およびこれらの増殖分裂がみられる。夏季には成熟分裂が盛んになり, 生殖期が近ずくと急激に精子形成が進展し, 9月には精子が完成され, 放精が行なわれる。1精巣内のそれぞれの小室における精細胞の発育度の差は, まず認められない。
7.放精した精巣の小室壁には, 新たに作られた休止期の精原細胞層が認められた。これが雄魚の生存期間中に機能的な精子にまで発育するかどうかは不明である。なお, 間充織内の細胞には, 2型が区別できた。

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