有病者歯科医療
Online ISSN : 1884-667X
Print ISSN : 0918-8150
ISSN-L : 0918-8150
高血圧症患者に対する歯科治療の対応 -病院歯科口腔外科医の立場から-
寳田 博
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 1 巻 1 号 p. 45-54

詳細
抄録

人口の高齢化は必然的に有病者歯科医療の需要を高めるが, この分野に対しての病院歯科医療担当者の高い関心とともに, その受け皿としては病院歯科が主体的にならざるを得ない。加令に伴う各種の成人病が増加する中で, 際立って増加しているのが高血圧症であり, 二次性高血圧症や他の全身疾患を合併している症例も多く, これらの患者に対する歯科治療に際しては臨床他科との緊密な連係が不可欠である。近年, 病院施設ではコンピューターシステムによる患者の情報管理が進んでいるが, このことは他科との情報交換を効率よく行うことを可能としており, 高血圧症患者の歯科医療を支える有力な基盤ともなっている。一方, 次元医療の整備とともに院外の医療機関との効率的かつ有機的な連係が進められ, 将来的にはいわゆるオープンシステムとともに有病者に対する歯科医療が一段と進歩するものと考えられる。
本疾患は受診頻度に加えてリスクの高い偶発症のため, 歯科治療に際しては個々の患者における医学的管理の良否や病識の程度に留意する必要があり, 術前の血圧測定は必須であるが, その評価については歯科医師の分限内において独自性をもって判断する能力を養うことが必要である。このためには, 健常人における血圧変動の基本的なパターンを理解し, これらの患者における血圧変動の特徴に留意しなければならない。これらの点について, 抜歯時に血圧の異常変動がみられた症例を5例提示して解説した。

著者関連情報
© 日本有病者歯科医療学会
前の記事
feedback
Top