有病者歯科医療
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選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI) 服用患者の全身麻酔経験
飯田 彰黒住 章弘亀倉 更人福島 和昭
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2001 年 9 巻 2 号 p. 71-76

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抄録

選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor; 以下SSRI) は, 本邦では, 1999年5月に発売された新しい抗うつ薬である。今回, 我々は, 本剤 (フルボキサミン) を服用しているうつ病患者(72歳, 女性) の多数歯抜歯に対する全身麻酔管理を経験した。
本症例では,術前2日間の休薬期間をとり, 亜酸化窒素・酸素・セボフルランを主体とした全身麻酔管理を行い, 周術期をとおして概ね安定した経過を得ることができた.
SSRI服用患者の全身麻酔管理に際しては, 本剤の半減期を考慮した休薬期間を可能な限りとることで可及的に全身麻酔への影響の軽減化をはかり, また本剤がチトクロームP450阻害作用を有することから, 麻酔法の選択, 投与量等に配慮した管理を行うことが肝要と考えられた。
SSRIには既存の三環系抗うつ薬で報告されている抗コリン作用に基づく副作用は少ないものの, 連用による低ナトリウム血症や, 血小板凝集抑制の存在, セロトニン作動薬併用によるセロトニン症候群発症の危険性を示唆する文献的報告もあり, その点に関する注意も必要と思われた。

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