日本医真菌学会雑誌
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総説
皮膚科領域の真菌性人獣共通感染症
中村 遊香
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2006 年 47 巻 2 号 p. 81-84

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抄録

真菌を原因とする皮膚科領域における主な人獣共通感染症は, 皮膚糸状菌症, クリプトコックス症およびスポロトリコーシスである. ヒトと動物との関わり方が多様化していることから, 医師と獣医師はともに, 人獣共通感染症について正しく理解することが重要となっている. 特に皮膚糸状菌症は, 動物からヒトへの感染が古くから知られているにも関わらず制御困難な疾患であり, 飼育動物の多様化によって思わぬ動物から感染する場合もある. その他, クリプトコックス症では, 鳥類の堆積糞以外にも猫や犬などの鼻腔に常在していることから感染源として注意する必要がある. スポロトリコーシスは, 我が国では動物からヒトへの感染は報告されていないため, 人獣共通感染症として認知されていないが, 欧米では罹患動物 (特に猫) からの人体感染例が多数報告されている.
最近, 病原体が分子生物学的に同定され, 迅速かつ正確に診断されるようになった反面, 診察室における直接鏡検標本の評価能力が向上しないといった問題が起こっている. また, 新しい全身性抗真菌剤が国内で入手可能となったことで, 確定診断後には速やかに治療することが可能となっているが, 費用や治療終了の判定基準など, 未だに問題が山積している.

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© 2006 日本医真菌学会
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