日本医真菌学会雑誌
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原著
Trichophyton tonsurans 臨床分離株に対する各種抗真菌薬のin vitro 抗真菌活性
古賀 裕康南條 育子井上 和美槙村 浩一坪井 良治
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キーワード: 抗真菌薬
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2006 年 47 巻 4 号 p. 299-304

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抄録
国内で流行しているTrichophyton tonsurans 感染症起因菌の薬剤感受性を調べることを目的として, 感染症患者より採取した臨床分離株10株を用いて各種抗真菌薬のin vitro 抗真菌活性を調べた. 抗真菌薬としては, 塩酸テルビナフィン, イトラコナゾール, 硝酸ミコナゾール, ケトコナゾール, ラノコナゾールおよびルリコナゾールを使用した. MICの測定は, 寒天平板希釈法および微量液体希釈法の2種類の測定法を試みたが, 本菌種は寒天培地上での発育が遅いため, 測定には微量液体希釈法が好ましいと考えられた. 微量液体希釈法で測定した塩酸テルビナフィン, イトラコナゾール, 硝酸ミコナゾールおよびケトコナゾールのT. tonsurans に対するMIC90はそれぞれ0.013, 0.1, 0.8および0.4μg/ml となり, これら薬剤の中では塩酸テルビナフィンの活性が強かった. 皮膚糸状菌に対して強い活性を示すことで知られるラノコナゾールおよびルリコナゾールのMIC90はそれぞれ0.00078および0.00039μg/ml となり, 塩酸テルビナフィンを凌ぐ強い活性が認められた.
以上の結果より, T. tonsurans の薬剤感受性は, 白癬の主要起因菌であるT. mentagrophytesT. rubrum と同レベルと推察され, 本病原菌に対しては, ラノコナゾールおよびルリコナゾールが極めて強い抗真菌活性を示すことが明らかとなった.
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© 2006 日本医真菌学会
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