1990 年 31 巻 4 号 p. 317-324
北海道東部の野生のキタキツネの巣穴ならびにキタキツネ牧場から土壌試料を200採取し,Vanbreuseghemのhair-baiting法を用いて好角質性真菌の分離を試みた.その結果,Trichophyton ajelloi 112株,Microsporum cookei 48株,Arthroderma cuniculi 29株,Chrysosporium anamorph of A. tuberculatum 18株,Chrysosporium tropicumおよびC.keratinophilum各4株,T.terrestre 2株が得られた.また,北海道東部で捕獲された30頭の野生のキタキツネについてhair-brushingを用いて体毛を採取し好角質性真菌の分離を試みた.その結果,A.cuniculiを7頭から,T.verrucosumを1頭から分離した.
なおA.cuniculiの分離は本邦ではじめてのものであり,本菌の生態は野生のキタキツネと密接な関係があることが示唆された.