日本医真菌学会雑誌
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内臓真菌症の発症病理に関する研究
白血病患者における易感染性判別式
望月 真弓
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1992 年 33 巻 1 号 p. 51-63

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抄録

白血病剖検例のうち真菌感染群21例と非真菌感染群19例について,内臓真菌症に対する易感染性を左右すると思われる各種臨床検査値を調査し,それらを変数として2群間の判別分析を行った.その結果,末梢白血球数(X1),好中球数(X2),リンパ球数(X3),単球数(X4)および末梢白血球数が1,000/μl以下を示した連続病日数(X6),末梢白血球数の最低値日の最高体温(W1),および抗細菌剤の使用状況(V1およびV2)が判別効率の高い変数として選択された.これらの変数を用いた線形判別分析から得られた最も判別率のよい線形判別関数(易感染性判別式)は,
Z=-100.5427-0.00401・(X2)-0.01057・(X4)+0.05622・(X6)+2.61331・(W1)
であった.
この判別式では先の真菌感染群21例中21例が真菌感染例として判定され,一方,非真菌感染群19例では2例のみが真菌感染例として誤判定されるにすぎなかった.
さらに,上記の判別式を白血病臨床例に適用し,その値が1週間以上連続してプラスであった場合を内臓真菌症例と判別することとした場合,本判別式の感度は7/8例(87.5%),特異性は12/15例(80.0%),有効度は19/23例(82.6%)と良好な成績を示した.
以上より,今回創案した易感染性判別式は,白血病臨床例の真菌感染の早期発見および早期治療の開始の決定に,極めて有用なものとなると考えられた.

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