抄録
最近の世界のエイズ事情は,患者・感染者とも増加の一途をたどっており,国別では米国が最も多く,アフリカ州の諸国がこれについでいる.ヨーロッパ州では,イギリスが少ないのが特徴である.アジア州では,HIVが遅れて侵入した関係から数字の上では少ないが,WHOは将来アフリカを抜いてアジアの患者・感染者が激増すると推定している.
わが国は,患者は血液製剤使用によるものが62%もあるが,それを除くと異性間および同性間の性的接触は,ほぼ同率(12%)である.感染者では血液製剤使用によるものが62%,ついで異性間の性的接触が19%で,同性間性的接触6.7%を大きく引き離している.1990年から1992年の3ヵ年間,日本人男性と外国人女性の増加が著しい.年令別では,男性20歳~29歳および30歳~39歳の年代が多く,いずれも海外で感染した症例の方が国内のものより多い.女性では20歳~29歳の年代が圧倒的に多く,それも海外における感染例が国内のものの数倍に達している.
国は,「エイズストップ作戦」を実施中で,感染爆発の防止を目指して,総合的,集中的なエイズ対策を展開している.(財)エイズ予防財団においても,エイズの正しい知識の普及啓発を中心に各種の事業を実施中であるが,特に医療従事者向けのエイズカウンセリング研修事業を積極的にすすめている.