抄録
難治性アトピー性皮膚炎(AD)患者に真菌に対する抗体が検出されること,抗真菌剤による治療に反応する例があることなどより,ADの悪化因子として,真菌が注目されている.(1)Malassezia属:本菌が常在する頭頚部の症状が強いAD患者で,本菌特異IgE抗体が高値を示す.この抗体価は,総IgE値,ADの重症度と相関する.分離率は,ADにおいて正常人よりも有意に高率であった.(2)Candida属:本菌特異IgE抗体価は,重症AD患者で高く,Candida分離率と相関する.即時型皮膚反応が亢進するのに反して,貼付試験では反応性が低下する.舌からのCandida分離では,正常人と比べ,陽性率は差が無いが,AD患者で分離集落数が有意に多かった.(3)ADの抗真菌剤療法:有効率が50~65%とする報告がみられる.われわれも,難治性AD患者を対象として本療法を試みたが,同様の結果がえられた.治療前後における菌の検討では,菌数の減少がみられ,特異抗体の低下傾向がみられた.ADに対する抗真菌剤の作用機序は,抗真菌剤が抗炎症作用を有することも考えられるが,(1)抗真菌剤により菌が減少し真菌自体に起因する炎症症状が軽快する,(2)抗体産生を抑制し免疫反応が軽減される,(3)(1)と(2)の作用によって皮膚表面のバリヤー能が改善され,種々の抗原の侵入が軽減されるなどの機序が働いていると推察される.本療法は,一般的な治療に反応しない難治性AD患者に対する特殊療法の一つとして有意義なものと考えた.