日本医真菌学会雑誌
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Sporothrix schenckiiの分子疫学
石崎 宏河崎 昌子
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2000 年 41 巻 4 号 p. 245-249

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抄録

Sporothrix schenckii自然界分離株および臨床分離株についてミトコンドリアDNA(mtDNA)のrestriction fragment length polymorphism (RFLP)分析を行った.形態学的にS.schenckiiと同定された中国6株,日本3株,オーストラリア2株,南アフリカ3株の自然界分離株計14株中2株のみが分子生物学的にS.schenckiiと同定され,残りはS.schenckiiではなかった.一方,臨床分離株では500株以上について検討したが,全株ともS.schenckiiであった.以上より自然界分離株の同定には分子生物学的検討を要するが,臨床分離株では形態学的な同定のみでよいことが明らかとなった.
S.schenckiiはmtDNAのHaeIIIによるRFLPパターンで23のmtDNAタイプ(タイプ1-23)に分けられ,またmtDNAタイプの系統樹よりA群(タイプ1-3,11,14-19,22,23)とB群(タイプ4-10,12,13,20,21)に大別された.A群に属する菌株は南アフリカ,北米,中米,南米に多く,一方B群に属する菌株はオーストラリア,日本に多いなど,mtDNAタイプの分布に地理的特徴がみられた.さらに本邦では1)タイプ4,タイプ6の菌株が多い九州,関西地方,2)タイプ5の菌株が多い東海,関東,東北地方,3)タイプ1,タイプ2の菌株が見られる北陸地方の3地域に大別された.

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