日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 1882-0476
Print ISSN : 0916-4804
ISSN-L : 0916-4804
本邦で発症したイヌのヒストプラスマ症2例について
佐野 文子上田 八千代猪股 智夫田村 美貴池田 輝男亀井 克彦木内 明男三上 襄西村 和子宮治 誠
著者情報
キーワード: イヌ, ヒストプラスマ症
ジャーナル フリー

2001 年 42 巻 4 号 p. 229-235

詳細
抄録

ヒストプラスマ症は熱帯,亜熱帯,温帯地域で世界的に分布する真菌症で,日本では輸入真菌症の1つとして取り扱われている.本邦におけるヒトの症例は30例以上が確認されているが,海外渡航歴の無い患者の症例も報告されている.また,イヌでも国内感染例が1例報告されているので,ヒストプラスマ症は我が国にも感染源が存在する真菌感染症と考えられる様になってきた.我々は東京都と熊本県で飼育されているイヌの皮下組織の肉芽腫性病変と顔面皮筋を検査したところ,マクロファージ内に寄生しているヒストプラスマ様の酵母細胞を確認した.さらにこれらの病理組織のパラフィンブロックより抽出したDNAから,リボソームRNA遺伝子のinternal transcribed spacer (ITS)領域をPCR法(polymerase chain reactions)により検出し,その塩基配列がAjellomyces capsulatusの同遺伝子領域と97.4%以上一致することを確認した.よってこれらのイヌはA.capsulatusの不完全型であるHistoplasma capsulatumの感染であることが判明した.これらのイヌは輸入歴や渡航歴が無く,本邦で感染したと推測されるので,今後の疫学的調査が重要と思われる.

著者関連情報
© 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top