日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 1882-0476
Print ISSN : 0916-4804
ISSN-L : 0916-4804
特異な臨床像を呈したTrichophyton mentagrophytesによる顔面白癬の1例-原因菌の分子生物学的検討-
金子 千尋比留間 政太郎小川 秀興槙村 浩一山口 英世
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 44 巻 1 号 p. 13-16

詳細
抄録

患者は27歳,女性,酪農業.約2ヶ月前より右眼周囲に直径5cmの境界明瞭な同心円状の紅斑,丘疹を認め,KOH検鏡陽性,顔面白癬と診断した.真菌培養で白色短絨毛状,周囲は黄褐色湿性の放射状集落を分離,スライド培養,生物学的性状,顕微鏡的所見よりTrichophyton mentagrophytesと同定し,核リボゾームRNA遺伝子におけるinternal transcribed spacer 1 (ITS1)領域の塩基配列の解析により,同菌種の中のanimal type 1と同定した.Animal type 1はMakimuraの作成した系統樹上,動物の白癬の原因菌の一つであるArthroderma vanbreuseghemiiに極めて近く,またヒトから分離された5株のT.mentagrophytesとは少しはなれたところに位置する.従ってこの分離株の由来としては動物が疑われる.動物から感染したと考えられる白癬では,特異な臨床症状を呈するため,誤診されやすいので,注意が必要である.また,菌のより詳しい同定は,感染源を推測するのに役立つことが判明した.

著者関連情報
© 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top