日本医真菌学会雑誌
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接合菌症:2症例の報告および本邦報告例の検討
森 健江頭 元樹川又 紀彦押味 和夫中村 和裕小栗 豊子會田 秀子晝間 明子一戸 正勝
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2003 年 44 巻 3 号 p. 163-179

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抄録

最近経験した接合菌症2例と本邦報告例を集計し検討した結果を報告する.症例1(43歳・男性)は悪性リンパ腫の治療経過中に肺炎・脳出血を併発し死亡した.剖検では接合菌による肺病変が認められた.脳病変の検索は出来なかったが,接合菌の関与が強く疑われた.症例2(52歳・男性)は急性リンパ性白血病の治療中に発熱し,胸部X線上両肺に異常陰影を認め,喀痰培養でCunninghamella elegansを4回検出し,itraconazoleおよびamphotericin B (AMPH)の併用療法を開始し,後にAMPHをliposomal AMPHに変更したが肺病変は完全には消失しなかった.その後末梢血幹細胞移植のため前処置開始後に高熱を認め,血液培養でStaphylococcus epidermidisが検出され抗生剤を変更したが,白血球数が回復しないまま肺炎を併発して死亡した.剖検は行えなかった.本邦では1907年の稲田の報告以降204例(病型不明1例を含む)が報告されている.鼻脳型は55例で,基礎疾患のない症例が29例,生前診断例34例,死亡例は24例であった.肺・播種性病変などを含む組織侵襲性病変は144例で,白血病が66例を占め,生前診断例39例,死亡例は120例であった.ムーコル喘息5例の予後は良好であった.鼻脳型では手術例や排膿を行った症例,その他の組織侵襲性病変では切除例で予後は良かった.真菌が分離・同定された症例は14例にすぎなかった.本症に対しては積極的な検索・治療が望まれる.

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