日本線虫研究会誌
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クワのピンセンチュウの新種Gracilacus yokooiの記載と2, 3の生態的知見
樋田 幸夫大島 康臣平田 明由
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1983 年 12 巻 p. 15-20

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抄録
東京都杉並区のクワ根辺土壌から採集したピンセンチュウを新種として記載し, あわせて, 2, 3の生態的知見を報告した。本種は横尾 (1970) がParatylenchus aciculusとして報告した線虫と同一種であると考えられるが、側線が4本あること, 雌は陰門部に薄い側膜を有し, 体が肥大すること, 排泄口がより後方に位置することおよび雄の検出がそれほどまれではないことなどからCracilacusacicula (P.aciculus) とは明らかに異なる形態的特徴が認められた。本種はG. ivorensis, G. crenataおよびG.straeleniに類似するが, G.ivorensisとはより長い口針と変異の少ない円錐形の尾の形状によって, またG.crenataとはより短い口針とより後方に位置する陰門とによって, さらにG.straeleniとは陰門がより前方に位置することとb値がより小さいことでそれぞれ区別される。
本種にはクワへの寄生性が認められ, 桑園土壌中では, 雌成虫は深さ50cm前後にもっとも多く, ついで深さ80cm前後に多かった。本種の雌雄成虫は4月頃からみられ, 8月にもっとも多く, 9月以後減少し, 冬期にはほとんどみられなくなった。本種はこれまで山形県以南の桑園から検出され, わが国の比較的温暖な地域に分布するようである。
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