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舞鶴市冠島におけるオオミヅナギドリの生態
吉田 直敏
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1962 年 17 巻 79-80 号 p. 83-108

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抄録

1. 冠島におけるオオミヅナギドリの生態について1959年3月から1961年11月まで20回渡島して延42日にわたり調査した。また,離島期に京都府下で迷行落下して舞鶴市教育委員会に送られてきたものについても調査したものである。
2. オオミヅナギドリは冠島に2月下旬に帰り,同島で繁殖し,11月上旬から下旬にかけて離島する。
3. オオミヅナギドリは昼間には海上で餌を求めて行動しているが,日没後約1時間にして帰島し,日出約1時間前に離島する。在島時には蕃殖行動•休息をしている。帰島数は日によって相違があるが,30,000~36,000羽である。
4. 産卵準備として,3月上旬から5月下旬までに巣穴の占有(昨年まで(102)1962 オオミツナギドリの生態 103使用されていた古巣),補修を行ない,巣の中に枯葉を少し入れて産座を造る。
5. 冠島内の巣穴は約128,000個であるが,そのまま使用できるものと,使用中のものとを合わせて約98,000個ある。営巣するものは12,000個である。
6. 6月中下旬に白色の卵1個を産む。大きさは42.0~47.O×64.0~7.22mmで重量は約80gである。冠島内での産卵数は約12,000個である。
7. 抱卵日数は51日以上で,ふ化期は8月10田から20日までである。ふ化期のひなは嘴峰20~24mm,翼長28~33mm,〓蹠19~25mm,中趾12~24mmおよび重量50~70gである。
8. ひなには1日1回,日没後親鳥が帰巣して餌を与える。ひなの成長は10月中旬までは1日約20gの体重増加で,最大990 gに達したものがある。ふ化後30~40日で嘴峰42~50mm,翼長115~163mm,〓蹠50~60mm,中趾55~67mmおよび体重515~740gであった。ふ化後60日で嘴峰43~57mm,体重360~990gであった。
9. ひなは10月中旬になると本羽,翼,尾羽が発達している。いっぽう,そのころになると親鳥の給餌は途絶えることが多くなって体重は減少するが,外形は成鳥に近づいてくる。
10. ひなの巣立ちは10月下旬から11月中旬にかけて行なう。育すう期間は70日~100日であるが大部分は80日前後と考えられる。巣立ちの時のひなの体重は500g以下となり,外形的には成鳥とほとんど等しくなる。時には綿毛の一部を残しているものもある。
11. 10月下旬から11月中旬にかけて冠島から離島するが,成鳥の方が早く離れ,巣立ちした幼鳥はつぎつぎと離島する。
12. 11月上中旬には京都府,福井県,大阪府,滋賀県の各地に夜間迷行落下するものがかなりあるが,これらは渡りの途中と老えられる。それらは幼鳥や飛ぶ力の弱った成鳥が含まれている。
13. 農林省の標識環を1960年10月に100個と1961年11月に22個をひなに装着した。1960年に装着したものは1961年には,1羽も冠島では発見されなかった。
1960年以後に装着したものについては今年度以降の調査での発見が期待される。

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