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神戸市内におけるトビ個体群の生態について
クールマン フランク
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1981 年 30 巻 2-3 号 p. 75-85

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抄録

1975-79年および1981年に,兵庫県神戸市中央区の市街地全域と木の茂った傾斜地で,トビの個体数を調べた.調査はおもに,1978,1979,1981年の営巣期に行った.
調査地域内とその周辺では,おおよそ同じ数のトビが1年中見られたが,20-30羽またはそれ以上の帆翔群は,営巣期(2~6月)には見られなかった.
つがい行動と巣づくりは,2月に始まった.3月第2週に,最も早い産卵があった.ふ化は4月第2週から5.月第3週に,巣立ちは5月下旬から7月中旬にわたった.調査した60巣の営巣木の内訳は,クロマツ23,エノキ17,クスノキ8,その他7(各々1-3)で,巣の地上高は2.5mから20m(平均10m)であった.7巣が2シーズンつかわれ,1巣が3シーズンつかわれた.巣立ったひなの数は,1978年には15巣から12羽,1979年には14巣から8羽であったが,1981年には11巣のうちただ1巣から3羽が巣立ちに成功しただけであった.
主として巣の調査から得られた資料によって,トビのおもな食物は,魚であることがわかった(延20巣で見つかった).ほかに,けっ歯類と鳥が各6巣ずつから,また紙包装された生あるいは加熱された肉が3巣から見つかった.
多くのマツが枯れたり切り倒されて,調査地の林が変わったが,それによって繁殖個体数がひどい影響を受けるとは思えない.
大きな疑問がふたつある-1981年の巣立ちびなの減少の原因はなにか.このような減少が続き,トビの数も減っていくのか.

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