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諏訪湖に飛来のコハクチョウ(Cygnus columbianus jankowskii)の bill patternによる個体識別について
林 俊夫
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1982 年 31 巻 1 号 p. 1-16

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抄録
(1)諏訪湖に1974年以来飛来するコハクチョウをその bill pattern によって個体識別を行い,また幼鳥の bill pattern の発達を調べた.成鳥•亜成鳥の bill pattern は大別してa型とb型の2型に類別でき,a型の方が多かった.
(2)幼鳥の bill prttern の発達は,短期間に相当進行し,3月末には成長後の bill pattern がある程度予想できるようになってくるが,post nareal area が不確定のままで残るため,第2冬の bill pattern は11月の再渡来まで確定しない.しかし,諏訪湖の例では,3月末から11月への bill pattern 発達の連続性は明らかであった.
(3)以上の個体識別の結果,1つがいの雌雄のコハクチョウが毎年その年生れの幼鳥を連れて飛来していることが判明した.幼鳥の数は,親鳥の成熟につれて多くなり,6年目をピークに,以後は減ってきている.
(4)家族群の中に,前年までの幼鳥の成長した亜成鳥が,1羽か2羽加わっているのが見られた.そのうち,第4冬まで家族群に加わった亜成鳥が1例あった.しかし,多くの場合第2冬から亜成鳥群を作り,親鳥の家族群と同一越冬地で過すか,別の越冬地に行くと思われた.
(5)親鳥のつがいは,行動(採餌や休息)の先頭に立って,採餌:場所を決定したり休息場所を選定する雌と,家族群が採餌を行う場合,その安全のため常に見張りを心掛ける雄と,その役割り分担が明確である.
(6)亜成鳥群は,飛来も家族群とは別の日であり,休眠や採餌も別の場所で行うのが普通であるが,合併して行動することも多く,採餌や休眠の場合も割合に近い所である場合が多かった.亜成鳥群の中に2羽がつがいになっているように見えるものがあり,また1羽だけの独身のものもいた.亜成鳥群は,家族群にくらべその結びつきはずっとゆるいように見えた.
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