抄録
本書は、定時制高校の教育実践を構成するロジックの変化を分析した教育社会学の研究である。そのロジックを著者は「包摂のロジック」と呼ぶ。著者は本書で「包摂」を「高校進学率上昇にともない拡大した生徒層を学校に受け入れること」[p.3]と規定した上で、そのロジックは、定時制高校の教師の「包摂実践」に見出せるとする。より具体的には、「教師らが現場において組み立てまた変化させる『包摂』の方針」[p.10]であり、学校や教師によって構築される状況依存的なものと規定されている。本書ではそのロジックを明らかにするために主に教師と生徒の語りが掲載された資料や教員OBのインタビューの語りを分析するという方法を採っている。