抄録
Transglutaminase (TG) は, 様々な組織に広く分布するタンパク架橋化酵素である。TG-1とTG-3は上皮細胞の細胞骨格構築に関与しており, 近年は腫瘍マー力ーまたは癌遺伝子として注目されている。
今回我々は, マウスロ腔粘膜上皮性異形成の発症過程におけるこれらの酵素の発現変化を検索した。
網羅的遺伝子発現解析の結果, 野生型マウスの実験的舌粘膜上皮性異形成において, TG-3遺伝子の著明な発現増強が認められた。p53癌抑制遺伝子欠失マウスでも同様の異形成が誘発されたが, 野生型マウスではTG-3がタンパクレベルでも著明に発現増強されるのに対して, p53欠失マウスでは全く誘導されなかった。
以上の結果より, TG-3がマウス上皮性異形成の発症過程で何らかの機能を果たしていること, またその機能はp53遺伝子と関係している可能性が示唆された。