日本花粉学会会誌
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オオバスノキ(ツツジ科)における四集粒花粉の個体発生
サルワル A.K.M.ゴラム伊藤 利章高橋 英樹
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2012 年 58 巻 2 号 p. 61-71

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抄録

オオバスノキにおける四集粒花粉の個体発生過程を,特に花粉外壁の沈着様式に着目して,光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡により研究した.細胞表面を覆った原繊維状の層として現われる一次外壁マトリックスの沈着は,厚いカロース壁内で小胞子母細胞が細胞分裂している間に始まった.スポロポレニン前駆物質である濃いリポイド様顆粒の沈着が,一次外壁マトリックスの中に観察された.これらの顆粒が見えなくなった後に放射方向に向いた一次小柱が一次外壁マトリックスの中に現れ,カロース分解後にはこの一次外壁は外表層,柱状層,底部層を生じる.将来の花粉開口部の位置は,一次外壁マトリックスの厚い部分と(あるいは)薄い部分とに観察された.これら将来開口部になる領域では一次小柱,一次外表層そして底部層は形成されなかった.オオバスノキの成熟花粉における四花粉粒間の接合機構としては,1)細胞分裂を行っている小胞子母細胞上に一次外壁マトリックスが早期に沈着すること,厚いカロース壁に包まれた減数分裂四分子内の隣接する小胞子間では2)ごく薄いカロース沈着しかおこらないこと,3)一次外壁マトリックスが共有されること,4)細胞チャンネルが形成されること,が考えられる.

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© 2012 日本花粉学会
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