日本花粉学会会誌
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最終氷期最盛期における定量的植生復元の 基礎資料としての花粉生産量の推定に関する研究
高原 光
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2021 年 67 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

最終氷期最盛期(LGM)には,モミ属,ツガ属,トウヒ属,マツ属などのマツ科針葉樹が優勢であった(Tsukada, 1983).日本列島におけるLGMの植生に関する研究は質・量ともに増えてきている が,Landscape Reconstruction Algorithm(LRA 法;Sugita 2007a, b)を適用するために必要な花粉生産量に関するデータが不足しているため量的な植生復元を解明するにはいたっていない.本研究では,リタートラップ法(齋藤・竹岡;1983,Saito and Takeoka, 1985)を用いて,マツ科針葉樹とカバノキ属2種およびクリについて,花粉生産量の測定を実施中である.ある樹種が優占する林分に受け口の1片が50cm正方形のリタートラップを複数個(通常12個)設置し,単位面積あたりの年間雄花生産量(Fn)を求める.さらに,開花前の雄花を採取し,雄花あたりの花粉数(PFn)を推定する.これらの積(Fn・PFn)によって単位面積あたりの年間花粉生産量を推定する.また,LGMの植生と類似した針葉樹林の優占する北八ヶ岳において,各分類群の花粉生産量と白駒池(約7.7ha)と白駒湿原(約0.1ha)から得られた堆積物の花粉データとそれぞれの周辺植生の空間分布の関係から LRA 法の適用を検証しようとしている.

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