抄録
蛋白同化ホルモン投与中に多発性結節性病変と急性のpeliosis hepatis (PH) を発症した再生不良性貧血 (AA) を経験した.患児は5歳5カ月時にAAと診断され6年間danazolの投与を受けたのち, 4年間にわたりoxymetholoneを投与中であった.腹部CTで肝に多発性結節性病変を偶然発見されたが自覚症状や肝機能障害は認めなかった.その4カ月後に右上腹部痛と全身蒼白で受診しCTで肝に大型のPHを認めた.保存的治療で止血し, その後PHの縮小と結節性病変の一部消失を認めた.蛋白同化ホルモンによる肝の結節 (腫瘍) 性病変とPHの発生を画像上経時的に観察し得た例として報告する.蛋白同化ホルモン投与中は肝障害がなくとも画像診断による肝の精査が必要と考えられた.