日本小児血液学会雑誌
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GVHD鑑別診断の病理
平林 紀男
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1999 年 13 巻 3 号 p. 127-137

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抄録
同種造血幹細胞移植後のGVHDは, 前処置関連毒性 (RRT) で修飾された, アロ反応性の急性および慢性症候群である.急性GVHDの鑑別診断は従来, 腸や皮膚のRRT, 肝の中心静脈閉塞症, サイトメガロウイルス腸炎の三つが主な対象であった.最近, 著者らは血栓性微小血管症 (TMA) による虚血性腸炎が, 重症な下痢・下血の原因となることを見出した.TMAにおける細動脈や毛細血管の血栓性壊死病変は, 肝や胃, 皮膚にも発生するため, 肝と上部消化管のGVHDは, 虚血性胆管障害や微小血管障害性の胃炎との鑑別が必要である.微小血管症がGVHDの標的臓器に発生することは, GVHDの治療法にも再検討を促すことになる.血管毒性をもっCSAやFK506は, 微小血管症を増強させるので, 免疫抑制療法が虚血性障害を悪化させる場合も, ありうるからである.このように, 急性GVHDの診断と治療に関する現行の方式は, GVHD標的臓器における微小血管症の発生により, 大幅な見直しが必要となっている.慢性GVHDは, 急性GVHDの厳密な鑑別診断と慎重な免疫抑制療法の結果として, その真の姿を現わすだろう.
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