日本小児血液学会雑誌
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寛解導入および強化, 維持療法にall-trans retinoic acid (ATRA) を併用した小児急性前骨髄球性白血病の3例
藤井 久紀山崎 桜子渡辺 由佳後藤 裕明松田 基藤岡 憲一郎高橋 浩之甲斐 純夫船曳 哲典生田 孝一郎横田 俊平
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2001 年 15 巻 1 号 p. 41-45

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抄録
1歳, 10歳および12歳の小児急性前骨髄球性白血病 (APL) 3例にATRA併用化学療法による寛解導入, 強化および維持療法を行った.3例とも治療開始からそれぞれ27, 34, 40日で完全寛解が得られた.骨髄細胞中のPML-RARαキメラmRNAも3回目の強化療法開始前までに消失した.1例はATRA併用強化療法を2コース施行後, 自家末梢血幹細胞移植 (auto-PBSCT) を施行し, 2例は6コースのATRA併用化学療法を施行後ATRA単剤による1年間の間0的維持療法を行い, 3例とも27, 31, 53カ月間完全寛解を維持している.ATRAによる寛解導入療法中, レチノイン酸症候群 (RAS) を1例に認めた.本例はauto-PBSCT後に間質性肺炎を併発し, 数年間にわたり肺の間質陰影の増強と咳嗽が残存している.この呼吸器障害は, RASの後遺症である気管支の不可逆的な組織学的変化とPBSCTの前処置に用いたbusulfanにより生じたものと考えられた.ATRAはAPLに対する抗白血病剤の一つとして期待されているが, 小児におけるATRA併用強化療法と維持療法についての報告は少なく, その有用性を評価をするためには今後の比較研究が必要である.
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