2001 年 15 巻 1 号 p. 50-53
新生児期と1カ月検診時の計3回経ロビタミンK (以下VK) の予防投与を受けたにもかかわらず, VK欠乏症による頭蓋内出血を発症した生後54日の母乳栄養児を経験した.貧血と高ビリルビン血症, トランスアミナーゼおよび総胆汁酸の上昇が認められた.サイトメガロウイルス (以下CMV) のIgM抗体が上昇し, CMV抗原陽性の末梢血多核白血球が検出された.患児尿および母乳中からCMV-DNAが分離され, 本症例はCMV肝炎によりVKの吸収障害をきたし, 母乳中のVKの低含量と相まってVK欠乏症が発症したと考えられた.現行のVK経口予防投与では本症のような肝胆道系疾患の関連するVK欠乏症を予防することは難しく, 乳児で肝障害がある場合にはVK欠乏症も念頭に置くこと, および今後欧米で使用されている新しい経口VK製剤の導入や投与経路なども検討する必要があると思われる.