日本小児血液学会雑誌
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融合遺伝子と白血病
石前 峰斉江口 真理子
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2001 年 15 巻 6 号 p. 427-441

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抄録

造血器腫瘍の病型特異的染色体転座から多くの融合遺伝子が単離されてきた.それらの融合遺伝子は, 転写因子やチロシンキナーゼなど血液細胞の分化・増殖に重要な遺伝子をその構成要素として含んでいることが多い.これらの遺伝子がその機能ドメインの一部を失い, あるいは他遺伝子の機能ドメインと結合することによって, 新たな融合蛋白が産生される.蛋白本来の機能を喪失あるいは異常機能を獲得した融合蛋白は血液細胞の分化阻害, 増殖能亢進またはアポトーシス抑制などの機能を血液細胞に付与し, 最終的に腫瘍化へと導く.融合遺伝子の機能解析は白血病化機構の解明のみならず, 新たな治療法の開発につながる重要な情報を多く提供してきた.また融合遺伝子の形成機構を知ることは白血病の発症予防の観点からも重要である.本総説では代表的な融合遺伝子を例に, 遺伝子異常による腫瘍化のメカニズムとその現時点での臨床応用を解説する.

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