抄録
遺伝性球状赤血球症 (HS) は多様な臨床像を呈し, 赤血球膜異常を有する疾患である.赤血球膜異常の重症度と臨床像との関連を評価するため, 今回われわれは, 28人のHS患者で血液検査や臨床像を調べるのと同時に, SDS-PAGEによる赤血球膜解析を行った.その結果, 膜蛋白であるband3値とHb値, 脾臓の大きさにおいて相関関係を認めた.band3値が低い患児はHb値が低く, そして脾腫を合併する患児においてもHb値が低い傾向にあった.これらの値はHS患児の貧血重症度とband3値との間に関連性があることが推測できた.また脾腫があり脾摘に至った患児では, band3値がほぼ正常に近い3人を除いた25人のband 3値は低値であった.これらの結果から, band3値が低値で脾腫のある患児は重度の貧血を伴うことが多いので, 脾摘を行うべきと考えられた.