日本小児血液学会雑誌
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正常小児および各種小児血液疾患における赤血球サイズ分布幅
藤波 彰田窪 良行迫 正廣中川 喜美子小西 省三郎
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1992 年 6 巻 5 号 p. 460-467

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抄録
小児の赤血球サイズ分布幅 (red blood cell volume distribution width 以下 RDWと略す) の正常値を求めた.RDWの正常値は, 新生児では, 未熟児, 成熟児との問で有意差を認めず, 未熟児と成熟児の平均は16.6±1.6% (Mean±1SD) と大きく, その後は年齢と共に徐々に小さくなり, 6歳以降は成人のRDWと有意差なく, 13.0±1.0%であった.鉄欠乏性貧血では, 平均赤血球容積 (mean corpuscular volume以下MCVと略す) 低値, RDW高値.鉄剤投与後は網状赤血球数の増加とともにRDWは, さらに大きくなり, 赤血球ヒストグラムは波型になり, 貧血の改善とともにRDWは正常値となった.遺伝性球状赤血球症では, 摘脾前はMCV正常, RDW高値, 摘脾後はMCV, RDWとも正常であった.ピルビン酸キナーゼ欠乏による溶血性貧血の摘脾後はMCV, RDWともに著明に高値であった.再生不良性貧血13例中7例は, MCV高値, RDW正常.6例はMCV, RDWともに高値であり, 病型, 貧血とRDWとの間には, 一定の関係は認められなかった.治療を中止している白1血病の長期間寛解例と維持治療例の大部分のRDWは, 正常であった.大量cytosine arabinosideによる強化治療例では, 大部分は治療後MCV, RDWは小さくなり, その後網状赤血球数の増加とともにRDWは治療前値に戻るか, それ以上に大きくなった.一般には網状赤血球数とRDWは正比例し, RDW値, 赤血球ヒストグラムのパターンにより各種小児血液疾患の骨髄における造血状態を推定しうるものと考えられる.
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