日本小児血液学会雑誌
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血友病の出生前診断
わが国における過去10年間の歴史と今後の展望
吉岡 章
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1993 年 7 巻 6 号 p. 541-551

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抄録
我々の過去約10年間 (1984-1993) にわたる血友病出生前診断合計83例 (A70例, A13例) の経験と今後の展望について述べた.まず, 子供をもうけたいと考えるクライアントに対して経験豊富なカウンセラーによる面談とその家系内患者の病型診断がなされた.次に, 対象となる女性/妊婦には保因者診断が実施された.胎児性別診断は, 妊娠早期の胎盤絨毛採取または妊娠中期の羊水穿刺によって行われた.胎児の血友病直接診断は全ての男性胎児について行われた.妊娠早期の41胎児の性別診断は, CVSを材料に行われた.このうち16男性胎児の直接胎児診断は, 妊娠早期のSouthern blot法またはPCR産物のRFLP分析によるか, 妊娠中期の胎児採血によって実施された.妊娠中期の42胎児の性別診断は羊水穿刺によって行われた.このうち29男性胎児の直接診断は胎児採血による血中第VIII, IX因子定量によって行われた.後者の胎児採血例のうち2例はいったん非血友病と診断され妊娠を継続したが, 残念ながら血友病であった.上記いずれの出生前診断においても全ての女性胎児 (36例) は妊娠を継続した.近い将来の血友病の出生前診断は, CVSやsortingされた妊婦末梢血中の胎児血を材料に, 直接的胎児DNA診断を基礎にしたより新しい段階に到達するものと期待される.
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