Japanese Journal of Public Health Nursing
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Research Article
Factors Associated with the Number of Participating Social Activities of Elderly People Living in the Community: Examination by Activity Including Community Commitment
Yui AtosakoHisako IzumiSayaka Kotera
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2021 Volume 10 Issue 2 Pages 34-42

Details
Abstract

目的:高齢者の社会活動について,地域コミットメントを含めた関連要因を活動別に検討すること.

方法:地縁組織等に所属する65歳以上の625人の住民に無記名自記式質問紙調査を行い(有効回答率80.5%),社会活動を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.

結果:個人活動,社会参加・奉仕活動,学習活動の高得点群はいずれも地域コミットメント尺度の総得点が高いことと関連があった.また,個人活動は主観的健康感が高い,友人の数が多い,友人の誘いがあること,社会参加・奉仕活動は友人の数が多い,社会活動に良い認識がある,行政職員の誘いがあること,学習活動は,主観的健康感が高い,社会活動に良い認識がある,掲示板を閲覧することと関連があった.

考察:高齢者の社会活動の関連要因は活動別に異なり,各活動に適した支援をすること,特に地域コミットメントを向上することの有効性が示唆された.

Translated Abstract

Objective: To identify factors related to community commitment that are associated with the social activities of the elderly.

Methods: An anonymous self-administered questionnaire survey was conducted among elderly people aged ≥65 years residing in community organizations. The responses from 625 respondents (valid response rate: 80.5%) were included in the logistic regression analysis using social activity as a dependent variable.

Results: The high-scoring group showed high total score on the community commitment scale in terms of “personal activities,” “social participation,” and “learning activities.” The high-scoring group showed high perceived health, many friends, more invitations from friends for “personal activities”; many friends, good recognition in social activities, invitations for activities from administrative staff in terms of “social participation”; and high perceived health, good recognition in social activities, and browsing the bulletin board in terms of “learning activities.”

Discussion: The factors affecting the social participation of elderly people were different for different activities. Overall, there is a need to provide appropriate support to the elderly to participate in each activity and also to cultivate greater community commitment.

I. 緒言

我が国は,総人口が減少する中で高齢化率は上昇を続けている(内閣府,2020)が,国内外において,高齢者の社会活動には,身体的,心理的,社会的健康への寄与が明らかにされ(本田ら,2010James et al., 2011岡本ら,2016),高齢化が進行する我が国においても高齢者の健康を保持・増進するための社会活動の推進は重要である.また,地域包括ケアシステムの構築が推進される中,保健師の果たす役割(中板,2014)として,「個別ケアに関与する役割」「地域づくり」「仕組みづくり」が挙げられ,地域保健対策の主要な担い手である保健師も,社会活動の促進のために高齢者に働きかけ,活動しやすい地域づくりや環境整備のための支援は重要であると考える.

これまで,高齢者の社会活動の関連要因として,年齢,主観的健康感,活動への誘い,首尾一貫感覚(Sense of Coherence,以下SOC)など様々な要因が報告されている(金ら,2004岡本ら,2006大渕,2017).しかし,社会活動の定義の不明確さや概念の曖昧さが指摘されており(平野,2011),同研究の社会活動の概念分析では,社会活動の特徴を他者との交流を図る「家庭以外の身近な人との相互交流」「集団・組織への参加」のほか,他者との交流を主眼とせず自分のために時間を使う「自己完結する活動を通じた社会との関わり」が示されている.先述した活動の特徴を比較的網羅し,各活動における関連要因を比較,検討した先行研究(金ら,2004岡本ら,2006)において,活動ごとに関連要因が異なることが明らかにされているがその数は少ない.特徴の異なる社会活動各々の関連要因を明らかにすることは,各活動に適した支援を実現するために有効であると考える.

家庭外,つまり地域で行う社会活動は,地域に対する意識との関連が考えられる.地域への意識として,地域共生意識,コミュニティ意識,地域コミットメントなどがあり,社会活動との関連が明らかにされている(石盛,2010金ら,2004Kono et al., 2012).この中で,地域コミットメント(Kono et al., 2012)とは,個人の持つ地域への意識であり,住民組織による高齢者見守り活動と関連がある(金谷ら,2015)ことが明らかにされているが,限定された社会活動との検討であり,個人レベルの社会活動や学習活動との関連は明らかにされていない.

地域コミットメントを含めた活動別の関連要因を明らかにすることで,保健師が高齢者の社会活動に対してより効果的な支援や地域づくりを行うための一助となり,また高齢者の健康を保持・増進するための示唆が得られると考える.そこで本研究は,高齢者の社会活動について地域コミットメントを含めた活動別の関連要因を明らかにすることを目的とする.

II. 研究方法

1. 研究デザイン

本研究は横断的研究であり,量的研究を用いた.

2. 対象

対象者の選定にあたり,A市の中心までの公共交通機関による移動時間が同程度のB区とC区を調査地域とした.両区とも区民ホールがあり,また,小,中,高等学校だけでなく,大学の所在地でもある地区であった.

対象者は,B区,C区の自治会長などから紹介を受け,本研究の目的,内容を説明し,同意の得られた自治会や老人会など35の地縁組織等に所属する65歳以上の高齢者776名とした.なお,対象者は組織に所属し参加している者や参加していない者も含めた.調査は無記名自記式質問紙調査を集合法または託送法で実施した.質問紙の回収は自治会館等に回収ボックスを設置して行った.調査期間は2018年2月から5月であった.

3. 用語の操作的定義

1)社会活動:橋本ら(1997)と同様に「家庭外での対人活動」と定義した.

2)地域コミットメント:Kono et al.(2012)と同様に「人々がもつ地域に対する帰属や人付き合いに対する意識」と定義した.

4. 調査項目(図1
図1 

概念枠組み

調査項目は,先行研究を参考に基本属性等,社会活動状況および関連要因として計65項目設定した.

基本属性等は,性別,年齢,家族構成,居住年数,居住形態,経済状況,最終学歴および疾病の有無とした.また,先行研究で社会活動と関連の見られた自分の生きている世界は首尾一貫しているという感覚であるSOCは,Antonovsky(1987)の「把握可能感」,「処理可能感」,「有意味感」の3つの下位尺度で構成された13項目7件法版を用いた.この尺度は信頼性と因子妥当性が検証されている.1~7点の13項目7件法で把握され,13~91点の総得点が高いほどSOCが強いことを表す.本研究でのクロンバックα係数は0.833であった.

社会活動状況は,社会活動を「個人活動」10項目,「社会参加・奉仕活動」6項目,「学習活動」4項目,「仕事」1項目の4側面に分類した,妥当性,再現性を有する橋本ら(1997)の社会活動指標を用いた.配点は,仕事以外の3側面を,「いつもしている」「時々している」「していない」の3件法で把握し,算出は,仕事以外の3側面については,「いつもしている」「時々している」を1点,「していない」を0点とし,仕事の有無は「あり」を1点,「なし」を0点として単純加算し,「個人活動」0~10点,「社会参加・奉仕活動」0~6点,「学習活動」0~4点,「仕事」0~1点で表した.

高齢者の社会活動との関連要因については,行動の働きかけのためのアセスメントや評価に有効なモデルであるPRECEDE-PROCEEDモデル(Green et al., 2005)の一部を概念枠組みの参考とした.

準備要因は社会活動という行動を行うため,行動への態度,信念,自信などの個人に事前に準備されるべき条件であり,個人の持つ地域への意識としての地域コミットメント,社会活動が良いという認識,活動の基盤となる主観的健康感とした.なお,地域コミットメントの評価は,Kono et al.(2012)の「つきあい」4項目と「帰属感」4項目の下位尺度から成り立つ地域コミットメント尺度(Community Commitment Scale,以下CCS)を用いた.CCSは信頼性,妥当性が確認されており,「とてもそう思う」3点,「ややそう思う」2点,「あまり思わない」1点,「まったく思わない」0点の4件法で評価され,0~24点の総得点が高いほど地域コミットメントが高いことを示す.本研究でのクロンバックα係数は0.754であった.

強化要因は,行動に対して正の(または負の)フィードバックを与えるような要因であり,友人の数,社会活動への誘い,中年期の地域との関わりとした.

実現要因は,準備要因が整い行動を実施しようとした時に必要な要因であり,公共交通機関利用時の体の不自由さ,要介護認定該当の有無,地域の社会活動の機会を知るための掲示板の閲覧の有無とした.

5. 分析方法

分析を行うにあたり,準備要因,強化要因,実現要因について各地区間でχ2検定を実施したところ有意な関連が見られなかったこと,両地区とも物理的環境等,地域特性は類似していることから,2つの地区を統合して分析を行った.分析は,記述統計を求め,SOC総得点,CCS総得点,各社会活動は正規分布していなかったことから,それぞれ中央値で高得点群と低得点群に二分した.

次に,社会活動4側面を従属変数として各項目とχ2検定およびフィッシャーの正確確率検定を実施し,関連の見られた項目を独立変数としロジスティック回帰分析(変数増加法尤度比)を行い,オッズ比(Odds Ratio,以下OR),95%信頼区間(95% Confidence Interval,以下95%CI)にて検討した.多重共線性については独立変数間の相関係数を求め,全て0.8以下であることを確認した(神田,2015).分析にはSPSS for Windows 25を用い,有意水準は5%(両側)とした.

6. 倫理的配慮

対象者に対し,調査の目的,内容,協力・拒否の自由,拒否した場合も不利益はないこと,個人情報の保護,データ管理,研究結果の活用法等を集合法の場合は口頭および文書で,託送法の場合は文書で説明し,質問紙の同意の項目にチェックを得ることで同意を得た.本研究は,神戸大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号664,承認年月日2018年2月2日).

III. 結果

配布数776部のうち712部回収した(回収率91.8%).年齢と,従属変数である社会活動に欠損値がある87部を除いた625部を分析対象とした(有効回答率80.5%).

1. 対象者の概要(表1
表1  対象者の概要 (N=625)
項目 n %
基本属性 性別 251 40.2
374 59.8
無回答 0 0.0
年齢 前期高齢者 199 31.8
後期高齢者 426 68.2
無回答 0 0.0
平均値±標準偏差 77.34±6.02
中央値(範囲) 77.0(65–94)
家族構成 一人暮らし 160 25.6
夫婦のみ 298 47.7
その他 165 26.4
無回答 2 0.3
居住年数 20年未満 114 18.2
20年以上 508 81.3
無回答 3 0.5
住居形態 一軒家 368 58.9
集合住宅 256 41.0
無回答 1 0.1
最終学歴 小中学校 95 15.2
高校 361 57.8
短大以上 153 24.5
無回答 16 2.6
経済状況 苦しい 113 18.1
ゆとりがある 500 80.0
無回答 12 1.9
疾病 なし 189 30.2
あり 412 65.9
無回答 24 3.8
SOCa総得点 平均±標準偏差 64.56±11.01
中央値(範囲) 64.00(28–90)
 把握可能感(5項目) 平均±標準偏差 24.84±4.92
中央値(範囲) 25.00(11–35)
 処理可能感(4項目) 平均±標準偏差 19.52±3.96
中央値(範囲) 19.00(10–28)
 有意味感(4項目) 平均±標準偏差 20.16±3.89
中央値(範囲) 20.00(4–28)
準備要因 CCSb総得点 平均±標準偏差 16.67±3.66
中央値(範囲) 16.5(7–24)
 つきあい(4項目) 平均±標準偏差 8.82±2.23
中央値(範囲) 9.00(0–12)
 帰属感(4項目) 平均±標準偏差 7.83±2.28
中央値(範囲) 8.00(0–12)
主観的健康感 健康である 488 78.1
健康でない 121 19.4
無回答 16 2.6
社会活動の認識 良い 440 70.4
良いと思わない 101 16.2
無回答 84 13.4
強化要因 友人の数 7人未満 216 34.6
7人以上 392 62.7
無回答 17 2.7
社会活動への誘い あり 466 74.6
なし 130 20.8
無回答 29 4.6
誘いの相手(n=449) 夫または妻 38 8.5
夫または妻以外の家族 11 2.4
友人 208 46.3
地域住民 272 60.6
行政職員 37 8.2
その他 28 6.2
中年期の地域との関わり あり 372 59.5
なし 238 38.1
無回答 15 2.4
実現要因 要介護認定 非該当 583 93.3
該当 41 6.6
無回答 1 0.1
公共交通機関利用時の体の不自由さ 感じる 197 31.5
感じない 373 59.7
無回答 55 8.8
掲示板の閲覧 見る 513 82.1
見ない 99 15.8
無回答 13 2.1
社会活動状況 個人活動(10項目) 平均±標準偏差 7.04±2.11
中央値(範囲) 7.00(0–10)
社会参加・奉仕活動(6項目) 平均±標準偏差 4.05±1.75
中央値(範囲) 4.00(0–6)
学習活動(4項目) 平均±標準偏差 1.04±1.04
中央値(範囲) 1.00(0–4)
仕事(1項目) 平均±標準偏差 0.13±0.34
中央値(範囲) 0.00(0–1)

注)四捨五入しているため,100%にならない項目もある.

a:首尾一貫感覚(Sense of Coherence)

b:地域コミットメント尺度(Community Commitment Scale)

対象者は,男性が251人(40.2%),後期高齢者が426人(68.2%),居住年数20年以上は508人(81.3%)であった.CCS総得点は16.67±3.66で,下位尺度の「つきあい」は8.82±2.23,「帰属感」は7.83±2.28であった.

社会活動状況は,「個人活動」は7.04±2.11点,「社会参加・奉仕活動」は4.05±1.75点,「学習活動」は1.04±1.04点,「仕事」は0.13±0.34点であった.

2. 社会活動と各項目の関連(表2
表2  社会活動4側面と各項目の関連 (N=625)
項目 個人活動 社会参加・奉仕活動 学習活動 仕事
n (%) P n (%) P n (%) P n (%) P
基本属性 性別 103 (41.0) 0.001 132 (52.6) 0.060 151 (60.2) 0.197 44 (17.5) 0.005
204 (54.5) 168 (44.9) 244 (65.2) 37 (9.9)
年齢区分 前期高齢者 97 (48.7) 0.898 94 (47.2) 0.794 124 (62.3) 0.753 38 (19.1) 0.002
後期高齢者 210 (49.3) 206 (48.4) 271 (63.6) 43 (10.1)
家族構成 一人暮らし 88 (55.0) 0.225 75 (46.9) 0.659 109 (68.1) 0.075 15 (9.4) 0.315
夫婦のみ 140 (47.0) 148 (49.7) 192 (64.4) 42 (14.1)
その他 78 (47.3) 75 (45.5) 93 (56.4) 23 (13.9)
居住年数 20年未満 51 (44.7) 0.328 51 (44.7) 0.453 63 (55.3) 0.058 16 (14.0) 0.636
20年以上 253 (49.8) 247 (48.6) 329 (64.8) 63 (12.4)
住居形態 一戸建 191 (51.9) 0.086 181 (49.2) 0.447 244 (66.3) 0.050 55 (14.9) 0.057
集合住宅 115 (44.9) 118 (46.1) 150 (58.6) 25 (9.8)
最終学歴 小・中学校 38 (40.0) 0.148 41 (43.2) 0.541 51 (53.7) 0.086 13 (13.7) 0.185
高校 185 (51.2) 174 (48.2) 231 (64.0) 40 (11.1)
短大以上 74 (48.4) 77 (50.3) 103 (67.3) 26 (17.0)
経済状況 苦しい 38 (33.6) <0.001 49 (43.4) 0.279 67 (59.3) 0.309 13 (11.5) 0.627
ゆとりがある 262 (52.4) 245 (49.0) 322 (64.4) 66 (13.2)
疾病 なし 107 (56.6) 0.014 90 (47.6) 0.877 126 (66.7) 0.310 21 (11.1) 0.318
あり 189 (45.9) 199 (48.3) 257 (62.4) 58 (14.1)
SOC 低い(63≥) 127 (42.8) <0.001 133 (45.7) 0.358 168 (57.7) 0.008 31 (10.7) 0.082
高い(63<) 170 (57.2) 147 (49.5) 203 (68.4) 46 (15.5)
準備要因 CCS 低い(16≥) 107 (37.4) <0.001 104 (36.4) <0.001 162 (56.6) <0.001 36 (12.6) 1.000
高い(17<) 175 (61.2) 176 (61.5) 207 (72.4) 37 (12.9)
主観的健康感 健康 274 (56.1) <0.001 247 (50.6) 0.005 328 (67.2) <0.001 70 (14.3) 0.043
不健康 26 (21.5) 44 (36.4) 59 (48.8) 9 (7.4)
社会活動の認識 良いと思わない 32 (31.7) <0.001 23 (22.8) <0.001 48 (47.5) <0.001 11 (10.9) 0.311
良い 241 (54.8) 246 (55.9) 304 (69.1) 65 (14.8)
強化要因 友人の数 7人未満 67 (31.0) <0.001 73 (33.8) <0.001 117 (54.2) 0.001 25 (11.6) 0.440
7人以上 230 (58.7) 218 (55.6) 268 (68.4) 54 (13.8)
社会活動への誘い 夫または妻 16 (42.1) 0.095 22 (57.9) 0.547 22 (57.9) 0.210 8 (21.1) 0.176
夫または妻以外の家族 5 (45.5) 0.519 5 (45.5) 0.601 8 (72.7) 0.684 2 (18.2) 0.670*
友人 133 (63.9) <0.001 121 (58.2) 0.051 147 (70.7) 0.128 25 (12.0) 0.307
地域住民 149 (54.8) 0.903 148 (54.4) 0.534 180 (66.2) 0.630 41 (15.1) 0.335
行政職員 28 (75.7) 0.008 30 (81.1) <0.001 30 (81.1) 0.058 11 (29.7) 0.003
その他 11 (39.3) 0.084 17 (60.7) 0.412 18 (64.3) 0.749 7 (25.0) 0.076
中年期の地域との関わり あり 195 (52.4) 0.028 194 (52.2) 0.011 242 (65.1) 0.302 43 (11.6) 0.201
なし 103 (43.3) 99 (41.6) 145 (60.9) 36 (15.1)
実現要因 要介護認定 非該当 296 (50.8) 0.003 284 (48.7) 0.230 373 (64.0) 0.185 25 (11.6) 0.440
該当 11 (26.8) 16 (39.0) 22 (53.7) 54 (13.8)
公共交通機関利用時の体の不自由さ 不自由さあり 81 (41.1) 0.004 94 (47.7) 0.714 116 (58.9) 0.072 8 (21.1) 0.047*
不自由さなし 201 (53.9) 184 (49.3) 248 (66.5) 2 (18.2)
掲示板の閲覧 見ない 29 (29.3) <0.001 22 (22.2) <0.001 43 (43.4) <0.001 41 (15.1) 0.689
見る 270 (52.6) 272 (53.0) 346 (67.4) 25 (12.0)

注1)検定はχ2検定,*はフィッシャーの正確確率検定

注2)検定の際に無回答は除外

注3)表の数値は社会活動各側面の高得点群の人数(%)であり,(%)は変数の各カテゴリーを100%とした割合である.

「個人活動」は中央値(7点)で2分し高得点群は307人(49.1%),「社会参加・奉仕活動」は中央値(4点)で2分し高得点群は300人(48.0%),「学習活動」は中央値(1点)で2分し高得点群は395人(63.2%)で,「仕事」をしている者は81人(13.0%)であった.

χ2検定およびフィッシャーの正確確率検定の結果,「個人活動」「社会参加・奉仕活動」「学習活動」「仕事」の全ての活動と有意に関連した項目は,主観的健康感が高いことだった.各活動において有意に関連した項目は,「個人活動」は,女性である,経済的にゆとりがある,疾病がない,SOCが高い,CCSが高い,社会活動に良い認識がある,友人の数が多い,友人の誘いがある,行政職員の誘いがある,中年期の地域との関わりがある,要介護認定非該当である,公共交通機関利用時の体の不自由さがない,掲示板を閲覧することだった.「社会参加・奉仕活動」は,CCSが高い,社会活動に良い認識がある,友人の数が多い,行政職員の誘いがある,中年期の地域との関わりがある,掲示板を閲覧することだった.「学習活動」は,SOCが高い,CCSが高い,社会活動に良い認識がある,友人の数が多い,掲示板を閲覧することだった.「仕事」は,女性である,前期高齢者である,行政職員の誘いがある,交通機関利用時の体の不自由さがないことだった.

3. 社会活動の関連要因(表345
表3  個人活動の関連要因:ロジスティック回帰分析(変数増加法尤度比) (N=625)
独立変数 調整オッズ比 95%信頼区間 P
CCS 低い 1.000 1.218–3.169 0.006
高い 1.965
主観的健康感 低い 1.000 2.486–9.779 <0.001
高い 4.931
友人の数 7人未満 1.000 1.369–3.734 0.001
7人以上 2.261
友人の誘い なし 1.000 1.253–3.308 0.004
あり 2.036

Hosmer-Lemeshowの検定:P=0.488

注1)個人活動を中央値で二分し,高群=1,低群=0とした.

注2)調整変数は,「性別」,「年齢区分」を投入した.

注3)独立変数は,「SOC」,「CCS」,「主観的健康感」,「友人の数」,「友人の誘い」,「行政職員の誘い」,「中年期の地域との関わり」,「経済状況」,「疾病の有無」,「要介護認定の有無」,「公共交通機関利用時の体の不自由さ」,「掲示板の閲覧」,「社会活動の認識」を投入した.

表4  社会参加・奉仕活動の関連要因:ロジスティック回帰分析(変数増加法尤度比) (N=625)
独立変数 調整オッズ比 95%信頼区間 P
CCS 低い 1.000 1.192–2.903 0.006
高い 1.860
友人の数 7人未満 1.000 1.104–2.801 0.017
7人以上 1.759
社会活動の認識 良いと思わない 1.000 1.538–5.833 0.001
良いと思う 2.995
行政職員の誘い なし 1.000 1.315–8.817 0.012
あり 3.405

Hosmer-Lemeshowの検定:P=0.871

注1)社会参加・奉仕活動の得点を中央値で二分し,高群=1,低群=0とした.

注2)調整変数は,「性別」,「年齢区分」を投入した.

注3)独立変数は,「CCS」,「主観的健康感」,「社会活動の認識」,「友人の数」,「行政職員の誘い」,「中年期の地域との関わり」,「掲示板の閲覧」を投入した.

表5  学習活動の関連要因:ロジスティック回帰分析(変数増加法尤度比) (N=625)
独立変数 調整オッズ比 95%信頼区間 P
CCS 低い 1.000 1.061–2.426 0.025
高い 1.605
主観的健康感 低い 1.000 1.242–3.313 0.005
高い 2.028
社会活動の認識 良いと思わない 1.000 1.031–2.795 0.038
良いと思う 1.697
掲示板の閲覧 見ない 1.000 1.178–3.373 0.010
見る 1.994

Hosmer-Lemeshowの検定:P=0.861

注1)学習活動の得点を中央値で二分し,高群=1,低群=0とした.

注2)調整変数は,「性別」,「年齢区分」を投入した.

注3)独立変数は,「SOC」,「CCS」,「主観的健康感」,「社会活動の認識」,「友人の数」,「掲示板の閲覧」を投入した.

ロジスティック回帰分析の結果,「個人活動」は,CCSが高い(OR=1.965; 95%CI=1.218–3.169),主観的健康感が高い(OR=4.931; 95%CI=2.486–9.779),友人の数が多い(OR=2.261; 95%CI=1.369–3.734),友人の誘いがある(OR=2.036; 95%CI=1.253–3.308)ことと関連があった.「社会参加・奉仕活動」では,CCSが高い(OR=1.860; 95%CI=1.192–2.903),友人の数が多い(OR=1.759; 95%CI=1.104–2.801),社会活動に良い認識がある(OR=2.995; 95%CI=1.538–5.833),行政職員の誘いがある(OR=3.405; 95%CI=1.315–8.817)ことと関連があった.「学習活動」では,CCSが高い(OR=1.605; 95%CI=1.061–2.426),主観的健康感が高い(OR=2.028; 95%CI=1.242–3.313),社会活動に良い認識がある(OR=1.697; 95%CI=1.031–2.795),掲示板を閲覧する(OR=1.994; 95%CI=1.178–3.373)ことと関連があった.「仕事」では,いずれの独立変数とも有意な関連が見られなかった.

IV. 考察

1. 対象者の特徴

本研究対象者のCCSの平均得点は先行研究(金谷ら,2015)と比較して高く,8割強の対象者は居住年数が20年以上と長いことからも,地域とのつきあいや帰属感が強い地域であったことが考えられる.

対象者の社会活動の平均値は,先行研究(岡本ら,2006岡本,2012)と比較して「個人活動」はほぼ同等,「社会参加・奉仕活動」「学習活動」は約2倍であった.このことから,社会活動に多く参加できていた集団であったこと,また地域に高等教育機関や区民ホールがあるという物理的環境も,学習活動への参加機会や参加のしやすさに影響したことが推察される.一方で「仕事」をしている者の割合は13%と,先行研究(岡本ら,2006)の約3割に比べて低かった.これは,同先行研究対象者の後期高齢者割合が32.4%であることと比較して,本研究対象者の後期高齢者割合が68.2%と,年齢が高い集団であったことを反映していたと考える.

2. 社会活動との関連要因

1) 「個人活動」との関連要因

多変量解析の結果,「個人活動」高得点群は,準備要因であるCCSが高いこと,主観的健康感が高いこと,強化要因である友人の数が多いこと,友人の誘いがあることと有意な関連が見られた.

準備要因について,「社会参加・奉仕活動」と関連しなかった主観的健康感は「個人活動」では関連があり,OR=4.931と最も高かった.これは「個人活動」がスポーツや旅行など心身ともに日常生活で必要とされる活動以上にエネルギーの必要な項目も含まれることから,自分が健康であると感じることは活動の活発さに大きく影響すると考えた.また,「個人活動」には,友人や隣人など他者との交流に関する項目が半数以上含まれていることから,人付き合いへの意識である地域コミットメントの関連が見られたことが考えられる.地域コミットメントを高めるためには,地域とのつながりを保持することが必要であるが,唐津(2012)は,個々の高齢者を地域社会から切り離された存在にしないこと,そのためのそれぞれの地域に応じた,コミュニティ作りを含めた創意と工夫が求められると示唆しており,地域で活動する保健師の地域特性を踏まえた地域づくりの必要性が考えられた.

強化要因で関連のあった友人の数や誘いについて,影響力のある少数の人々の口コミは,行動の普及のための支援となる(鎌田,2013)ことが示唆されていることから,これらが関連したと考える.地域で活動する保健師は,住民の中から活動参加の誘いを促すキーパーソンを把握し,働きかけることも効果的であると考える.

2) 「社会参加・奉仕活動」との関連要因

多変量解析の結果,「社会参加・奉仕活動」の高得点群は,準備要因であるCCSが高いこと,友人の数が多いこと,社会活動に良い認識があること,強化要因である行政職員の誘いがあることと有意な関連が見られた.

強化要因である行政職員の誘いのオッズ比は,この活動と関連した項目の中で最も高かった.行政職員のうち特に保健師は,日常の地区活動により地域の集いの場や社会資源を把握しているため,地区組織活動の要素が強い「社会参加・奉仕活動」について,高齢者個々の特性に合った活動の情報提供を行うことが期待される.

準備要因について,「社会参加・奉仕活動」は地域とのつながりの要素を強く持っており,組織活動で役員等の役割を担ったり,奉仕活動の項目が含まれる.そのため,本研究対象者において先行研究(金谷ら,2015)と比較して高得点だった,地域への帰属や人付き合いの意識とされる地域コミットメントが関連したと考える.しかし,高齢者の地域での付き合いの程度は年々減少している(厚生労働省,2016).地域や住民に関心を持ち,つながりを持てる地域づくりの必要がある.

3) 「学習活動」との関連要因

多変量解析の結果,「学習活動」の高得点群は,準備要因のCCSが高いこと,主観的健康感が高いこと,社会活動に良い認識を持っていること,実現要因の掲示板を閲覧することと有意な関連が見られた.

準備要因である主観的健康感について,久保(2017)は,生涯学習に取り組んでいる高齢者の9割以上が自分を健康と考えており,主観的健康感が高いことは生涯学習に取り組んでいる高齢者の大きな特徴の一つであると報告している.学習活動は他の活動と比べてより能動的な活動であるため,自分が健康であるという身体的・心理的な余裕が影響すると考える.また,金ら(2004)は,「学習活動」は地域の人間関係を基盤として成立している側面があると述べており,本研究でも人付き合いの要素を持つ地域コミットメントと関連があったと考えた.

実現要因である掲示板の閲覧について,「社会参加・奉仕活動」は活動が定期的に行われ,団体に所属している者は構成員から活動予定を伝達されることに対し,「学習活動」は,場所や開催日時,期間等が様々であり,情報を獲得する意識の低い者は参加しにくいこと(岡本,2004)が指摘されている.また,近年,インターネット利用率は上昇傾向であるが,60歳代で90.5%,70歳代で74.2%,80歳以上になると57.5%(総務省,2020)と年齢が高くなるにつれて低下する.したがって,ICT化が進む現在でも,掲示板を含めた地域で容易に活動の情報を得られる環境を整えることは重要であると考える.

4) 「仕事」との関連要因について

多変量解析の結果,「仕事」をしていることと関連が見られた独立変数はなかった.我が国は,男性の就業割合が高く,後期高齢者より前期高齢者の就業割合が高い(総務省統計局,2020).「仕事」は本研究において調整変数とした性別,年齢の影響が大きかったと考える.

5) 各社会活動と地域コミットメントについて

多変量解析の結果,「仕事」以外の3側面全ての活動が地域コミットメントと関連していた.平均寿命が延伸する中,高齢者の雇用について,希望者全員が66歳以上でも働ける企業は12.7%と報告されている(厚生労働省,2021)ことからも,第二の人生における仕事以外の社会活動参加の重要性は高い.したがって,3つの社会活動に共通して関連のあった地域コミットメントの向上の重要性が明らかになった.

3. 本研究の限界と今後の課題

本研究の対象者は,限定された2地区に居住している者であり,調査方法により社会参加のできていない高齢者が十分に含まれていない可能性があるため,一般化することには限界がある.今後は,調査地域および社会活動に参加できていない高齢者に対象を拡大して検討することが必要である.また,社会活動の内容については,社会情勢と共に変化していることが考えられるため,社会活動の指標の検討が必要である.そして,本研究は横断研究であるため,社会活動の4側面と関連の見られた項目との因果関係については言及できない.したがって,今後は縦断研究を行う必要があると考える.

謝辞

本研究を実施するにあたりご協力いただいたA市内老人会,各地縁組織の皆さまに厚く御礼申し上げます.

なお,本研究は2018年度神戸大学大学院保健学研究科修士論文の一部に加筆修正したものであり,第7回日本公衆衛生看護学会学術集会において発表した.

本研究に開示すべきCOI状態はない.

文献
 
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