Japanese Journal of Public Health Nursing
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Research Article
Verification of the Applicability of a Coordination Scale to Three Occupations That Manage Older Adults with Dementia, Which Was Developed Based on Public Health Nurses’ Experiences
Akemi Okano
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2023 Volume 12 Issue 2 Pages 109-118

Details
Abstract

研究目的:保健師を対象とした認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターのコーディネーション尺度の3職種への適用可能性を検証する.

研究方法:全国の地域包括支援センターで認知症高齢者支援を行う保健師等,社会福祉士,主任介護支援専門員を対象に,郵送法による無記名自記式質問紙調査を2020年10月~11月に行った.調査内容は,個人属性,保健師を対象に作成した認知症高齢者のコーディネーション尺度,外部基準尺度,地域ケア会議年間参加回数,地域診断実施の有無であった.

結果:543名に郵送し432名の回答から有効回答356名を調査対象とした(有効回答率,65.6%).項目分析の結果除外はなく25項目を探索的因子分析した.4因子23項目が抽出された.Cronbach’s α係数は0.84~0.95であった.外部基準尺度との関連では全てに正の有意な相関が認められた.既知グループ法による2群差には有意差が認められた.

考察:改変した尺度の3職種への適用性が確認された.

Translated Abstract

Purpose: The aim of this study was to verify the applicability of a coordination scale to three occupations that managed older adults with dementia. This scale was developed based on public health nurses’ experiences.

Methods: Our target was public health nurses, social workers, and senior long-term care support specialists in community general support centers. The questionnaire survey included personal attributes, a coordination scale, external standard scale, annual participation in community care meetings, and whether or not regional diagnoses were carried out. The study was conducted from October to November 2020.

Results: In total, 356 valid response surveys were obtained from 432 conducted surveys (valid response rate: 65.6%). Four factors comprising of 23 items were selected from 25 items based on the results and exploratory factor analysis. Cronbach’s α was 0.953 (sub-scales: 0.84–0.93). The validation assessment revealed a significant positive correlation among all of the items related to the external reference scale. Moreover, a significant difference was found between the two groups using the known group method.

Discussion: The reliability and validity of applying the scale to these three occupations were confirmed.

I. はじめに

我が国の高齢化が伸展する中,人口の高齢化とともに有病率が高まる疾患が認知症である.認知症は症状の進行とともに生活支援が必要になり介護を要する疾患の1位である(厚生労働省,2019).しかし,介護保険等制度利用の申請や契約の手続きができない,認知症高齢者自身のサービスや受診の拒否,医療機関側の受け入れ拒否,周辺の人々の認知症理解の浸透の不十分さ等(沖田,2010)から,認知症高齢者一人では医療や介護保険制度,成年後見制度などの制度利用につながりにくい.支援の遅れは,認知症症状や身体状態の悪化,家族介護者の疲弊,地域社会でのトラブル等,認知症高齢者及び家族介護の生活の質を低下させる(粟田,2013).

これらを背景に,認知症対策は地域包括ケアシステムに位置づき(2011年),更に早期の段階からの対応が強調され認知症対策等総合支援事業(2012年)により,市町村が裁量を持って個別から地域支援までの施策展開を推進することになった.具体的には,従来の総合相談に加えて認知症初期集中支援チーム等による個別相談,認知症サポーター養成講座や地域住民の集いの場での啓発活動等を実施している.課題には,初期段階の対象把握が不十分,適切なつなぎ先がない(国立長寿医療センター,2018),サポーター活動につながっていない(大野,2020)等が報告される.その背景には,高齢者自身の受診拒否,生活実態の把握困難,高齢者・家族及び地域住民の認知症に関する理解不足(平澤ら,2020依田ら,2020)等があり,単に事業の実施だけでは解決しがたいことを意味する.

認知症支援事業の実施機関は地域包括支援センター(以下,包括)である.粟田(2020)は,地域包括ケアシステムを実現するための実践的調整機関が包括であり,縦割り事業を効果的に整理し,統合していくためのコーディネーションの深化が必要(粟田,2020)と述べる.包括のコーディネーションは,個別的な支援に留まり(水上ら,2015),権利擁護支援や地域社会資源の創出が不十分(岡野,2022)な状況である.今後一層認知症高齢者の増加が見込まれる中,認知症高齢者が安心して地域で暮らし続けられるよう包括のコーディネート機能を高めることが喫緊の課題である.

保健師にとってコーディネーションは,保健師活動に必要な能力(佐伯,2002)や求められる資質・スキルの1つ(平野,2003)である.包括運営形態の8割を占める委託型の保健師経験年数は10年未満が58.3%(日本看護協会,2014)であり,1施設における保健師配置平均人数は1.1人(三菱UFJ&コンサルティング,2018)である.また包括の認知症事業の実施や個別相談の課題解決は,保健師,社会福祉士,主任介護支援専門員(以下,主任CM)の3職種によるチームアプローチ(国立長寿医療センター,2018)で行われるが,認知症支援活動における共通の教育基盤を持たない(高木ら,2017田中,2012).更に包括職員の抱える課題には,ネットワーク構築に関する力量不足(三菱UFJ&コンサルティング,2018)があげられる.これらから,保健師がコーディネーションを牽引することは難しい状況が推察される.包括は3職種のチームアプローチによって住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことを目的とする(介護保険法第115条の46第1項)ことから,むしろ3職種がコーディネーション力を高める必要がある.3職種のコーディネーション力が高まることで,認知症高齢者が安心して住み続けられる地域づくりの実現につながると考える.しかし包括職員の人材育成は,全国レベルでの基盤や方針となるもの(田中ら,2021)や,コーディネーション力を高める研修等がなく,設置主体に委ねられている.

包括の人材育成が未整備な状況の中,まずは個人レベルで同じものさしを用いて自己の行動を振り返り,次に施設レベルとして包括内で検討することが必要と考えた.そして市町村レベルでの認知症高齢者の生活支援に向けたコーディネーション力の検討につながっていくことが望ましい.現在,認知症高齢者のコーディネーション尺度(岡野ら,2020)はあるが,包括保健師を対象にし,包括全職種の力量測定が可能かは明らかにされていない.そこで本研究目的は,包括保健師を対象とした既存尺度を3職種に対象を広げ,その適用可能性を検証する.

II. 用語の定義

認知症高齢者:認知症症状が出現する65歳以上で,何らかの支援の必要が予測される者

認知症高齢者のコーディネーション:認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントし,個別の支援体制を形成するとともに地域資源の創出に発展させる行動

III. 研究方法

1. 対象

全国の包括で認知症支援業務に携わる保健師等(保健師及び看護師),社会福祉士,主任CMとした.2020年4月1日現在厚生労働省が示す各都道府県の包括一覧表を4階層(政令指定都市・特別区,中核市,市区,群町村)に分け,系統抽出法から3分の1程度の1,800施設を抜粋した.

2. 方法

郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った.文書で管理者に研究の趣旨説明と調査協力の意向確認を行い,返信のあった施設に人数分の調査依頼書と調査票を郵送した.調査期間は2020年10月~11月であった.

3. 調査内容

1) 個人属性

年齢,職種,運営形態,包括勤務年数,当該職種経験年数(包括経験年数を除く)

2) 認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターのコーディネーション

包括保健師を対象に開発された認知症高齢者の生活支援に向けたコーディネーション尺度(岡野ら,2020)(以下,元の尺度)を活用する.使用理由は個別から地域資源創出までの因子構成であること,認知症高齢者の支援内容が網羅されていること,信頼性・妥当性が検証されていること,包括職員を対象に作成したコーディネーション尺度が他に見られないことである.3因子25項目からなり,因子構造は第1因子「認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントする」9項目,第2因子「認知症高齢者を医療と介護の関係機関につなぐ」8項目,第3因子「地域の中で認知症高齢者を支える社会資源を創出する」8項目である.1=まったく実践していない ~ 6=十分実施している,の6段階で実践状態を評価する.最低点は25点,最高点は150点で,点数が高いほど実践力が高いことを示す.

3) 外部基準

在宅医療介護従事者における顔の見える関係評価尺度(福井,2014)を基準1とする.在宅医療介護従事者のつながり状態を測定する尺度で,7因子21項目からなる.第1因子「他の施設の関係者とやりとりができる」,第2因子「地域の他の職種の役割がわかる」,第3因子「地域の関係者の名前と顔・考え方がわかる」,第4因子「地域の多職種で会ったり話し合う機会がある」,第5因子「地域の相談できるネットワークがある」,第6因子「地域のリソースが具体的にわかる」,第7因子「退院前カンファレンスなど病院と地域の連携がよい」各3項目から構成される.1=そう思わない ~ 5=そう思うまでの5段階評価を求める.本尺度を用いた理由は,コーディネーションの前の段階(吉池ら,2009)である「つながり」に着眼した尺度であり,本研究概念と重なり合う部分があるが,実践の目標とする到達点は異なるためであった.

事業・社会資源の創出に関する保健師のコンピテンシー評価尺度(塩見ら,2009)を基準2とする.保健師の事業・社会資源の創出に関する保健師のコンピテンシーを評価する尺度で3因子16項目からなる.第1因子「創出の必要性の把握」3項目,第2因子「創出の推進と具現化」9項目,第3因子「創出に向けた協同」4項目から構成される.0=全くそうでない ~ 5=ほとんど10割そうであるまでの6段階評価を求める.本尺度を用いた理由は,社会資源の創出を概念とし,アセスメント,目標設定,計画,実施の過程を含み,中心概念は異なるが過程を踏まえる思考が併存していると考えたためである.

4) 地域ケア会議・地域診断

地域ケア会議は,個別の事例検討を行い,その積み重ねから関係者の課題解決能力の向上やネットワークの構築を目指す活動である.地域ケア会議には会議の設置範囲によって有する機能が異なる(国立長寿社会開発センター,2013).本研究では包括が主体となって運営する担当地区内で開催される地域ケア会議とする.地域診断は,担当地区の情報収集・アセスメントを行い,地区課題を抽出して活動計画を作成する(都筑,2021).また包括ケアシステム構築のプロセスの第1段階である(厚生労働省).これらは,認知症高齢者のアセスメントや社会資源につなぐ準備性,及び地域課題の共有を高める活動である.また,先行研究(岡野,2022)からコーディネーションとの関連が報告されている.地域ケア会議の年間参加回数,地域診断実施の有無を1人1人に尋ねた.

4. 分析方法

1) 項目分析

天井・床効果,尖度・歪度及び項目間相関の確認を行った.項目分析の除外基準は,天井効果は平均値 + 標準偏差が6以上,床効果は平均値-標準偏差が1未満,尖度・歪度は ±1以上,項目間相関はr≦0.8とした.

2) 探索的因子分析

3職種に尺度の利用対象を広げたため,探索的因子分析を行った.因子抽出方法は最尤法,回転方法はプロマックス回転とした.固有値1以上の因子をカイザーガットマン基準及び固有値の変化量を基準とするスクリープロットを基準に因子数を決定し,因子負荷量が0.4未満を除外基準とした(Polit et al., 2011小塩ら,2007).

3) 信頼性の検討

内的一貫性確認のためCronbach’s α係数を求め,0.8未満を除外基準とした(小塩,2017).

4) 妥当性の検証

構成概念妥当性を確認するため既知グループ法を用いた.経験年数(包括及び当該職種),地域ケア会議参加回数,地区診断における2群差の検証を行った.境界基準は,包括経験年数3年未満・3年以上は先行研究(岡野,2019岡野,2022)を参考にした.当該職種経験年数10年未満・10年以上は,包括の先行研究がなかったことから,回答者分布及び先行研究(佐伯ら,2004武居ら,2008林ら,2008)を参考に判断した.地域ケア会議は分布を確認し年間参加回数を中央値とした.地域診断は実施の有無とした.併存妥当性は,基準関連妥当性について2つの外部基準との相関係数を求めた.基準は,ほとんど相関がないr=0.00~±0.20,低い相関があるr=0.20~±0.40中程度相関があるr=0.40~±0.70,高い相関があるr=0.70~±1.00とした(小塩,2017).

分析にはSPSS ver27.0 for Windows,有意水準はP<0.05を用いた.

5. 倫理的配慮

研究対象者に文章で研究目的,方法,協力するか否かは自由意思であり,断った場合何ら不利益は発生しないこと等を説明した.質問紙の同意欄のチェックにより同意を確認した.本研究は,大阪府立大学大学院看護学研究科研究倫理委員会の承認を得て実施した(2020年7月30日,NO:2020-26).

IV. 結果

1,796施設に研究協力意向確認を行った結果,249施設から返信があり(回収率13.9%),543名に郵送し,432名の回答が得られた.そのうち分析に必要な項目の欠損を確認し,356名(有効回答率65.6%)を分析対象とした.

1. 対象者背景

平均年齢は45.7歳(23~68歳),運営形態は直営型17.7%,委託型82.0%であった.職種は保健師等が最も多く,次いで社会福祉士,主任CMの順であった.包括経験年数は5~10年未満が26.1%と最も多かったが,5年未満が全体の5割以上を占めた.職種別包括経験平均年数は,保健師等5.3年,社会福祉士4.7年,主任CM 6.0年であった.包括経験年数を除いた当該職種経験年数は10~20年未満が26.1%と最も多く,5~10年未満を含むと5割を超えた.職種別当該職種経験平均年数は,保健師等13.3年,社会福祉士7.3年,主任CM 7.7年であった.

地域ケア会議の年間参加回数は,0~40回と個人差が大きかった.1~3回未満29.2%が最も多く,次いで0回27.5%で双方合わせて5割を超えた.地域診断実施は,有り30.6%,無し69.4%であった(表1).

表1  属性(N=356)
項目 n (%)/年a
年代 20歳代 21 5.9
30歳代 78 21.9
40歳代 127 35.7
50歳代 98 27.5
60歳以上 29 8.1
記載無し 3 0.8
運営形態 直営 63 17.7
委託 292 82.0
記載無し 1 0.3
職種 保健師等b 132 37.1
(内訳)保健師 96 27.0
    看護師 36 10.1
社会福祉士 127 35.7
主任CM 90 25.3
複数記載c 7 2.0
包括経験年数 1年未満 28 7.9
1~3年未満 89 25.0
3~5年未満 75 21.1
5~10年未満 93 26.1
10年以上 71 19.9
職種別平均年数d 保健師等 129 5.3
社会福祉士 124 4.7
主任CM 90 6.0
当該職種経験年数 1年未満 49 13.8
1~3年未満 38 10.7
3~5年未満 39 11.0
5~10年未満 87 24.4
10~20年未満 93 26.1
20年以上 50 14.0
職種別平均年数d 保健師等 129 13.3
社会福祉士 124 7.3
主任CM 90 7.7
地域ケア会議年間参加回数 0回 99 27.8
1~3回未満 102 28.6
3~5回未満 55 15.5
5~10回未満 70 19.7
10回以上 30 8.6
中央値(幅) 2(0–40)
地域診断実施 無し 245 68.8
有り 108 30.3
記載無し 3 0.8

a:平均年数は年,それ以外は%

b:保健師と看護師

c:2職種の記載あり

d:n=349

2. 尺度の適用可能性の検証

1) 項目分析

天井・床効果を示す6以上,1未満の項目はなかった.尖度・歪度は全て範囲内であった(表2).項目間相関でr≦0.8の項目はなかった.これらから除外項目はなく,25項目を探索的因子分析の対象とした.

表2  認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターのコーディネーションの適用性の検討
元の尺度 項目 内容 全体n=356 職種別n=349 平均値(標準偏差) (保健師等の内訳)
天井効果 床効果 尖度 歪度 平均値 標準偏差 社会福祉士
n=127
主任CM
n=90
保健師職
n=132
保健師
n=96
看護師
n=36
第1因子:認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントする 1 認知症高齢者に会うために訪問を繰り返す 5.23 3.01 −0.283 −0.226 4.12 (1.11) 4.10 (1.08) 4.06 (1.13) 4.14 (1.13) 4.11 (1.04) 4.22 (1.36)
2 認知症高齢者のペースに合わせ話を引き出す 5.45 3.49 −0.378 −0.362 4.47 (0.98) 4.38 (0.93) 4.53 (1.10) 4.49 (0.94) 4.44 (0.90) 4.64 (1.02)
3 興奮状態や徘徊などの様子を目の当たりにしてBPSDの実態を把握する 4.96 2.62 −0.214 −0.6 3.79 (1.17) 3.71 (1.15) 3.93 (1.21) 3.73 (1.11) 3.63 (1.15) 4.03 (1.06)
4 認知症高齢者の行動や態度の意味を推察する 5.18 3.26 −0.25 −0.392 4.22 (0.96) 4.13 (0.89) 4.29 (1.02) 4.24 (0.99) 4.17 (1.01) 4.44 (0.91)
5 室内の状態や日常生活用品の使用状況から生活行為の実態を推察する 5.39 3.47 −0.39 −0.349 4.43 (0.96) 4.26 (0.94) 4.43 (1.01) 4.58 (0.93) 4.51 (0.86) 4.78 (1.10)
6 薬袋や処方薬などから受療状況を推察する 5.46 3.46 −0.49 −0.185 4.46 (1.00) 4.20 (1.00) 4.49 (1.04) 4.67 (0.94) 4.63 (0.87) 4.78 (1.10)
7 認知症高齢者を介護している家族の介護負担感の状態を理解する 5.43 3.68 −0.595 0.741 4.55 (0.88) 4.36 (0.94) 4.67 (0.85) 4.64 (0.79) 4.64 (0.71) 4.64 (0.99)
8 生活に影響を及ぼしている状態から認知症の専門治療の必要性を判断する 5.48 3.58 −0.528 0.151 4.53 (0.95) 4.35 (0.96) 4.66 (0.90) 4.60 (0.95) 4.54 (0.94) 4.75 (0.97)
9 認知症高齢者が暮らす市区町村の認知症施策を理解する 5.48 3.34 −0.429 −0.294 4.41 (1.07) 4.24 (1.05) 4.54 (1.11) 4.48 (1.02) 4.42 (1.04) 4.64 (0.93)
第2因子:認知症高齢者を医療と介護の関係機関につなぐ 10 前もって関係機関に相談し受診やサービスの受け入れをよくする 5.44 3.26 −0.392 −0.086 4.35 (1.09) 4.16 (1.16) 4.56 (1.00) 4.37 (1.02) 4.35 (0.98) 4.42 (1.23)
11 介護保険の主治医意見書を書いてもらえる医療機関を見つけて受診につなぐ 5.73 3.35 −0.697 0.05 4.54 (1.19) 4.31 (1.26) 4.79 (1.04) 4.56 (1.17) 4.51 (1.13) 4.69 (1.28)
12 受診同行して放置していた疾患の治療再開につなげる 4.98 2.23 −0.073 −0.904 3.60 (1.38) 3.37 (1.28) 3.71 (1.36) 3.67 (1.43) 3.65 (1.42) 3.75 (1.46)
13 認知症高齢者の状態にあわせた対応協力を関係機関に依頼する 5.36 3.30 −0.41 −0.09 4.33 (1.03) 4.13 (1.03) 4.49 (0.96) 4.37 (1.03) 4.38 (1.02) 4.36 (1.07)
14 認知症高齢者が確実に内服できる方法を調整する 4.82 2.56 −0.285 −0.433 3.69 (1.13) 3.41 (1.14) 3.87 (1.06) 3.79 (1.13) 3.76 (1.09) 3.86 (1.25)
15 認知症高齢者の状態にあわせてケアマネージメントできる居宅介護支援事業所を選定しつなぐ 5.72 3.50 −0.752 0.256 4.61 (1.11) 4.43 (1.17) 4.88 (0.99) 4.58 (1.11) 4.63 (1.00) 4.44 (1.36)
16 公共料金や税金が滞納状態となった理由を市区町村に説明し発生した不利益の対応について相談する 4.90 1.94 −0.093 −0.989 3.42 (1.48) 3.24 (1.40) 3.59 (1.47) 3.41 (1.52) 3.27 (1.52) 3.78 (1.50)
17 認知症高齢者を受診につなげない場合は訪問の医療サービスなど別の方法を調整する 5.13 2.43 −0.222 −0.796 3.78 (1.35) 3.51 (1.35) 4.03 (1.35) 3.83 (1.30) 3.77 (1.33) 4.00 (1.22)
第3因子:地域の中で認知症高齢者を支える社会資源を創出する 18 地域の核となる住民を見つける 4.58 2.24 0.034 −0.536 3.41 (1.17) 3.30 (1.21) 3.53 (1.17) 3.39 (1.12) 3.45 (1.13) 3.22 (1.10)
19 認知症高齢者に関係する社会資源の特徴を把握しておく 5.01 2.85 −0.142 −0.683 3.93 (1.08) 3.79 (1.10) 4.13 (1.07) 3.92 (1.07) 3.94 (1.07) 3.86 (1.07)
20 認知症高齢者のつながりから地域の支援者に相談し協力を得る 4.94 2.68 −0.119 −0.384 3.81 (1.13) 3.54 (1.09) 4.00 (1.18) 3.89 (1.10) 3.98 (1.08) 3.67 (1.15)
21 認知症高齢者を認知症カフェや集いの場など介護保険サービス以外の資源につなげる 5.02 2.48 −0.144 −0.744 3.75 (1.27) 3.62 (1.25) 3.84 (1.30) 3.78 (1.27) 3.76 (1.32) 3.83 (1.13)
22 認知症高齢者の支援に必要な関係者がケース会議に参加できるよう調整する 5.23 2.65 −0.336 −0.612 3.94 (1.29) 3.83 (1.25) 4.27 (1.24) 3.80 (1.34) 3.85 (1.35) 3.64 (1.33)
23 認知症について住民に啓発活動を行い見守りの目を増やす 4.93 2.59 −0.271 −0.641 3.76 (1.17) 3.61 (1.13) 3.84 (1.22) 3.80 (1.18) 3.78 (1.18) 3.83 (1.21)
24 住民が認知症支援者として活躍できる場をつくる 4.14 1.62 0.283 −0.781 2.88 (1.26) 2.78 (1.21) 3.04 (1.27) 2.86 (1.32) 2.90 (1.33) 2.78 (1.31)
25 認知症高齢者に対する住民や関係機関の声から支援協力者が増えていることを確かめる 4.05 1.55 0.412 −0.511 2.80 (1.25) 2.79 (1.19) 2.96 (1.26) 2.7 (1.30) 2.68 (1.26) 2.75 (1.42)

2) 探索的因子分析

因子数を固有値1.0以上・スクリープロットに基づいたところ,3及び4を得た.因子数3では因子負荷量が全て0.4以上となったが,因子間の負荷量に差のない1項目(9)が見られた.また第2因子に項目が集中し,2つの意味解釈もできた.そこで因子数4で展開した.因子負荷量0.4未満2項目が除外され,4因子23項目を得た.各因子に含まれる項目の意味内容に矛盾点はなく,4因子23項目を最適解と判断した.元の尺度から除外された項目は,第1因子項目9「認知症高齢者が暮らす市区町村の認知症施策を理解する」(因子負荷量0.314)及び第3因子項目21「認知症高齢者を認知症カフェや集いの場など介護保険サービス以外の資源につなげる」(因子負荷量0.304)であった.因子間移動が見られた項目は,第3因子項目22「認知症高齢者の支援に必要な関係者がケース会議に参加できるよう調整する」が第2因子に移動した.また項目18「地域の核となる住民を見つける」,項目19「認知症高齢者に関係する社会資源の特徴を把握しておく」,項目20「認知症高齢者のつながりから地域の支援者に相談し協力を得る」が第3因子から新たに第4因子となった.第2因子の意味内容から因子名の変更を行った.第2因子「認知症高齢者を医療・介護・権利擁護の支援につなぐ」とした.第4因子は「地域の支援者に協力を得る」と命名した(表3).

表3  探索的因子分析
第1因子 第2因子 第3因子 第4因子
第1因子 認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントする α=0.922
5 室内の状態や日常生活用品の使用状況から生活行為の実態を推察する 0.973 −0.111 0.013 −0.021
4 認知症高齢者の行動や態度の意味を推察する 0.947 −0.244 0.048 0.109
2 認知症高齢者のペースに合わせ話を引き出す 0.775 −0.008 −0.054 0.08
6 薬袋や処方薬などから受療状況を推察する 0.739 0.208 −0.037 −0.119
7 認知症高齢者を介護している家族の介護負担感の状態を理解する 0.656 0.208 −0.015 0.011
8 生活に影響を及ぼしている状態から認知症の専門治療の必要性を判断する 0.584 0.343 −0.036 −0.036
3 興奮状態や徘徊などの様子を目の当たりにしてBPSDの実態を把握する 0.567 0.064 0.147 −0.044
1 認知症高齢者に会うために訪問を繰り返す 0.524 0.126 −0.019 0.028
第2因子 認知症高齢者を医療・介護・権利擁護の支援につなぐ α=0.903
11 介護保険の主治医意見書を書いてもらえる医療機関を見つけて受診につなぐ 0.182 0.832 −0.018 −0.198
10 前もって関係機関に相談し受診やサービスの受け入れをよくする 0.08 0.756 −0.047 −0.023
17 認知症高齢者を受診につなげない場合は訪問の医療サービスなど別の方法を調整する −0.133 0.678 0.016 0.201
16 公共料金や税金が滞納状態となった理由を市区町村に説明し発生した不利益の対応について相談する −0.091 0.658 0.013 0.076
12 受診同行して放置していた疾患の治療再開につなげる 0.06 0.615 0.039 0.006
13 認知症高齢者の状態にあわせた対応協力を関係機関に依頼する 0.257 0.503 −0.052 0.175
15 認知症高齢者の状態にあわせてケアマネージメントできる居宅介護支援事業所を選定しつなぐ 0.256 0.48 −0.039 0.073
14 認知症高齢者が確実に内服できる方法を調整する 0.197 0.457 0.086 0.068
22 認知症高齢者の支援に必要な関係者がケース会議に参加できるよう調整する −0.009 0.444 0.203 0.204
第3因子 地域の中で認知症高齢者を支える社会資源を創出する α=0.848
24 住民が認知症支援者として活躍できる場をつくる −0.007 −0.038 0.987 −0.065
25 認知症高齢者に対する住民や関係機関の声から支援協力者が増えていることを確かめる −0.031 0.047 0.812 −0.003
23 認知症について住民に啓発活動を行い見守りの目を増やす 0.12 0.023 0.561 0.12
第4因子 地域の支援者に協力を得る α=0.881
18 地域の核となる住民を見つける 0.073 −0.033 −0.027 0.896
19 認知症高齢者に関係する社会資源の特徴を把握しておく 0.067 0.086 −0.019 0.747
20 認知症高齢者のつながりから地域の支援者に相談し協力を得る −0.077 0.106 0.048 0.737
項目全体 Cronbach’s α=0.950 因子間相関 第1因子 0.752 0.391 0.602
第2因子 0.483 0.706
第3因子 0.589
第4因子

注)因子抽出法:最尤法 回転法:Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

3) 信頼性の検討

Cronbach’s α係数を算出し,尺度全体α=0.950,第1因子α=0.922,第2因子α=0.903,第3因子α=0.848,第4因子α=0.881で,尺度全体,各因子とも基準とした0.8を上回った(表3).

4) 妥当性の検討

基準関連妥当性では,基準1(福井,2014)との関連ではr=0.53(P<0.01)と中低度の相関を認め,各因子ではr=0.30~0.50と低~中程度の相関を認めた.基準2(塩見ら,2009)との関連ではr=0.53(P<0.01)と中程度の相関を認め,各因子においてもr=0.42~0.48(P<0.01)と中程度の相関を認めた(表4).

表4  基準関連妥当性
全体 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子
基準1:在宅医療介護従事者における顔の見える関係評価尺度 r=0.53** 0.47** 0.50** 0.30** 0.47**
基準2:事業,社会資源の創出に関する保健師のコンピテンシー評価尺度 r=0.53** 0.45** 0.47** 0.42** 0.48**

注)ピアソンの相関係数 **P<0.01

既知グループ法では,包括経験年数3年未満・3年以上では,尺度全体(P=0.001),各因子(P=0.001~0.008)で有意な差が認められた.当該職種経験年数10年未満・10年以上では,尺度全体(P=0.006),1,2,4因子(P=0.011~0.027)に有意な差が認められ,第3因子には有意差がなかった.地域ケア会議参加数低群・高群の比較では,尺度全体(P=0.001),各因子(P=0.001~0.005)で有意な差が認められた.地域診断の実施の有無は,尺度全体(P=0.001),第2~4因子(P=0.001)に有意な差が認められたが,第1因子には有意差がなかった(P=0.072)(表5).

表5  既知グループ(N=356)
n 全体 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子
平均値 標準偏差 P 平均値 標準偏差 P 平均値 標準偏差 P 平均値 標準偏差 P 平均値 標準偏差 P
包括経験年数 3年未満 117 84.64 18.19 0.001 32.71 6.49 0.001 32.87 8.44 0.001 8.80 3.17 0.008 10.26 3.04 0.001
3年以上 239 94.76 17.28 35.50 6.26 37.92 7.95 9.76 3.21 11.58 2.95
当該職種経験年数 10年未満 206 89.34 18.52 0.006 33.88 6.76 0.011 35.36 8.51 0.011 9.24 3.21 0.139 10.87 3.12 0.027
10年以上 143 94.64 17.22 35.63 5.93 37.67 8.07 9.76 3.21 11.59 2.88
地区地域ケア会議年間参加回数 低群a 149 87.22 18.39 0.001 33.44 6.78 0.005 34.64 8.58 0.002 8.60 3.06 0.001 10.55 2.96 0.002
高群a 207 94.47 17.48 35.41 6.10 37.43 8.17 10.05 3.21 11.57 3.03
地域診断実施 無し 245 89.19 17.87 0.001 34.16 6.62 0.072 35.28 8.24 0.001 9.03 3.21 0.001 10.72 2.96 0.001
有り 108 96.44 18.13 35.46 6.04 38.47 8.62 10.38 3.11 12.13 3.00

注)t検定 P<0.05

a:中央値を境界とし低群<2,高群≧2

V. 考察

1. 対象者背景

回答者の傾向を全国調査と比較すると,全国の運営形態は,直営20.5%,委託79.5%(厚生労働省,2021),包括経験年数は,3年未満48.2%,3年以上51.8%,職種の配置平均人数は,保健師等1.7(保健師1.1,看護師0.6)人,社会福祉士1.9,主任CM 1.4人(三菱UFJ&コンサルティング,2018)と比べると,本調査の回答者は,委託及び3年以上の包括経験年数を持つ者,保健師が多い傾向にあった.保健師の多い傾向が地域診断実施率を高めたと考えられる.

2. 尺度の適用可能性の検討

項目分析では,除外基準に該当する項目はなく,回答分布の偏りは見られなかった.

探索的因子分析では,元の尺度第3因子が2つの因子に分かれた4因子構造を最適解と判断した.因子が分かれた要因は次のことが考えられた.保健師の地域支援活動の展開は,地域の人材の発掘(中山,2009)や地域のキーパーソンとしっかりつながる(尾形ら,2011)等地域住民を巻き込む.そして住民の主体性(中山,2009)や力量(小島ら,2016)を引き出す.これらから,保健師にとって住民に働きかけることは,地域の社会資源の創出過程に含まれた.一方本研究では,住民は個別支援活動におけるつなぐ相手と捉えられ,社会資源の創出と区別されたと理解した.次に,元の尺度では第3因子であった項目22が第2因子に移動した.ケース会議の参加調整について,元の尺度では見守りの目を増やす等社会資源創出につなげるために,認知症高齢者に関係する人々をケース会議に参加できるよう調整していた.一方本研究では,個別支援のケース会議として参加者を調整していた.個別支援の延長か,地域の資源創出につなげることを見越しての活動か,保健師を含む3職種集団と保健師のみの集団の視点の違いが結果に影響したと考えられた.因子構造や項目間の移動は,尺度利用の対象を3職種に広げた結果であり,3職種が利用できる尺度として,4因子構造を最適解とした判断は適正であったと考える.

信頼性の検証では,基準としたCronbach’s α係数を全て上回ったことから内的一貫性が確認できた.

妥当性の検証について,基準関連妥当性の基準1は,つながりを持つことを目標にした尺度である.因子間では本研究の第2因子との相関が高く,第3因子が低いという因子の特徴を示していた.基準1の概念は本研究の概念の前段階であり(吉池ら,2009),コーディネーションを高めるための取組みである(福井,2014)ため,尺度全体に中程度の相関を得たと考える.基準2はどの因子も同じ程度の相関であり,因子の特徴が示されなかった.基準2は社会資源の創出を概念とし,創出に向けたアセスメント,目標設定,計画,実施の過程を含む.本調査のコーディネーション過程とプロセスが類似していることが影響したのではないかと考えられる.しかしながら,本尺度下位尺度と外部基準との相関係数は正の有意な中程度の相関を認め,併存妥当性は確認されたと考える.

既知グループでは,尺度全体は全てに,各因子では概ね2群の差が認められた.有意差が認められなかった因子は当該職種経験年数と第3因子であった.第3因子は地域の中で地域資源を創出する項目群である.認知症高齢者の地域社会資源の創出は,包括保健師のコーディネーションにおいても課題とされ(岡野,2022),3職種においても差がない結果は,包括の認知症高齢者のコーディネーションの課題であると言える.地域診断と第1因子にも有意差が認められなかった.第1因子は認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントする項目群である.地域診断は地域を構成する人口構成や環境要因,資源等をアセスメントすることから,有意差がなかったことは本研究結果を支持するものと考える.これらから構成概念妥当性は確認されたと考える.

以上,保健師を対象にした尺度から3職種に適応される尺度への改変は,信頼性と妥当性が確認され,3職種が活用できる尺度であることが検証された.

3. 保健師対象から3職種対象とした認知症高齢者のコーディネーション尺度の改変点

元の尺度は,第1因子「認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントする」,第2因子「認知症高齢者を医療と介護の関係機関につなぐ」,第3因子「地域の中で認知症高齢者を支える社会資源を創出する」の3因子構造であった.3職種への適応性確認においての因子構造は,第1因子「認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントする」,第2因子「認知症高齢者を医療・介護・権利擁護の支援につなぐ」第3因子「地域の中で認知症高齢者を支える社会資源を創出する」,第4因子「地域の支援者に協力を得る」の4因子構造となった.4因子構造によってコーディネーションのどの段階に課題があるのかを明確に評価できる尺度になったと考える.

4. 本尺度の活用性

認知症高齢者支援を行う際に,本尺度の項目に当てはめて自己のコーディネーションを振返り,各下位因子を点数化し,個別支援のアセスメント,医療・介護・権利擁護の支援へのつなぎ,地域住民の協力,地域社会資源の創出のどの段階に自己の課題があるかを確認する.そして質問項目の内容から不足部分を認識し,意識しながらコーディネーションをする.また,各職種の強みと弱みを理解したチームアプローチの実践や,個別から地域支援に向けた認知症支援事業の展開のための検討資料とする.このような本尺度の活用により,認知症高齢者が安心して地域で暮らし続けられるためのコーディネーション力を高める糸口になると考える.

5. 本研究の限界と今後の課題

回答者属性が全国の分布と一致せず(厚生労働省,2021三菱UFJ&コンサルティング,2018)委託及び3年以上の包括経験年数を持つ者,保健師が多い傾向にあった.データ収集期間の地域ケア会議の参加回数へのコロナ禍の影響が否定できず,通常活動に戻った時点での確認が必要である.また尺度の適応について,今後も別の集団で検証することで尺度の精度及び安定性が図れると考える.今後は,職種間のコーディネーションの特徴を明らかにすることでお互いの専門性の理解が深まると考える.

謝辞

本研究にご協力いただいた地域包括支援センター職員の皆様に深くお礼を申し上げます.本研究は,JSPS科研費 20K19249により助成を受けた.

本調査において開示すべきCOIはない.

文献
 
© 2023 Japan Academy of Public Health Nursing
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