Japanese Journal of Public Health Nursing
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Review Article
Newspaper Article-extracted Approaches to the Maintenance of Social Interactions in Communities during the COVID-19 Pandemic
Aika IshigamiAya Sakakihara
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2023 Volume 12 Issue 2 Pages 89-98

Details
Abstract

目的:新聞記事に基づく分析により,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)流行下における地域のつながりを維持するための工夫を明らかにする.

方法:読売新聞を対象紙とし,データベースを用いて,「コロナ」,「地域」,「つながり」のキーワードをandでつないで検索を行い,49件の記事を分析対象とした.地域のつながりの維持に関する文脈を抽出してコード化し,類似するコードを統合してカテゴリー化した.

結果:COVID-19流行下での地域のつながりを維持する工夫として,《屋外での交流》《感染対策を講じた屋内での交流》の集合型と,《オンラインによる対面交流》《メッセージを交わす》《メッセージを届ける》《物を介した交流》《つながりを感じられるように住民の作品を展示する》の非集合型が示された.

考察:感染状況に応じて集合型の交流を取り入れること,COVID-19流行を機に新たなつながりを築くこと,地域のつながりを健康づくりへと発展させることが重要である.

Translated Abstract

Aim: The aim of this study was to clarify the newspaper article-extracted approaches to maintain social interactions in communities during the COVID-19 pandemic.

Methods: Yomiuri Shimbun articles were searched for in the Yomiuri Database Service using the following keywords connected with “and”: “COVID-19,” “community,” and “social connection.” In total, 49 articles were adopted for analysis. Contexts regarding the maintenance of social interactions in communities were extracted and encoded, and these codes were categorized based on similarities.

Results: The following two types of approaches to maintain social interactions in communities during the COVID-19 pandemic were identified: group meetings, such as <socializing outdoors> and <socializing indoors while adopting infection control measures>, and non-group meetings, such as <online face-to-face interactions>, <exchanging messages>, <sending messages>, <interactions through objects>, and <displaying people’s art content to induce social interaction in communities>.

Discussion: It is important to incorporate group meetings, depending on the infection situation; to view the COVID-19 epidemic as an opportunity to build new interactions; and to develop community interactions for health promotion.

I. 緒言

新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の流行に伴って,度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出された.その都度外出自粛などの行動制限を強いられ,時にはサロンや通いの場の中止・延期,子育て支援施設や児童館,図書館,公園なども利用が制限された.2020年8月に各市町村の社会福祉協議会を対象に行われた調査においても,サロン活動などの人が集まって行う活動を中心に休止や活動延期がみられており(吉田,2021),人と人とのつながりを築きにくい状況が生じている(荻野,2020).

子育て世代では,母親の約2~3割がCOVID-19によって保育園・幼稚園や学校,地域と「つながりがもてない」と感じていることが明らかにされている(ベネッセ教育総合研究所,2020).子どもがずっと家にいることのストレスを感じる母親も多く(久保,2020),他者とのつながりが減少することで不安が増大したり,悩みが解消されなかったりすることで,虐待の発生につながることが危惧されている(近澤ら,2021).子どもにとっても,COVID-19の影響で,友達と会えない,遊ぶ場がない中で,ゲームや動画の時間が増え,運動不足になっている現状がある(石光ら,2021笠原,2020ベネッセ教育総合研究所,2020).

高齢者に関しては,COVID-19予防のための自粛生活により,活動量の減少(呉代ら,2021石光ら,2021Sakaki et al., 2021Yamada et al., 2020)や,友人・家族とのコミュニケーション頻度の減少(石光ら,2021)が問題視されている.このように,運動の機会や他者との交流・社会参加といった活動を失うことは,閉じこもりや生活不活化を引き起こし,フレイルや認知症に繋がることが懸念されている(長谷ら,2021).また,感染対策のために社会的距離を取らざるを得ないため,人と人の心理的距離も離れ,孤立感が生じやすいことから,自殺につながる可能性が示唆されている(稲垣ら,2021).以上のことから,COVID-19流行下でのつながりの持つ価値は高まっており,感染対策を講じながらも,つながりを維持することが重要であると考える.

先行研究では,COVID-19流行下における地域でのサロンや集いの場等の活動状況調査(吉田,2021)や,COVID-19流行下での地域のつながりづくりの方法の紹介(荻野,2020)はされているが,COVID-19流行下でどのように工夫をしながら地域のつながりを維持しているかを明らかにした研究はない.

そこで本研究は,新聞記事を基に,COVID-19流行下での地域のつながりを維持するための工夫について明らかにすることを目的とした.COVID-19流行下において地域のつながりを維持するための方法や,取り組む人・組織は多様であることが考えられ,全国各地の取り組みをタイムリーに発信する新聞記事を用いることが適当であると考えた.

本研究により,地区活動を通じてソーシャルキャピタルの醸成を担う保健師(厚生労働省,2013)が,COVID-19流行下において地域のつながりを維持しながら,健康二次被害を予防する方法を考える上で参考資料になると考える.

なお,本研究における「つながり」とは集合の有無を問わず,交流によって人と人がつながりを感じられるものと定義する.また,「工夫」は,地域のつながりを維持するために交流方法の変更を行ったものや,新たに地域のつながりを築くための交流を始めたものに加え,COVID-19流行前後で交流方法を変更しなくても地域のつながりを維持できたものを含む.

II. 研究方法

1. 分析対象

全国3大紙のデータベースである,「読売新聞ヨミダス歴史館:全国版および地域版(沖縄県を除く各都道府県の地域ニュースの記事)」,「朝日新聞クロスサーチ:アエラ,週刊朝日,朝日新聞デジタルを除いた朝日新聞記事」,「毎日新聞記事検索:朝刊,夕刊,地方版(各都道府県の地域ニュース),日曜版」を用いて,「コロナ」,「地域」,「つながり」のキーワードをandでつなぎ,検索を行った.期間は初めて日本で感染者が発生した2020年1月23日から4回目の緊急事態宣言が解除された2021年9月30日とした.検索した結果,読売新聞849件,朝日新聞778件,毎日新聞1,294件が検出された.そのうち地域のつながりに関係ないものや地域のつながりを維持するための工夫が具体的に明記されていないもの,居住地域(市内を含める)の人とのつながりでないもの,予定段階にありまだ実施していないものを除外した結果,条件を満たす記事は,読売新聞49件,朝日新聞17件,毎日新聞15件であった.朝日新聞,毎日新聞の記事には読売新聞が取り上げた記事との重複もあり,COVID-19流行下での地域のつながりを維持する工夫も同様であったことから,今回は,読売新聞の記事49件を分析対象とした.

2. 分析方法

記事を精読し,1つの記事で地域のつながりを維持する工夫が複数ある場合は記事を分けて,57件の分析単位とした.分析単位ごとに文脈の意味を捉えてコード化した.次にコードの類似性から分類し,同様の工夫方法のまとまりごとにカテゴリー化した.

また,地域のつながりをつくるための交流の企画者と交流の対象者ごとにカテゴリー別の記事件数を算出した.

さらに,カテゴリー別の記事件数の推移を捉えるため,3か月に区切って記事件数を算出した.

3. 倫理的配慮

本研究は新聞記事の記述内容を分析対象としており,人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針には該当しない.分析にあたっては,著作権の侵害に当たらないように,記事の意図と異ならないよう解釈した.

III. 研究結果

1. 地域のつながりを維持する工夫

57件の分析単位のうち,COVID-19流行下で地域のつながりを維持するために交流方法の変更を行ったのは28件,新たに地域のつながりを築くために始めた交流は27件,COVID-19前後で交流方法を変更しなくても地域のつながりを維持できたものは2件であった.

分析の結果,COVID-19流行下での,地域のつながりを維持するための工夫として,7カテゴリーが抽出された(表1).以下,カテゴリーごとに具体的な工夫内容を抜粋して示す.なお,カテゴリーは《 》で示す.

表1  COVID-19流行下において地域のつながりを維持するための工夫
カテゴリー 企画者 協力者 対象者 地域 記事掲載日 コード 件数
オンラインによる対面交流(9件) 非営利団体 高齢者 東京 2021.09.20 高齢者同士が対面で体操や雑談をする活動をオンラインに変更し,自宅から参加できるようにオンライン環境を整え,交流を図った. a 1件
非営利団体 子ども 東京 2020.04.24 中高生にタブレット端末や通信機器の貸出を行い,オンラインでの学習指導や会話,食事会を行った. a 2件
非営利団体 学生ボランティア 子ども 東京 2021.07.13 a
企業 高齢者とその家族 神奈川 2021.02.08 対面で行っていた認知症カフェを,オンラインに変更して行った. a 2件
企業 高齢者とその家族 東京 2021.06.03 a
企業 親子 鳥取 2020.09.20 地元のサッカーチームが,休止中の子ども食堂を利用していた親子と,オンラインを用いて食事会を開き交流を図った. b 1件
企業 地域住民全体 福岡 2020.05.12 IT関連会社が,地域住民がインターネット上で交流するためのポータルサイトを開設し,イベントや講座などにオンラインで参加できるようにした. b 1件
教育機関(大学生) 高齢者 京都 2020.06.05 大学生が,電子機器の扱いが苦手な高齢者に,スマートフォンの使い方を教示し,その後,高齢者と無料通信アプリLINEのビデオ通話機能を用いて交流を図った. b 1件
行政 高齢者と子ども 東京 2020.10.08 COVID-19の影響で外出できず,家族と会う機会も少なくなった高齢者に,子ども達とオンラインを用いて交流する機会を作った. b 1件
メッセージを交わす(4件) 行政 高齢者 東京 2021.04.17 行政が高齢者に対してグループで健康課題に取り組むことができるアプリを紹介し,それを用いて高齢者が互いに画像やデータの共有をしたり,チャット機能を使ったりしながら励まし合い,交流を図った. b 2件
行政 企業 高齢者 東京 2021.07.20 b
企業 高齢者 東京 2021.01.03 高齢者が近所同士でアプリを利用し,直接会わなくても,画像を共有したり,書き込みをして交流を図った. b 1件
地域包括支援センター 高齢者と子ども 東京 2021.07.20 インターネットが苦手な高齢者が社会とのつながりを絶やさず,交流の機会を持てるように,子ども食堂を利用する小学生とペアになり,文通を行った. b 1件
屋外での交流(5件) 社会福祉協議会 高齢者 大阪 2021.06.30 男性高齢者の孤立を防ぎ,農業を通じて人とのつながりを深めるために開設された都市型農業が,COVID-19流行下でも交流の場となった. c 1件
住民組織(趣味の会) 高齢者 秋田 2021.05.17 不登校や引きこもりを経験した若者で結成された和太鼓のメンバーが,毎年高齢者施設内でやっている演奏会の場所を屋外へ変更し,開催した. a 1件
住民組織(子育てグループ) 行政 親子 埼玉 2021.05.01 母親同士がつながりを作るために行っていた中庭でのフリーマーケットを,COVID-19の影響で一時休止していたが,再開して交流を図っている. c 1件
住民組織(自治会) 社会福祉協議会 高齢者 京都 2021.03.18 地域活動が中止になる中,地域の高齢者が交流を図るために声を掛け合い,公園で距離を保ちながらラジオ体操を始めた. b 2件
地域住民(個人) 住民組織 高齢者 埼玉 2021.01.03 b
感染対策を講じた屋内での交流(9件) 非営利団体 子ども 東京 2021.07.13 困窮家庭の子どもの居場所支援を継続するために,アクリル板で仕切られた机で「默食」し,人数制限や時間短縮等の対策を講じてつながりを維持した. a 2件
非営利団体 子ども 東京 2021.06.22 a
非営利団体 高齢者 東京 2021.03.28 高齢者が住民交流施設で行っていた娯楽イベントの開催方法を変更し,遮蔽板で仕切られた座席に座って食事をするなどの対策を講じ,交流を続けた. a 1件
非営利団体 高齢者 山梨 2020.08.02 高齢者サロンや高齢者のイベントを人数制限やマスクの着用,手指消毒等の対策を講じて行った. a 3件
住民組織(高齢者サロン) 高齢者 京都 2020.08.27 a
行政 高齢者 東京 2020.09.21 a
住民組織(青少年育成委員会) 子ども 東京 2021.05.03 学校行事が中止になる中で,区の保護者と地域住民等で構成される青少年育成委員会が,子どもの夢の実現を個別に手助けするプロジェクトを行った. b 1件
教育機関(高校生) 健康運動指導士 高齢者 石川 2020.12.07 高校生が,外出を控えて体力が落ちてしまった高齢者のために,健康運動指導士の意見を取り入れながら高齢者が自宅でできる体操を考えた.実際に,高齢者と一緒に,マスク着用,十分な距離を確保した上で,体育館で体操を行った. b 1件
企業 高齢者 山梨 2021.06.21 COVID-19流行下でも音楽を通じて人や地域のつながりを深めるために立ち上げられた「童謡を楽しむ会」では,ビニールで仕切りをし,マスクを着用しながら,大きな声は出さずに交流している. b 1件
メッセージを届ける(8件) 非営利団体 親子 神奈川 2021.02.21 赤ちゃんへの出産祝いを直接渡せないため,祝いの気持ちが伝わるように,メッセージを添えて祝い品を贈った. a 1件
非営利団体 高齢者 神奈川 2020.07.21 子育て世帯や高齢者に対して,お弁当に手紙や朝昼晩のレシピを添えて届けた. b 2件
社会福祉協議会 住民ボランティア 親子 奈良 2020.07.26 b
住民組織(老人クラブ) 高齢者 奈良 2020.11.16 老人クラブで行われていた体操教室が休止になったが,仲間のつながりを感じられるように,模造紙に書かれた樹木に,1人ずつ花のシールにメッセージを書いて貼り,近況を伝え合った. a 1件
企業 高齢者と子ども 秋田 2020.09.22 園児らがデイサービスセンターに訪問するイベントが中止になったため,敬老の日を祝うために子ども達が作成したビデオレターを上映した. a 1件
教育機関(高校生) ケアマネージャー 高齢者 大阪 2020.07.26 学校教諭が,閉じこもりがちな高齢者に高校生が手紙を書くことを企画し,ケアマネージャーと協力して手紙を手渡した. b 1件
教育機関(大学生) 社会福祉協議会住民ボランティア 高齢者 大阪 2021.09.20 大学生が一人暮らしの高齢者に向けて,健康を気遣うメッセージを寄せた通信を発行し,社会福祉協議会や地域のボランティアと協力して,手渡した. b 1件
教育機関(大学生) 高齢者 北海道 2020.05.25 大学生が,自宅で過ごすことが多くなった高齢者のために,ラジオ番組を通して,高齢者が好む歌謡曲や童謡を流し,一緒に歌ったり体操したりすることを呼びかけた. b 1件
物を介した交流(18件) 非営利団体 親子 大阪 2020.05.09 子ども食堂では,食卓を囲む活動方法を変更し,弁当や食材の手渡しをすることでつながりが感じられるようにした. a 9件
非営利団体 親子 鹿児島 2021.08.23 a
非営利団体 親子 滋賀 2021.09.15 a
非営利団体 子ども 福井 2020.05.28 a
非営利団体 子ども 大阪 2020.12.16 a
非営利団体 高齢者と親子 富山 2020.12.10 a
企業 親子 東京 2021.07.07 a
地域住民(個人) 地域住民(複数人) 子ども 石川 2020.04.26 a
地域住民(個人) 地域住民(複数人) 子ども 大阪 2021.03.07 a
非営利団体 高齢者 神奈川 2020.07.21 高齢者の集いの場(体操,食事等)を利用していた高齢者や孤立しがちな高齢者の自宅に訪問し,弁当を手渡した. b 4件
非営利団体 高齢者 山梨 2020.08.02 a
非営利団体 地域包括支援センターケアマネージャー 高齢者 福島 2020.08.10 a
非営利団体 高齢者 大阪 2021.01.04 a
非営利団体 母親 奈良 2020.06.12 地域交流の場として開店した「軒下リサイクル」を,地域の母親同士が集まらずに物を譲り合うことができる形で継続した. a 1件
社会福祉協議会 地域住民(複数人) 高齢者と子ども 大阪 2021.01.03 一人暮らしの高齢者には手作りのマスクを送り,大学生には食品の詰め合わせを送る活動を行った. b 1件
社会福祉協議会 住民ボランティア 親子 奈良 2020.07.26 子育て世帯が孤立しないように,住民ボランティアが子育て家庭を訪問して食材を渡し,気軽に相談してもらえる関係づくりをした. b 1件
地域住民(個人) 地域住民全体 神奈川 2021.01.03 COVID-19流行下でも近所付き合いができるように,「私設図書館」を開設し,自由に本を借りることができる環境をつくることで,つながりを作った. b 1件
地域住民(個人) 行政 高齢者 神奈川 2020.09.07 高齢者の集いが休止になる中,フレイルサポーターが市にフレイル予防のチラシ作成を依頼し,簡単に栄養の取れるレシピなども添えて,近所の友人・知人らに手渡して回った. b 1件
つながりを感じられるように住民の作品を展示する(4件) 社会福祉協議会 地域住民全体 京都 2020.06.16 地域住民に作ってもらった折り鶴を集め,地域のつながりをモザイクアートで表現し,展示した. b 3件
非営利団体 地域住民全体 山梨 2020.09.05 b
教育機関(大学生) 地域住民全体 広島 2020.12.11 b
住民組織(ボランティア組織) 地域住民全体 東京 2020.12.11 地域の子ども達の絵を集め,町の身近な店に貼り,地域住民が作品を見ながら街歩きをすることで,地域のつながりを感じられるようにした. b 1件

※a:地域のつながりを維持するために交流方法の変更を行ったもの,b:新たに地域のつながりを築くために始めた交流,c:COVID-19前後で交流方法を変更しなくても地域のつながりを維持できたもの

1) オンラインによる対面交流

《オンラインによる対面交流》は9件あり,子ども達の居場所づくりの支援や認知症カフェなどの既存の集いの場の継続のために,オンラインを用いた交流がなされていた.また,新たなつながりの構築として電子機器の扱いが苦手な高齢者に対して地元の大学生がスマートフォンの使い方を教示し,その後オンラインでの交流を図る等の取り組みがみられた.

2) メッセージを交わす

《メッセージを交わす》は4件あり,全て新たなつながりを築くために企画されたものであった.具体的には,行政が高齢者に対してグループで健康課題に取り組むことができるアプリを紹介し,それを用いて高齢者が互いに画像やデータの共有をしたり,チャット機能を使ったりしながら励まし合い,交流を図る取り組みや,高齢者と子どもがペアになり文通を行う取り組み等がみられた.

3) 屋外での交流

《屋外での交流》は5件あり,COVID-19流行前から行われている男性高齢者らが共に農作業を行う取り組みや,母親同士の集いの場として開催している屋外でのフリーマーケットの継続がみられた.また,新たに地域のつながりを築くために,高齢者同士が誘い合って屋外に集まり,ラジオ体操を行う取り組みがみられた.

4) 感染対策を講じた屋内での交流

《感染対策を講じた屋内での交流》は9件あり,高齢者サロンや子ども達の居場所支援等を人数制限やマスクの着用,食事の際の黙食,遮蔽板の利用などを講じた上で継続されていた.新たなつながりの構築としては,高校生が,外出を控えて体力が落ちてしまった高齢者のために,自宅でできる体操を考え,感染対策を講じた上で,高齢者と一緒に体操をする取り組みや,学校行事が中止となる中,保護者や地域住民が協力して子どもの夢を個別に叶えるプロジェクトの開催等がみられた.

5) メッセージを届ける

《メッセージを届ける》は8件あり,老人クラブの体操教室が休止になっても仲間のつながりを感じられるように,模造紙に描かれた樹木にメッセージを書いた花のシールをはり,近況を伝えあっていた.新たなつながりの構築としては,大学生が高齢者に向けて健康を気遣うメッセージを寄せた通信を発行し,住民ボランティア等の協力を得て手渡しする取り組みや,高校生が閉じこもりがちな高齢者に手紙を書いてケアマネージャーと協力して手渡しする取り組み等がみられた.

6) 物を介した交流

《物を介した交流》は18件あり,子ども食堂や高齢者の集いの場では,一緒に食事をとることができないため,弁当や食材の手渡しをすることでつながりが感じられるようにしていた.新たなつながりの構築としては,住民ボランティアが行政にフレイル予防に関するリーフレット作りを依頼し,住民ボランティアが近所の友人・知人らに手渡す取り組みや,地域住民自らの発案で「私設図書館」を開設し,近所の人が自由に本を借りられるようにして,近所のつながりを維持する等の取り組みがみられた.

7) つながりを感じられるように住民の作品を展示する

《つながりを感じられるように住民の作品を展示する》は4件あり,地域住民に作ってもらった折り鶴を集め,地域のつながりをモザイクアートで表現し,展示する取り組みや,町中に子ども達の描いた絵を飾り,地域住民に作品を見ながら街歩きを楽しんでもらうことで,つながりを感じられるようにする取り組みがみられた.

以上のように,地域のつながりを維持する工夫は《屋外での交流》,《感染対策を講じた屋内での交流》の集合型と《オンラインによる対面交流》,《メッセージを交わす》,《メッセージを届ける》,《物を介した交流》,《つながりを感じられるように住民の作品を展示する》の非集合型に分けられた.記事の割合は,集合型24.6%,非集合型75.4%であった.

2. 交流の企画者ごとにつながりを維持する工夫を整理した結果

交流の企画者は,非営利団体(NPO法人,一般社団法人,社会福祉法人,青年会議所),教育機関(高等学校,大学),企業,住民組織(自治会,子育てグループ,趣味の会,老人クラブ等,複数人で構成される団体),行政,社会福祉協議会,地域住民,地域包括支援センターに分けられた.非営利団体の割合が最も多く全体の36.8%を占めた.続いて企業が14.0%,住民組織が12.3%であった(図1).

図1 

企画者ごとにみた地域のつながりを維持する工夫

企画の実施にあたっては,企画者単独で行う場合に限らず,地域住民や住民ボランティア,社会福祉協議会や行政などの協力者と協働して行われる場合もあった(表1).例えば,地域住民が企画した子ども食堂の活動を,近所に住む地域住民の協力を得て,弁当作りや配布を行う場合や,大学生が高齢者に向けて作成した通信を,社会福祉協議会や住民ボランティアの協力を得て配布する場合等である.

住民組織が企画者の場合は集合型5件,非集合型2件で集合型での実施が多かったが,その他の企画者の場合は,集合型よりも非集合型での実施が多かった(図1).

3. 交流の対象者ごとにつながりを維持する工夫を整理した結果

企画者が誰の(誰との)交流を図ったのかを整理した結果,高齢者,子ども,親子,地域住民全体,高齢者と子ども,高齢者とその家族,高齢者と親子,母親に分けられた.高齢者を対象としたものが43.9%と最も多く,続いて子ども,親子がそれぞれ15.8%であった.どの対象者の場合でも,集合型より非集合型での実施が多かったが,高齢者を対象とする場合は,集合型が10件,非集合型が15件と集合型での実施が多かった(図2).

図2 

交流の対象者ごとにみたつながりを維持する工夫

4. 期間別にみた地域のつながりを維持する工夫の記事数の推移

日本で初めて感染者が発生した2020年1月23日から2020年6月の期間には集合型の交流がみられなかった.2020年5月に厚生労働省が新しい生活様式の実践例(社会機能を低下させずに,COVID-19と長期的に付き合っていくための具体例)を発表し,2021年7月から徐々に集合型の交流の記事がみられるようになった.2021年7月から9月にかけて感染者が増えた第5波の期間には,再び集合型の交流の記事は減少し,非集合型の交流の記事が増加していた(図3).

図3 

地域のつながりを維持する工夫の記事数の推移

IV. 考察

COVID-19流行下で地域のつながりを維持する工夫について整理した結果,感染状況に応じて集合型と非集合型の工夫を使い分けていた.また,COVID-19流行を機に新たなつながりを築いている取り組みや,交流の企画者が協力者の協力を得て地域のつながりを維持・拡大している取り組みもあった.加えて,住民自らが主体的に地域のつながりを築き,健康づくりへと発展させている取り組みもみられた.

そこで,1.感染状況に応じて集合型の交流を取り入れる,2.新たなつながりの発生と協働によるつながりの拡大,3.住民主体で築く地域のつながりと健康づくりへの発展の3つの視点から考察する.

1. 感染状況に応じて集合型の交流を取り入れる

《オンラインによる対面交流》や《物を介した交流》,《メッセージを届ける》などの非集合型の交流は,COVID-19による活動制限により,直接会えない中でも交流が持てる重要な方法であると考える.高齢者にとって友人や知人と会う頻度が少なくても手紙や電話,メール等で連絡し合うような非集合型の交流がある人は交流がない人に比べ,うつが少ないことが明らかになっており(近藤,2021),心理的な面でも意味のある交流方法であるといえる.しかし,COVID-19流行下でも,高齢者の健康維持には,外出や運動,社会参加が必要である(木村ら,2020).また,幼児・小学生を持つ母親の約半数は「オンラインでは人とつながる感覚を持ちにくい」と感じている(ベネッセ教育総合研究所,2020)ことから,今回示された集合型の交流方法を参考に,実現可能な方法を模索することが求められる.

期間別にみた地域のつながりを維持する工夫の記事数の推移をみると,感染状況に合わせて,つながりを維持する方法に変化がみられたように,感染が拡大し集合型の交流が難しい場合は,非集合型でつながりを維持しながら,感染状況が落ち着いた際には,集合型の交流を取り入れることが重要であると考える.

2. 新たなつながりの発生と協働によるつながりの拡大

今回示された工夫のうち,約半数がCOVID-19流行後に新たなつながりを築くために始められた交流であったことは,着目すべき点である.なぜなら,COVID-19という健康危機が地域のつながりを強める機会になり得る可能性があるためである.

日本では特に東日本大震災後,健康の社会的決定要因の一つであり,地域のつながりや信頼感の意味を包含するソーシャル・キャピタル(カワチ,2013)の重要性が認識されており(相田,2020和泉,2015),東日本大震災後にできた地域のつながりがメンタルヘルスの回復力の向上につながっているとの報告もある(Sasaki et al., 2020b).このことから,COVID-19流行後にできた新たなつながりが,長引くCOVID-19流行下における健康の維持増進,さらには次なる健康危機発生時に乗り越える力になることが期待される.保健師には好機を生かしてソーシャル・キャピタルを醸成する役割があるため(田仲ら,2018),COVID-19流行下の今を,ソーシャル・キャピタル醸成の機会と捉える必要がある.また,地域づくり活動において,保健師には活動に必要な情報提供や活動できる場・機会の提供が求められているため(福本ら,2014),本研究で示された工夫を地域住民や関係機関に紹介するとともに,つながりがもてる場や機会を提供することが重要である.

また,今回示された取り組みとして,企画者のみが実施する場合だけではなく,住民ボランティアや社会福祉協議会などの協力者と共に行う場合もあった.具体的には大学生が高齢者に向けて,健康を気遣うようなメッセージを添えた通信を作成し,社会福祉協議会や住民ボランティアの協力を得て配布するという取り組みや,高校生が高齢者に手紙を書き,ケアマネージャーの協力を得て高齢者に手渡す取り組み等である.実際の活動としても,保健師がフレイル予防のリーフレットを作成し,配布を地域の高齢者に依頼することで高齢者同士のつながりづくりになったという報告がある(阿部,2021).地域全体につながりを広げるためには,波及していくキーパーソン(中山ら,2021田口ら,2004田仲ら,2018)や地域で活躍できる関係機関(田仲ら,2018)が重要になるため,交流の企画者が地域とつながる際にも,つながりを波及する協力者の存在があることで,人(組織)と人(組織)のつながりを拡大させることが期待できる.

COVID-19のような健康危機発生時においても地域のつながりを維持するためには,企画者・協力者になる行政や教育機関,社会福祉協議会,住民ボランティアなどが,日頃から関係づくりをしておくが大切である.健康危機発生時のコミュニティの回復スピードは,ソーシャル・キャピタルが豊かな地域ほど早い(相田,2020佐々木ら,2020a).そのため,先を見越した関係機関との関係をつくる保健師(田仲ら,2018)には,平時から地域住民や関係機関をつなぐ足がかりを築くことが求められる.

3. 住民主体で築く地域のつながりと健康づくりへの発展

地域住民や住民組織が企画した交流としては,高齢者同士が誘い合い,屋外でラジオ体操をする取り組みや,市にフレイル予防のリーフレット作成を依頼し,近所の友人・知人らに手渡して回るものがあった.地域とのつながりがあると健康危機時にも相互支援がうまれやすいため(相田,2020),COVID-19流行下においても,日頃からのつながりや信頼関係がある場合は,住民が主体的に集まったり,対面したりする活動が実施しやすいことが考えられる.住民組織が企画した交流は集合型が多かったのも,これまで築かれてきた信頼関係の結果であると言える.また,これらの交流内容が健康づくりにつながるものであったことも興味深い結果であった.

ただし,健康づくりにつながる交流を実現するにあたっては,住民が困難に感じるフレイル予防のリーフレットの作成を行政に依頼していたことから,保健師には,住民を主体とした交流を健康の視点を取り入れて実施できるように,バックアップすることが求められる.ヘルスプロモーションの推進において,住民主体の健康づくりの推進が求められるが(島内,1990),地域の健康づくりを担う住民は活動の責任が重いと感じることもあるため(當山,2012),保健師は住民と対等な関係の中で役割分担しながら一緒に活動する必要がある(松井,2021).

また,今回取り上げた記事の中には,行政が高齢者に対して,グループで健康課題に取り組むことができるアプリを紹介し,それを用いて高齢者が,お互いに励まし合いながら健康づくりに取り組む内容があった.つまり,行政は住民同士の交流を促しながら,同時に健康づくりのきっかけを作っていたと言える.保健師には,単なるグループづくりに終始せず,健康を視野に入れた活動展開が求められる(田口ら,2004).そのため,COVID-19流行下においても保健師は,住民同士の絆を大切にし,住民の主体性を引き出すこと,また,住民同士のつながりの維持にとどめず,より住民が健康になれるように働きかけることが重要であると考える.

本研究の限界は,新聞記事で取り上げられる内容に偏りがあること,加えて,新聞記者の恣意的な解釈が含まれている可能性があることである.また,2020年1月23日~2021年9月30日までの記事に限られているため,今後も継続した記事内容の整理と分析が必要である.これらの限界はありながらも,COVID-19の流行により交流が中断している地域や,集合型の交流ができていない地域において,参考にできる方法を示すことができた点は意義深いと考える.

V. 結語

新聞記事を基に,COVID-19流行下での地域のつながりを維持するための工夫について分析した結果,《屋外での交流》《感染対策を講じた屋内での交流》という集合型の交流と,《オンラインでの対面交流》《メッセージを交わす》《メッセージを届ける》《物を介した交流》《つながりを感じられるように住民の作品を展示する》の非集合型の交流が見出された.感染状況に応じて集合型の交流を取り入れること,COVID-19流行を機に新たなつながりを築くとともに,つながりを拡大すること,地域のつながりを健康づくりへと発展させることの重要性が示唆された.

本研究に開示すべきCOI状態はない.

文献
 
© 2023 Japan Academy of Public Health Nursing
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