Japanese Journal of Public Health Nursing
Online ISSN : 2189-7018
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ISSN-L : 2187-7122
Research Article
Desirable Methods for School Health Training in Basic Public Health Nurse Education: A Yogo Teacher’s Perspective
Kazue HirokaneReiko OkamotoYasuko MitsumoriEmiko Takata
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2023 Volume 12 Issue 3 Pages 171-181

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Abstract

目的:保健師基礎教育における学校保健実習の実習指導経験のある養護教諭が捉える学校保健実習の実習意義,望ましいと考える実習依頼・調整・展開方法を明らかにする.

方法:学校保健実習の実習指導経験のある養護教諭12名を対象に,フォーカスグループインタビューを実施した.

結果:実習意義は,【支援対象である子どもの理解】,【学校と行政保健の連携・協働の促進】の2カテゴリー,実習依頼・調整・展開方法は,【学校保健実習の理解の支援】,【学生の準備状況の理解の支援】などの7カテゴリーが抽出された.

考察:養護教諭は,保健師基礎教育における学校保健実習について,自身が連携する専門職の実習としての意義を捉え,それを意図した実習を展開していた.養護教諭が望ましいと考える実習依頼・調整・展開方法には,養護実習を受け入れる養護教諭ならではのものがあり,その実現方法の検討が学校保健実習の導入と継続に不可欠と考えられた.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to assess the significance of school health training from the perspective of Yogo teachers experienced in guiding basic public health nurse (PHN) education. Additionally, it seeks to explore the methods they consider desirable for requesting, coordinating, and developing such training.

Method: Focus group interviews were conducted with 12 Yogo teachers experienced in giving practical guidance for school health training in basic PHN education.

Results: The significance of school health training in basic PHN education as perceived by the Yogo teachers were divided into “understanding of children who are the target of support” and “promotion of coordination and cooperation between school and administrative health.” Furthermore, seven methods of requesting, coordinating, and developing training were extracted, including “assistance of understanding of PHN training” and “assistance of understanding of student preparation.”

Discussion: The Yogo teachers recognized the significance of school health training in basic PHN education as professional training and the importance of collaborating with and conducting the training to achieve it. The methods for requesting, coordinating, and developing school health training, as considered desirable by Yogo teachers, are unique to those who train student Yogo teachers. Therefore, exploring the implementation of these methods is essential for introducing and maintaining school health training in basic PHN education.

I. 緒言

近年,がん教育,自殺予防教育,性教育,受動喫煙防止教育など,健康政策を実現する場としての学校の重要性が増している.保健師基礎教育では,公衆衛生看護活動が展開される主要な場として学校を設定し,場の一員として活動できる基礎的な能力を養うことをねらいとして,学校保健実習の導入を推奨している(全国保健師教育機関協議会,2018).

しかし,保健師基礎教育における学校保健実習の実習指導は,保健師ではない養護教諭が主に担っている.養護教諭免許は,教育系,看護系,学際系と多様な養成機関で取得可能であることから,養護教諭が保健師資格を有する場合もあるが,その実態は明らかになっていないのが現状である.よって,実習指導を担う養護教諭は,必ずしも保健師や保健師基礎教育への理解が深いとは言えず,保健師基礎教育機関からの実習依頼・調整や実習展開にあたり,戸惑いを感じている場合もあることが推察される.実習の成果は,実習指導者の認識や考えに影響される傾向がある(冨田ら,2012)ことから,学校保健実習の実習指導を担う養護教諭の認識や考えを明らかにすることは,実習をより良いものにする方策を検討する上で重要である.

そこで,学校保健実習の実習指導経験のある養護教諭が認識する学校保健実習の実習意義を明らかにし,実習指導を行う養護教諭の視点から実施可能かつ望ましい実習内容,望ましい実習依頼・調整・展開方法を検討することを目的に調査を行った.

II. 研究方法

1. 研究対象者

保健師基礎教育における学校保健実習(以下,学校保健実習)の実習指導経験のある養護教諭のうち,研究協力の同意が得られた中国地方A市の小・中学校に勤務する市内同一保健師基礎教育機関の実習を担当した養護教諭6名(以下,FG-A),中部地方B市の小・中学校に勤務する市内同一保健師基礎教育機関の実習を担当した養護教諭6名(以下,FG-B)の2グループ計12名を対象とした.

2. 調査期間

2019年8月~11月とした.

3. 調査場所

FG-Aの養護教諭はA市内,FG-Bの養護教諭はB市内において,研究者が準備した会議室で調査を実施した.

4. データ収集方法

データは,フォーカスグループインタビューにより収集した.保健師基礎教育機関で学校保健実習を担当している教員(以下,教員)に,当該教員が担当した学校保健実習で実習指導を行った複数の養護教諭の紹介を依頼し,紹介を受けた養護教諭個々に対し,研究者が研究協力を依頼した.

インタビューは,FG-A,FG-Bそれぞれ別日に実施し,インタビューガイドをもとに,各グループ約90分間の半構造化インタビューを行った.インタビューは,対象の同意を得てICレコーダーに録音し,グループ内のダイナミクスなどの客観的情報は,研究者または研究補助者が筆記で記録した.

インタビュー開始にあたり,養護教諭の属性に関するフェイスシートの記入を依頼し,情報を収集した.収集した項目は,年齢,現在の勤務校種,養護教諭経験年数,卒業した養護教諭養成機関の種別(教育系,看護系,その他),学校保健実習の指導経験(回数,のべ日数),養護実習の指導経験回数,保健師との連携経験の有無である.

5. 調査項目

調査内容は,①「保健師基礎教育における学校保健実習の意義(以下,学校保健実習の意義)」,②「保健師基礎教育における学校保健実習で実施した実習内容およびその振り返り(以下,実習内容)」③「保健師基礎教育における学校保健実習の望ましい実習依頼・調整・展開方法」である.

6. 分析方法

録音したインタビュー内容を逐語録に起こし,語られた内容を意味内容の類似性に基づき集約してサブカテゴリーとし,サブカテゴリーを集約してカテゴリー化を行った.カテゴリー化の結果は,質的研究に精通した公衆衛生看護学分野の研究者と学校保健実習の指導者となる養護教諭に関する研究をしている研究者が妥当性の確認を行った.

本文中では,データを“ ”,サブカテゴリーを《 》,カテゴリーを【 】で示し,表中にはサブカテゴリー毎に代表的なデータを示した.

7. 倫理的配慮

研究対象者および対象者が所属する学校の学校長に対し,研究目的,方法及び自由意思の尊重と個人情報保護について書面で説明した.研究対象者には口頭でも説明し,書面による同意を得た.本研究は,畿央大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号R1-13,承認年月日2019年7月24日).

III. 研究結果

1. 研究対象者の属性

研究対象者12名の属性は,表1の通りである.勤務校種は,小学校9名,中学校3名で,卒業した養護教諭養成機関は,教育系11名,看護系1名であった.

表1. 

養護教諭の属性

年齢 勤務校種 養護教諭経験平均月数 卒業した養護教諭養成機関 学校保健実習の指導経験の平均 養護実習の指導経験の平均回数 保健師との連携経験
小学校 中学校 教育系 看護系 回数 のべ日数 あり なし
FG-A(n=6) 50.2(41~56) 4 2 325.0(180~413) 6 0 8.0 30.5 2.2 3 3
FG-B(n=6) 44.8(28~59) 5 1 252.5(92~452) 5 1 2.2 4.3 2.3 5 1

実習日数は,FG-Aは4日間,FG-Bは2日間であり,いずれも市教育委員会が保健師基礎教育機関から実習依頼を受けて当該年度の実習校を調整,各実習校は依頼された実習日数・期間で実習を受け入れていた.FG-Aの勤務する各学校に実習依頼した保健師基礎教育機関は,公衆衛生看護の基礎的な実践能力を身につけること,FG-Bの勤務する各学校に実習依頼した保健師基礎教育機関は,公衆衛生看護の実践能力を高めることを実習目的にしていた.

2. 養護教諭が考える保健師基礎教育における学校保健実習の意義

学校保健実習の意義は,【支援対象である子どもの理解】,【学校と行政保健の連携・協働の促進】の2カテゴリーが抽出された(表2).

表2. 

養護教諭が考える保健師基礎教育における学校保健実習の意義

カテゴリー サブカテゴリー 代表的なデータ
1.支援対象である子どもの理解 1)「学齢期の子ども」を理解する機会となる 今きょうだいも少なく自分しか分からなかったり,子どもたちとの関わりが年々少なくなっているので,発達段階も含めて,子どもたちの様子,学校での状態を知っておくのは有効だと思う.
保健師さんの仕事は人の一生に関わる仕事なので,その中の小学校,中学校,子どもたちの様子を見てもらうのは大変意義があると思う.
これから社会に出ていろんな年代層を見るけれども,学童期を扱うことはめったにない.そういう面ですごく貴重な時間になったって言ってくださった.
2)「今の時代の子どもと家庭」を理解する機会となる 学校だけではどうにもならないことがたくさん出てきているので,自分たちのいた学校とはもう全然違うってところをもっと見ていっていただきたい.
今の時代すごくしんどいお子さんとかおうちの方とかいらっしゃるので,そういった視点で関わっていただけるような実習は必要.
実態を知ることを経験していただくことは学生さんにとっても意義がある.
2.学校と行政保健の連携・協働の促進 1)個別支援の連携・協働がしやすくなる 昔は,地域の福祉課とかスクールソーシャルワーカーとの連携がそこまで必要と感じている生徒は少なかった.近年は,その必要性をすごく感じる.保健師実習のあり方も考えていかないといけないというのはすごく感じる.
保健師になったときにどうするべきかという立場で子どもたちを見て,私の話を聞いてくださって,(連携を促進すべきという)課題が出てきたので良かった.
学校がこういうふうに動いてるとか学校保健はこうなんだとか,保健師になられたときに理解して動けるようになったらプラスになる.学校にとってもプラスになる.
組織を含めた学校の中の様子を分かってもらって,市や関係機関との連携をやりやすくする意味では,こういう実習はすごく効果がある,意義深いと思う.
学校現場を見ておく,知っておくことは非常に大事なことだと思う.連携していくことがこれからとても大事だと思うので,お互いに必要だと思う.
ケース会議を持つときに保健師さんとか市のソーシャルワーカーの方が学校の様子を知っておいてくだされば,学校はここまでして,あとは市のほうもここまでっていうような具体的な動きの話がスムーズにいく.
子どもの実態を見ていると,学校はいろんな専門機関,市の保健師さんとの連携がもっと増えてくる時代が来るんじゃないかと思う.
2)集団支援の連携・協働がしやすくなる 学校保健委員会に来ていただくとき,保健師という立場でご意見をもらったりするので,学校の現場を実習のときに見てもらうことはすごくありがたいと思う.
出前講座で保健師に学校に来ていただくことも,お願いすることもある.これからは保健師も学校に入ってくるので,学ぶところがあるのではないかと思う.
3)実務的な連携・協働対象である養護教諭の職務を理解する機会となる 保健師さんと養護教諭の関わりは深いし,お互いに連携を取り合ってやっていく職種なので,学校を知る,養護教諭の職務を知るのは必要と感じている.
(子どもたちの)人生の中に私たちの仕事と保健師さんの仕事がすごくつながっているので,連携できるように実習してもらえたらありがたいなと思う.

カテゴリー【支援対象である子どもの理解】には,2サブカテゴリーが含まれ,《「学齢期の子ども」を理解する機会となる》では,“保健師さんの仕事は人の一生に関わる仕事なので,その中の小学校,中学校,子どもたちの様子を見てもらうのは大変意義があると思う”と考え,“これから社会に出ていろんな年代層を見るけれども,学童期を扱うことはめったにない.そういう面ですごく貴重な時間になったって(学生が)言ってくださった”ことでその考えを確固たるものとしていた.《「今の時代の子どもと家庭」を理解する機会となる》では,“今の時代すごくしんどいお子さんとかおうちの方とかいらっしゃるので,そういった視点で関わっていただけるような実習は必要”と,子どもや家庭の現代的な課題に対応する保健師に必要な経験と捉えていた.

一方,【学校と行政保健の連携・協働の促進】には,3サブカテゴリーが含まれ,《個別支援の連携・協働がしやすくなる》では,“ケース会議を持つときに保健師さんとか市のソーシャルワーカーの方が学校の様子を知っておいてくだされば,学校はここまでして,あとは市のほうもここまでっていうような具体的な動きの話がスムーズにいく”と考え,“子どもの実態を見ていると,学校はいろんな専門機関,市の保健師さんとの連携がもっと増えてくる時代が来るんじゃないかと思う”と,それが今後ますます重要になることを意識していた.《集団支援の連携・協働がしやすくなる》では,“学校保健委員会に来ていただくとき,保健師という立場でご意見をもらったりするので,学校の現場を実習のときに見てもらうことはすごくありがたいと思う”など,具体的な連携場面を挙げてその考えを述べていた.《実務的な連携・協働対象である養護教諭の職務を理解する機会となる》では,“保健師さんと養護教諭の関わりは深いし,お互いに連携を取り合ってやっていく職種なので,学校を知る,養護教諭の職務を知るのは必要と感じている”ことなどが語られた.

3. 保健師基礎教育における学校保健実習で実施した実習内容

学校保健実習で実施した実習内容は,【学校組織や学校保健のしくみの理解】,【養護教諭の役割と機能の理解】,【学齢期の子どもという対象の理解】,【学校保健における支援技術の理解】,【学校保健活動におけるPDCAの理解】,【学校保健と地域保健との連携・協働の理解】の6カテゴリーが抽出された(表3).

表3. 

学校保健実習で実施した実習内容

カテゴリー サブカテゴリー 代表的なデータ
1.学校組織や学校保健のしくみの理解 1)学校という場の理解を図る 私(養護教諭)だけじゃなくて学校長のほうがオリエンテーションをしていろいろ学校の話をする.
2)学校保健全般の理解を図る 学校保健ってどういうものか,それからまず教えていかないと.
保健指導は担任であろうと養護教諭であろうとできるんだということ,集団指導も個別指導もあることは指導している.
3)個々の学校や校種による違いの理解を図る 小学校だったらこうだよ(というように)説明する.
学校特有の子どもたちや家庭の特徴を伝える.
4)学校はチームで学校保健を推進していること(チーム学校)の理解を図る スクールカウンセラー,教育相談,市の保健師さん,病院のドクター,いろんな関係の方と私たちは関わりながらやっているので,外部連携,校内体制の話もしている.
何でも組織的に動かないといけない組織体なので,そういうところも見ていただいて,理解していただいて.
2.養護教諭の役割と機能の理解 1)学校内の学校保健の展開における役割と機能の理解を図る 養護教諭が学校の中でどんな役割を取ってるのか,どういう役割を取れる職種かということは説明する.
子どもとコミュニケーションを取ってる場面を見て,担任の先生とかは違う,ってのは捉えてくれてると思う.
2)学校外との連携・協働における役割と機能の理解を図る 実際,保健師さんに連絡して情報提供してもらうとか,こっちから情報を提供して今までの経緯を教えたりすることがすごく増えてきているので,事例をお話ししている.
3.学齢期の子どもという対象の理解 1)発達段階としての子どもの理解を図る 教室へ行ってもらって授業参観,給食は一緒に食べてもらう,帰りの会・朝の会,お掃除も一緒にしてもらう.
実習生と子どもたちが触れ合う機会を設定して,発達段階に合わせた対応の仕方を学んでもらう機会をつくる.
子どもたちとと話してもらったり,私とその子たちとの関わり方を見てもらったり.
実習生に特別支援学級に入って生活してもらった.引っ張られたり,体を張ってだったけど.
地域の中で妊娠期から生まれて育つ流れの延長に(小学校)1年生2年生3年生があって,っていうのを連続で捉えてほしい.
2)「今の時代の子どもと家庭」について理解を図る 今の子ども(小学生の子どもたち)を見たときに子育ての厳しさを知った,って(学生が感想を述べた).
子どもたちの発達の課題,子育てが厳しいなどの現状を見たときに,保健師として自分はこれからどういう動きをしていかなきゃいけないかが,よく分かったというまとめをいただいた.
4.学校保健における支援技術の理解 1)多様な子どもを支援対象とする場であることの理解を図る 低学年,中学年,高学年,特別支援に,実習生を分散させて.保健室も入れて,1日目と2日目とローテーションして.実習の終わりにみんなで共有できるような時間をつくった.
特支の教室も見てもらうけど,「各教室にもそういうふうに配慮しなきゃいけない子がたくさんいるんだってとこも見てきてね」って言って.先生たちの関わりも含め見てきてもらった.
地域の中で発達が遅れてらっしゃるお子さんとか,発達障害のお子さんとか,そういった子たちが学校に行ったときに,どういう学校生活を送るようになるのかを実際見てもらった.
不登校や保健室登校の生徒と触れ合うことができた.
2)個別支援の方法について事例を通して理解を図る 来室者の対応をした後に,問診の内容を(掘り下げて指導している).生活の様子とか生活背景などの課題を説明している.
3)個別支援の経験の機会を設定する―応急処置,来室時の問診 最初は養護教諭の問診を見て,今度は実際やってみよう,みたいな感じでやっている.子どもたちの症状の表出の仕方とその対応などを実際に経験してみる.
来室した児童生徒の問診を取ってもらい,(症状と)生活との関連の(子どもたちの)学習になってることを経験してもらう.
消毒やテープ貼ってもらったりは,してもらっている.
4)集団支援の方法について事例を通して理解を図る―健康教育の対象特性としての子どもの理解 保健師さんが学校に出前講座で来ると,指導内容が盛りだくさん過ぎる.子どもに対する話し方とかも慣れてない.(実習をしたら)保健師の出前講座も変わってくると思う.
5)集団支援の経験の機会を設定する―健康教育 (実習の)日にちが決まったところで,保健指導の時間,保健の掲示物を作るとか,学生が子どもの前で実際に体験することを仕組むように計画を立てている.
保健師っていう専門性があるので,専門性を生かせるような(体験項目を)実習に組み込んであげたいと思う.実習生が子どもの前で保健指導をするっていうことをやった.
その季節の学校保健計画の中の,今月はこれが重点になってるからこれの健康教育っていうような形.お話を聞く,見る,だけじゃなく,考えてアウトプットしていく経験も提供した.
5.学校保健活動におけるPDCAの理解 1)学校や地域の健康課題の抽出方法について理解を図る 健康診断のデータ,年間の来室者統計を見てもらって分析してもらう.データを扱う.心の問題,視力のこと,歯のこと.
朝の健康観察の(データの)活用をどういうふうにしていくかとか説明する.
(来室者の記録から)来室者統計,気になるものをピックアップする方法や担任との連携を説明する.
学校保健統計をいじってもらって,自分たちで健康課題を出してもらう場合もある.
2)学校保健計画のPDCAサイクルの理解を図る 学校保健計画を渡して,学校はこの計画を基本に健康診断とか,保健指導とか,保健管理が1年間動いてくる話をまずしている.
私たちの仕事は,計画があって,実施があって,事後があるっていう流れで行っているので,実際やって今年度はどんな反省があったとか,そういうのも提示した.
3)保健室経営計画のPDCAサイクルの理解を図る 保健室経営計画も提示して,自分はこんな考えで(保健室を)運営していってるっていうことを話した.
6.学校保健と地域保健との連携・協働の理解 1)個別支援における連携・協働を理解し,そのあり方について考察を促す 地域担当の保健師さんがいて,その人とこういう連携をしてるんだよって(事例を)見ていただきながら学生に伝えている.
子どもより保護者の方が病んでるお宅が多くて,保健師さんが中心の支援会議に担任とか養護教諭が呼ばれるという話をした.
うまくいっていない現状も伝えて,投げかけてる.
2)集団支援における連携・協働を理解し,そのあり方について考察を促す 保健師さんとどんな関わり方をしてるかを,そのとき写真や資料を見てもらったり.こういう資料を頂いたよ,とかを伝えた.実際そこにはいないので,記録資料で見ていただいたりした.
保健指導的なところで協力をいただいてることもあるので,そんな話をお伝えしたり.

【学校組織や学校保健のしくみの理解】には,4サブカテゴリー,【養護教諭の役割と機能の理解】には,2サブカテゴリーが含まれた.

【学齢期の子どもという対象の理解】には,2サブカテゴリーが含まれ,《発達段階としての子どもの理解を図る》では,触れ合う機会を重視しながら実習を展開していたことが語られた.《「今の時代の子どもと家庭」について理解を図る》では,“子どもたちの発達の課題,子育てが厳しいなどの現状を見たときに,保健師として自分はこれからどういう動きをしていかなきゃいけないかが,よく分かったというまとめをいただいた”と,学生の振り返りから提供した実習内容が間違いなかったと確信できたことが語られた.

【学校保健における支援技術の理解】には,5サブカテゴリーが含まれた.《多様な子どもを支援対象とする場であることの理解を図る》では,“低学年,中学年,高学年,特別支援(学級)に,実習生を分散させて.保健室も入れて,1日目と2日目とローテーションして.実習の終わりにみんなで共有できるような時間をつくった”など,学生の体験機会を工夫していた.《個別支援の方法について事例を通して理解を図る》では,“来室者の対応をした後に,問診の内容を(掘り下げて指導している).生活の様子とか生活背景などの課題を説明している”ことが語られた.《個別支援の経験の機会を設定する―応急処置,来室時の問診》では,“最初は養護教諭の問診を見て,今度は実際やってみよう,みたいな感じでやっている.子どもたちの症状の表出の仕方とその対応などを実際に経験してみる”などの展開方法が語られた.《集団支援の方法について事例を通して理解を図る―健康教育の対象特性としての子どもの理解》では,“保健師さんが学校に出前講座で来ると,指導内容が盛りだくさん過ぎる.子どもに対する話し方とかも慣れてない.(実習をしたら)保健師の出前講座も変わってくると思う”と,その必要性が語られた.《集団支援の経験の機会を設定する―健康教育》では,“保健師っていう専門性があるので,専門性を生かせるような(体験項目を)実習に組み込んであげたいと思う.実習生が子どもの前で保健指導をするっていうことをやった”ことなどが語られた.

【学校保健活動におけるPDCAの理解】には,3サブカテゴリーが含まれた.《学校や地域の健康課題の抽出方法について理解を図る》では,“学校保健統計をいじってもらって,自分たちで健康課題を出してもらう場合もある”などの実践が語られた.《学校保健計画のPDCAサイクルの理解を図る》では,“私たちの仕事は,計画があって,実施があって,事後があるっていう流れで行っているので,実際やって今年度はどんな反省があったとか,そういうのも提示した”などの指導の実際が語られた.《保健室経営計画のPDCAサイクルの理解を図る》では,“保健室経営計画も提示して,自分はこんな考えで(保健室を)運営していってるっていうことを話した”ことが語られた.

【学校保健と地域保健との連携・協働の理解】には,2サブカテゴリーが含まれた.《個別支援における連携・協働を理解し,そのあり方について考察を促す》では,“地域担当の保健師さんがいて,その人とこういう連携をしてるんだよって(事例を)見ていただきながら学生に伝えている”ことなどが語られた.《集団支援における連携・協働を理解し,そのあり方について考察を促す》では,“保健師さんとどんな関わり方をしてるかを,そのときの写真や資料を見てもらったり.こういう資料を頂いたよ,とかを伝えた.実際そこにはいないので,記録資料で見ていただいたりした”ことなどが語られた.

4. 養護教諭が考える学校保健実習の望ましい実習依頼・調整・展開方法

学校保健実習の望ましい実習依頼・調整・展開方法は,【実習受け入れ調整での配慮】,【学校保健実習の理解の支援】,【学生の準備状況の理解の支援】,【実習中の負担軽減】,【実習の振り返りの設定】,【実習の学生間の共有機会の設定】,【継続した関係づくり】の7カテゴリーが抽出された(表4).

表4. 

養護教諭が考える学校保健実習の望ましい実習依頼・調整・展開方法

カテゴリー サブカテゴリー 代表的なデータ
1.実習受け入れ調整での配慮 1)自治体教育組織の指示系統に沿って依頼する 最初の手順として,まず教育委員会に相談をして校長会に依頼をするとスムーズ.
養護教諭が受けるんだけども,やっぱり学校全体として受けてもらうというのが大前提.
私たち(養護教諭)のとこへいきなり来ても,私たちも結局,教頭先生,校長先生にご相談してと,話が行ったり来たりになる.
2)実習年度の各学校の事情に配慮した実習校・期間を設定する 転勤した年の1学期は大変である.
6月のまだ健康診断が終わるか終わらないかという大変な時期にこの実習があった.
3)地域の養護教諭組織に対する説明の機会を設定する 養護教諭の研修会に(保健師基礎教育機関の教員が)きて,実習のお願いのお話をされた.
4)実務上のトップである教頭を通して調整する 教育委員会,校長会を通していただいて,学校にいざ連絡のときには,養護教諭に直接ではなく教頭先生を通していただくのが一番スムーズ.
(保健師基礎教育機関の教員が)打ち合わせ来るのは夏休みだったりするから,わざわざ(実習関係の教諭に)来てもらわないといけない.だから教頭をちゃんと通してほしい.
2.学校保健実習の理解の支援 1)養護実習と目的が異なることへの理解を図る 養護教諭の資格を取りにくるためではない実習ということを散々説明された.
2)学校保健実習として求める実習の明確化(イメージ化)を図る どういう流れで行くと一番,保健師として学校の様子を知って,実習が生きるのかっていう(悩みがある).
保健師の免許を取るために来るということなので,どのように計画を立てていいのか,何を学んで帰られるのか,計画を立てる段階で悩みました.
3)個々の学生の実習に関する学習課題について理解を図る 実習で学びたいことに関する事前レポートを,学生が一人一人出してくれるので,それを見て,こんなところが学びたいんだなっていうのが事前に分かった.
養護教諭の仕事とか学校の健康管理はたくさんあり過ぎるので.「これだけはお願いします」っていうのを,実習生さんの方から出せるようにしてもらいたい.
3.学生の準備状況の理解の支援 1)学生の準備を整えたうえで,実習校に学生の準備状況について理解を図る 子どもたちからみれば先生として来てもらってるので,実習生の言葉遣いも課題だなって思った.
教育学部の学生と比べて保健師課程の学生は,子どもに慣れてない感じ.
2)実習校が学生の準備状況を直接確認できる機会を設ける 当日の朝,実習に来る方と初めて会う.学生と事前に会えるといいなっていつも思う.
それ(事前訪問)はちょっと課題なのかなって思います.
4.実習中の負担軽減 1)実習校の負担の軽減に留意した実習運営とする 保健師の実習に関しては成績の評価はせず,コメントだけです.
(成績評価を求められていないので)助かってます.
(記録物に)コメントを書くのは3行くらいですけど.
5.実習の振り返りの設定 1)養護教諭が学生の学びを把握する機会を設け,PDCAサイクルによる実習の改善と発展を図る 事後の感想とか後のレポートとか,何を学んだのかなっていうのが(ほしい)
実習が終わった後に,(学内)カンファレンスの記録を送ってきてくださる.
2)実習校同士で情報交換し,実習の改善と発展を図る 近隣の先生がたも,どこの学校が受け入れられてるのかっていうのを分かってなかったもんで,誰にも聞けずだった.
(他校がどう実習を展開しているか)そこら辺がもうちょっと分かってれば,もうちょっと有効なものができたかな.そういう情報も養護教諭間でも欲しかった.
6.実習の学生間の共有機会の設定 1)学生同士が実習体験を共有して学びを統合する実習構成とする 個々の学校でいろんな実習内容,みんな同じ実習ではない.(同じ校種でも)それぞれの学校の状態に応じて違う.所属の学年だって違うし,学びも多少違う.
他の学校の学びが(実習生同士で)できるから,学生同士で話し合って,より学びが深まるんじゃないかと思います.
7.継続した関係づくり 1)保健師基礎教育機関と実習校が実習以外においても関係を築いていく 大学には性教育とか,いろいろ来てもらうから,フィフティー・フィフティーなんです.
助産師学科の先生が性教育に講師で来ていただいているので,お互いさまなんで.

【実習受け入れ調整での配慮】には,4サブカテゴリーが含まれ,“養護教諭が受けるんだけども,やっぱり学校全体として受けてもらうというのが大前提”など,養護教諭に直接依頼することが好ましくないことが語られたことから,《自治体教育組織の指示系統に沿って依頼する》とした.また,“転勤した年の1学期は大変である”と具体的な受け入れの困難な条件が語られたことから,《実習年度の各学校の事情に配慮した実習校・期間を設定する》とした.“養護教諭の研修会に(保健師基礎教育機関の教員が)きて,実習のお願いのお話をされた”ことが好ましく捉えられていたことから,《地域の養護教諭組織に対する説明の機会を設定する》とした.“教育委員会,校長会を通していただいて,学校にいざ連絡のときには,養護教諭に直接ではなく教頭先生を通していただくのが一番スムーズ”と,教育組織体系ならではの調整方法が語られたことから,《実務上のトップである教頭を通して調整する》とした.

【学校保健実習の理解の支援】には,3サブカテゴリーが含まれ,“養護教諭の資格を取りにくるためではない実習ということを散々説明された”と,教員が学校保健実習についての理解を図っていたことが語られたため,《養護実習と目的が異なることへの理解を図る》とした.“どういう流れで行くと一番,保健師として学校の様子を知って,実習が生きるのかっていう(悩みがある)”など,悩みながら実習指導を行っていたことが語られたことから,《学校保健実習として求める実習の明確化(イメージ化)を図る》とした.“養護教諭の仕事とか学校の健康管理はたくさんあり過ぎるので,『これだけはお願いします』っていうのを,実習生さんの方から出せるようにしてもらいたい”の語りから,《個々の学生の実習に関する学習課題について理解を図る》とした.

【学生の準備状況の理解の支援】には,2サブカテゴリーが含まれた.“教育学部の学生と比べて保健師課程の学生は,子どもに慣れてない感じ”の語りから,《学生の準備を整えたうえで,実習校に学生の準備状況について理解を図る》とした.“当日の朝,実習に来る方と初めて会う.学生と事前に会えるといいなっていつも思う”などの語りから,《実習校が学生の準備状況を直接確認できる機会を設ける》とした.

【実習中の負担軽減】には,《実習校の負担の軽減に留意した実習運営とする》の1サブカテゴリーが含まれ,“(成績評価を求められていないので)助かってます”などの語りがあった.

【実習の振り返りの設定】には,2サブカテゴリーが含まれた.“事後の感想とか後のレポートとか,何を学んだのかなっていうのが(ほしい)”ことが語られたことから,《養護教諭が学生の学びを把握する機会を設け,PDCAサイクルによる実習の改善と発展を図る》とした.また,“(他校がどう実習を展開しているか)そこら辺がもうちょっと分かってれば,もうちょっと有効なものができたかな.そういう情報も養護教諭間でも欲しかった”ことが語られたことから,《実習校同士で情報交換し,実習の改善と発展を図る》とした.

その他,【実習の学生間の共有機会の設定】には,1サブカテゴリー,【継続した関係づくり】には,1サブカテゴリーが含まれた.

IV. 考察

1. 養護教諭が考える保健師基礎教育における学校保健実習の意義

学校保健実習の実習指導を経験した養護教諭は,学校保健実習の意義を高く評価していることが明らかになった.

養護教諭を研究対象者とした本研究では,学校保健実習の意義として,【支援対象である子どもの理解】,【学校と行政保健の連携・協働の促進】が抽出されたが,保健師基礎教育機関の教員を対象にした調査(廣金ら,2017)(以下,2017年教員調査)でも同様のカテゴリーが得られていた.これは,学校保健実習を依頼する側の教員も受け入れる側の養護教諭も,実習の意義の共有が可能であることを示すものである.本研究の研究対象者の多くが保健師との連携経験を有していたことから,教員が捉える意義と同様の実習の意義を実習の指導を実際に担う養護教諭が認識するためには,養護教諭と保健師との日頃からの連携・協働の実態が重要であると考えられた.

2. 養護教諭が考える学校保健実習の望ましい実習内容

本研究の研究対象者である養護教諭のほとんどが教育系養成機関を卒業していたが,自身の教育背景とは異なる看護の専門職養成における実習の指導経験を積み重ねながら,学校保健実習特有の実習内容を理解し,養護実習と共通する内容を包含しつつ,それぞれが工夫して実習指導を行っていた.また,長い養護教諭経験に裏打ちされた体験や有している事例をベースに,これまでの保健師との連携経験を加味して保健師という専門職養成において必要とされる実習を熟考し,保健師基礎教育機関が求める実習目的が果たされるよう実習を展開していた.それだけでなく,今後このようなことが保健師には必要になると思うから,というような保健師活動の今後を養護教諭なりに展望し,提供できうる実習内容を熟考し,実習を展開していることも明らかになった.それらは,前項に示した学校保健実習の意義の達成を,養護教諭が意図しながら実習指導を行っていたことを示すものである.

抽出されたカテゴリー【学校組織や学校保健のしくみの理解】,【養護教諭の役割と機能の理解】に関する実習内容は,今後保健師として連携していく連携先の理解や連携する職種である養護教諭の理解を意図して提供されていた.これは,「養護教諭2種免許取得の教育実習としての意義」が教員の実習意義のひとつに抽出された2017年教員調査と大きく異なっている点である.本研究では,“養護教諭の資格を取りにくるためではない実習ということを散々説明された”と語られたことが示すように,今回実習を依頼した保健師基礎教育機関が求めた実習は,養護教諭2種免許取得を意図したものではなかった.設定した実習目的・目標は,実際に提供される実習内容に大きく連動する.汎用的な学校保健実習の構築のためには,それらの認識の共有を図ることが,必要不可欠であると考えられた.

カテゴリー【学齢期の子どもという対象の理解】に関する実習内容は,教職課程コアカリキュラム(文部科学省,2017)でも,『幼児,児童又は生徒との関わりを通して,その実態や課題を把握することができる』が目標に掲げられていることから,養護教諭にとって展開しやすい実習内容であったと考える.

カテゴリー【学校保健における支援技術の理解】,【学校保健活動におけるPDCAの理解】,【学校保健と地域保健との連携・協働の理解】の各サブカテゴリーは,保健師に求められる実践能力と卒業時の到達目標と到達度(全国保健師教育機関協議会,2021)の大項目2「PDCAサイクルに基づき,地域の人々・関係者・関係機関等と協働して,健康課題を解決・改善し,健康推進能力を高める」能力の育成につながる実習内容群であった.養護教諭は,それらの実践した実習内容について,表3の代表的なデータに示したような具体的働きかけと展開を語った.これらの実習内容は,いずれも他の保健師基礎教育機関でも大いに踏襲できるものであると考える.

3. 養護教諭が考える学校保健実習の望ましい実習依頼・調整・展開方法

1) 実習受け入れ調整での配慮

本研究のサブカテゴリー《自治体教育組織の指示系統に沿って依頼する》,《地域の養護教諭組織に対する説明の機会を設定する》は,学校保健実習を導入している保健師基礎教育機関の教員を対象にした先行研究(廣金ら,2020)(以下,2020年教員調査)で学校保健実習導入の促進因子として抽出された〈教育委員会に出向いて説明を行う〉,〈校長会や養護教諭部会など参集の場に出向いて説明を行う〉という〔実習受け入れの合意過程を重視した調整〕と共通していた.

また,《実習年度の各学校の事情に配慮した実習校・期間を設定する》についても,2020年教員調査で,〈教育委員会主導で,学校毎(新卒勤務など)の事情に配慮し実習校を抽出〉などの〔無理なく実習受け入れできる工夫〕と共通していた.

2) 学校保健実習の理解の支援

サブカテゴリー《養護実習と目的が異なることへの理解を図る》,《学校保健実習として求める実習の明確化を図る》は,2020年教員調査で抽出された〈学校保健実習という存在を周知する努力〉,〈教育実習と異なることが理解できる説明〉,〈望む実習の明確な提示〉と共通していた.

また,《個々の学生の実習に関する学習課題について理解を図る》は,2020年教員調査では抽出されなかったが,看護学実習において実習指導者からの支援を獲得するために看護学教員が実践していることとして抽出された「学生個々の目標を説明する」(河内ら,2016)と共通していた.

これらの項目は,学校保健実習においても,実習の理解の支援のために必要な事項であると考える.

3) 学生の準備状況の理解の支援

サブカテゴリー《学生の準備を整えたうえで,実習校に学生の準備状況について理解を図る》は,2020年教員調査で抽出された〈学生の到達済みの知識・技能および経験について説明し,できることを明確に示す〉という〔学生の看護実践能力の修得状況の保証〕と共通していた.

また,本研究で抽出された《実習校が学生の準備状況を直接確認できる機会を設ける》は,養護実習における事前訪問を指している.養護教諭専修免許状及び一種免許状の養護実習は,「事前・事後指導」を含めて構成されるが,事前訪問等で指導養護教諭と実習生がより良い実習について話し合ったり準備し合ったりすることが含まれている(日本養護教諭教育学会,2019).そのため,学生の事前訪問を望んだと思われるが,公衆衛生看護学実習における学校保健実習は1日程度と目安が示されており(全国保健師教育機関協議会,2013),実際に,1~5日間の実習日数で展開されていることが多い.そのため,事前訪問を設定することは難しく,事前訪問がもつ目的を包含できるよう,教員と実習校との事前打ち合わせ等において工夫していく必要があると考える.

4) 実習中の負担軽減

サブカテゴリー《実習校の負担の軽減に留意した実習運営とする》は,2020年教員調査で抽出された〈養護教諭に評価は依頼せず,記録の確認依頼にとどめる〉という〔無理なく実習受け入れできる工夫〕に共通していた.

5) 実習の振り返りの設定

サブカテゴリー《養護教諭が学生の学びを把握する機会を設け,PDCAサイクルによる実習の改善と発展を図る》は,2020年教員調査で抽出された〈学生が素直に表現した学びを養護教諭に返し,保健師学生の視点による学びを分かってもらい,次につなげる〉などの〔養護教諭に対して学生の学びを可視化〕に共通していた.

また,《実習校同士で情報交換し,実習の改善と発展を図る》は,2020年教員調査で学校保健実習の効果的展開の阻害因子として抽出された〈実習事後の実習施設が参集しての会議ができていない〉と同じ意味であると考えられた.教員が実習場面に同席しにくい特徴のある在宅看護実習でもその必要性は示されており(杉本ら,2015),学生と指導者の実習展開場面のPDCAにあたり,同じ実習指導者の立場であるものとの情報交換の機会の設定方法を検討する必要があると考える.

6) 実習の学生間の共有機会の設定

このカテゴリーは,2020年教員調査では抽出されなかったが,これは,実習後,様々な校種や学校での実習経験を交換し,学生同士が実習での学びを発展させていく養護実習を含めた教育実習に一般的な実習後の教育方法である.学校保健実習においても,校種や学校により学びは様々になる.そのため,このような学生同士の学びの共有機会の設定は,学習効果を上げることにつながると考える.

また,学校保健実習では,複数の学生がひとつの学校で実習を行うことが多い.本研究では,学生を各学年の通常学級と特別支援学級に分けてローテーションし,実習の終わりに学生同士で体験を共有することが行われていた.これらを通して,それぞれに特徴のある子どもたちの学校の一日を学生全員で共有して意見を交換し,深めることにつながっていた.実習日数の設定が短い傾向にある学校保健実習では,実習後だけでなく,このような実習中の学生同士の情報共有の工夫も必要であると考える.

7) 継続した関係づくり

このカテゴリーは,2020年教員調査では抽出されなかったが,看護学実習において実習指導者からの支援を獲得するために看護学教員が実践していることとして抽出された〔実習指導者と円滑に良好な関係を構築できるよう,あらゆる機会にコミュニケーションを図る〕(河内ら,2016)と共通しており,これは,学校保健実習に限らず,どの実習にも共通する実習を介在した実習指導者と教員の関係性の基本であると考えられた.

8) 望ましい実習依頼・調整・展開方法の立場による相違と共通事項

養護教諭が考える学校保健実習の望ましい実習依頼・調整・展開方法は,実習を依頼する教員が意図して実践している事項に共通するものが多かったが,事前訪問や学生間の共有機会の設定など,養護実習を受け入れる養護教諭ならではのものもあった.教員が認識していない継続した関係づくりについては,看護学実習の教員と共通していた.よって,学校保健実習を導入し継続的な実施を図るためには,これらの養護教諭が望ましいと考えるカテゴリー項目について,保健師基礎教育機関の取り得る方法を検討する必要があると考えられた.

V. 研究の限界と今後の課題

本研究の研究対象者は,12人中11名が教育系養成機関を卒業していた.就業している養護教諭の卒業養成機関は,看護学系9.3%~32.2%と調査によってばらつきがあるため(池畠ら,2012久保,2012),本研究の研究対象者が,学校保健実習で実習指導を行う養護教諭をどの程度代表するかを判断することは難しく,これが本研究の限界である.

また,本研究の研究対象者は,教育委員会が保健師基礎教育機関から実習依頼を受け,当該委員会管轄の学校の中から実習校を調整する教育委員会調整型の実習において実習指導を担った養護教諭に限られた.実習依頼・調整・展開方法について一般化できる知見を見い出すためには,学校への個別実習依頼など,教育委員会調整型以外の方法で実習を受け入れた学校の養護教諭にも調査を行っていく必要があり,それが今後の課題である.

謝辞

本研究にご協力いただいた養護教諭の皆様,養護教諭の皆様と研究班との橋渡しにご尽力くださった保健師基礎教育機関の教員の皆様に,深く感謝申し上げます.

本研究は,JSPS科研費19K11237の助成を受けて実施した.

本研究に開示すべきCOI状態はない.

文献
 
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