Japanese Journal of Public Health Nursing
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Research Article
Relationship between Face-to-Face Contact with Others and Loneliness in the Early Elderly Living in Northern A Prefecture
Hazuki SaitoMichiyo Hirano
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2019 Volume 8 Issue 2 Pages 96-103

Details
Abstract

目的:前期高齢者の他者とのつきあいと孤独感との関連を明らかにする.

方法:A県の3町に居住する要介護認定を受けていない65~74歳600名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,個人要因,他者とのつきあい,孤独感(AOK孤独感尺度)で構成し,分析は,孤独感を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を用いた.

結果:調査票は回収数299部,有効回答数292部(有効回答率48.7%)であった.孤独感の平均得点は1.41±2.17点であった.友人と会うことに満足していない(OR=5.72),近所の者と会う頻度が月に数回以下(OR=2.94),近所の者と会うことに満足していない(OR=3.15),情緒的サポート受領の相手がいない(OR=2.81)者ほど孤独感を感じていた.

考察:退職などにより生活が変化し,地域への適応が望まれる前期高齢者の孤独感に対して,近所の者との定期的な接触や,友人および近所の者との間に,会えば満足感が得られる充実した関係を構築・維持することの重要性が示唆された.

Translated Abstract

Objective: This research aimed to clarify the relationship between face-to-face contact and social support from friends or neighbors and loneliness in the early elderly.

Methods: We distributed questionnaires to the early elderly (65–74 years) who are independent and residing in three areas of Northern A prefecture. The questionnaire items comprised questions regarding individual factors, relationship with friends or neighbors, and loneliness. Multiple logistic regression analysis was used, and loneliness was considered as the dependent variable.

Results: Effective responses were obtained from 292 of the 299 surveyed participants (effective response rate: 48.7%). The average loneliness score was 1.41±2.17 points. The five items significantly related to loneliness after adjusting for individual factors were as follows: not satisfied after meeting friends (OR=5.72), meeting neighbors less than a few times a month (OR=2.94), not satisfied after meeting neighbors (OR=3.15), and not receiving emotional support from others (OR=2.81).

Discussion: The data suggest that to alleviate loneliness in the early elderly who are in transition to retirement and wish to adapt to the community, they should regularly meet friends and neighbors to build or maintain a deep association with them. This will provide the early elderly with greater satisfaction when they meet their friends and neighbors.

I. 緒言

わが国では,要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう,高齢者が自らの健康管理等,自分のことを自分でする「自助」や,自発的に相互に支え合う「互助」が期待されている(厚生労働省,2012).現在,地域でそのような役割を果たせる元気な高齢者として,60代後半から70代前半の前期高齢者が着目されている.一般的に,老年期には退職や子育てからの後退により,余暇時間の拡大や生活圏の変化が生じる.前期高齢期は,これらに適応し,家庭や地域における新たな役割や楽しみを獲得する必要がある時期である.前期高齢者を対象とした本研究の第一報(田中ら,2018)では,ボランティア活動や身近な人たちとの運動など,地域での主体的な活動が高齢者の社会的孤立を予防することを報告している.一方で,地域でのつきあいをしていない高齢者は増加し(内閣府,2017),近年の研究において地域や他者とのつきあいが少ない高齢者の精神的健康が注目されている.対面接触のない者は抑うつ傾向や将来の不安が高い(小林ら,2011)ことが報告され,サポートの授受がある近隣・友人数と抑うつ傾向との関連(浅川ら,1998),ソーシャルサポートと孤独感との関連(豊島ら,2013)なども報告されている.このような精神的健康の指標のうち,孤独感においては,認知症リスクとの強い相関(野口ら,1998)も報告されている.元気に地域を支える役割が期待される前期高齢者にとって,精神的健康のみでなく身体的健康にも影響を及ぼすものとして,孤独感は着目すべき要素であるといえる.

高齢者の孤独感に関する研究では,家族・友人・近隣関係などの対人ネットワークや,社会参加などが関連要因として取り上げられている.情緒的サポート(豊島ら,2013),手段的サポートや情報的サポート(桂ら,1998)の授受や,近所づきあいの程度(小窪ら,1998a),友人と会う頻度(安藤ら,2016)など,他者との接触によるつきあいが孤独感と関係していることが明らかになっている.また,同居家族以外との接触が週に1回未満の者は,対面接触がある人に比べ,有意に私的サポートを得られず,公的サポートにもつながりにくい(小林ら,2011).さらに,近所づきあいの程度という関係の量的な側面よりも,その満足度という質的な側面が孤独感とより強く関係していること(小窪ら,1998a)も明らかになっている.これらのことから,高齢者の孤独感に対して,つきあいの頻度や人数などの量的な側面,ならびにその満足度などの質的な側面が重要であるといえる.

また,高齢者に関する研究では,積雪地帯における高齢者の生活行動の季節変動や実態について調査されている.高齢者は夏期に比べ冬期には活動量と屋外での活動時間が減少し,室内で過ごす時間が増加している(岡山ら,2004).一方で,日中の活動量に春期と冬期で有意な差は認められない(中山,2010)という結果も示されており,一致した結果がみられていない.冬期間の気象の変動は,高齢者の生活に少なくとも影響を与えていると考えられ,積雪地帯においては,高齢者の社会関係を把握するうえで,冬期間の気象の影響を考慮する必要があると考えられる.

現在,高齢者が地域で生活を続けていくうえで,心身の健康を維持するための要素として,近隣や友人等の他者とのつきあいは重要といえる.しかし,孤独感に関する既存の研究では,つきあいの量的・質的の両側面について同時に検討したもの,特に友人とのつきあいの質的側面を含んだものは十分に把握されていない.

そこで本研究は,前期高齢者を対象に,他者とのつきあいと孤独感との関連を明らかにすることを目的とする.他者とのつきあいである対面による接触および助け合いは,高齢者の安心した生活を支えるものになると考えられる.また,他者と接触する頻度や人数という量的側面に加え,そのつきあいに満足しているという質的な側面に着目することは,高齢者の孤独感を低減させ,健康の維持・増進につながる他者との望ましいつきあい方を検討する基礎資料になると考える.

なお,本稿は「A県に居住するシニア世代の他者とのつきあいおよび運動の実態に関する調査」(田中ら,2018)の第二報として報告する.

II. 研究方法

1. 用語の定義

本研究では「他者とのつきあい」を,“他者”は友人および近所の者(以下,近所),“つきあい”は対面接触における頻度と満足度,近所づきあいの程度,ソーシャルサポートの授受と定義する.

2. 対象

A県のB町,C町,D町に居住する要介護認定を受けていない65~74歳600名を対象とした.3町はA県北部に位置し,いずれも都市部から10~30 km程離れた「郊外」の町である.B町とC町には鉄道がなく,D町は都市部の主要駅まで30分を要するため,自家用車が必要となる地域である.人口はB町が約10,300人,C町が約7,800人,D町が約10,400人で構成されている.高齢化率は2017年時点でB町が24.6%であり,A県全体における値(29.7%)に対して,D町が36.6%,C町が33.0%と上回っている.気候は,A県は冬期間の積雪が多く,豪雪地帯に指定されているなかで,C町およびD町は特別豪雪地帯に指定されている(国土交通省,2017).

本研究は,3町で構成される連合の介護保険対策室に研究協力および対象者の選定を依頼した.対象者の選定は,性別を1対1の比率とした層化抽出法による選定を依頼し,各町男女100名ずつの対象者氏名および住所が記載されたラベルを作成してもらい,紹介を得た.

3. 調査方法

データ収集は,2017年6月から9月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.質問項目は,個人要因,他者とのつきあい,孤独感から構成した.他者とのつきあいは,友人と会う頻度および満足度,近所と会う頻度および満足度,よく会う友人の関係,近所づきあいの程度,ソーシャルサポートの有無から構成した.友人および近所と会う頻度は,「あなたは友人(近所の場合は『近所の方』)とどれくらいの頻度で会っていますか」の問に対し,「ほとんど毎日」から「会っていない」の5件法で尋ねた.友人および近所と会う満足度は,「あなたは友人(近所の場合は『近所の方』)と会うことにどれくらい満足していますか」の問に対し,「とても満足している」から「満足でない」の4件法で尋ねた.近所づきあいの程度は,埴淵ら(2009)を参考に,4件法で尋ねた.ソーシャルサポートの有無は,斎藤ら(2005)を参考に,情緒的サポートについては,【受領】を「あなたの心配事や愚痴(ぐち)を聞いてくれる人はいますか」,【提供】を「あなたが心配事や愚痴(ぐち)を聞いてあげる人はいますか」という質問を用い,同様に,手段的サポートについては,【受領】を「あなたが病気で数日間寝込んだときに看病や世話をしてくれる人はいますか」,【提供】を「看病や世話をしてあげる人はいますか」という質問を用い,それぞれ「いる」「いない」の2件法で尋ねた.

孤独感は,AOK孤独感尺度(安藤ら,2000)を使用した.この尺度は,「あなたはひとりぼっちだと感じますか」など,単一次元の等質な10項目で構成されている.回答は2件法であり,孤独感を示す回答に1点が与えられる.得点範囲は0~10点で,得点が高いほど孤独感が強いことを表している.

4. 分析方法

個人要因と他者とのつきあいとの関連,他者とのつきあいと孤独感との関連をχ2検定を用いて分析したのちに,対象者の孤独感と他者とのつきあいをはじめとした調査項目との関連性を検討するため,孤独感を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を用いて,オッズ比(以下,ORとする)と95%信頼区間(以下,CIとする)を算出した.独立変数として,友人および近所と会う頻度,友人および近所と会う満足度,ソーシャルサポートの有無をステップワイズ法で投入した.調整変数として,個人要因から性別,年齢,世帯状況,居住年数,主観的健康状態,冬期間の気象の外出への影響の認識を投入した.多重共線性の判断はVIFを算出し確認した.分析にはSPSS Statistics ver. 22を使用し,有意水準は5%とした.

友人および近所と会う頻度については,「ほとんど毎日」「週に数回」を「週に数回以上」群とし,「月に数回」「年に数回」「会っていない」を「月に数回以下」群とし,計2群に分けて分析を行った.また,友人および近所と会う満足度については,「とても満足している」「まあ満足している」を「満足している」群,「あまり満足でない」「満足でない」を「満足していない」群とし,計2群に分けて分析を行った.

AOK孤独感尺度の合計得点が0点の者を「孤独を感じていない」群,1点以上の者を「孤独を感じている」群とし,この2群を比較した.本研究においては,先行研究(安藤ら,2016)に基づき,無回答が2項目以下の場合には,該当項目について「孤独を感じる」方への回答に再割り当てし,尺度得点を算出した.

5. 倫理的配慮

対象者には,研究趣旨,個人情報の保護について書面にて説明し,調査票の回答および返送をもって本研究への同意を得たものとした.書面には,本研究への協力は個人の自由意思によるものであり,調査への不参加により,対象者が不利益を被ることはないことや,個人や団体が特定されないことを記載した.本研究は,北海道大学大学院保健科学研究院倫理審査委員会の承認を受け実施した(承認日:平成29年6月1日,承認番号:17-19).

III. 研究結果

配布数600部のうち,299部の回答が得られた(回収率49.8%).有効回答数は,性別もしくは年齢が無回答の者,AOK孤独感尺度の3項目以上が無回答の者,計7部を除く292部であった(有効回答率48.7%).

1. 対象者の概要

1) 個人要因

対象者の個人要因について,表1に示した.対象者は,男性147名(50.3%),女性145名(49.7%)であり,平均年齢は69.5±2.8歳であった.冬期間の気象の外出への影響の認識では,よく思う33名(11.3%),まあ思う98名(33.7%)であった.

表1  個人要因(N=292)
n (%)
性別 男性 147​ (50.3)
女性 145​ (49.7)
年齢 65~69歳 148​ (50.7)
70~74歳 144​ (49.3)
婚姻状況a 既婚 253​ (86.9)
離別 10​ (3.4)
死別 26​ (8.9)
未婚 2​ (0.7)
世帯状況a 独居 30​ (10.3)
夫婦のみ 156​ (53.6)
その他 105​ (36.1)
居住地 B町 98​ (33.6)
C町 102​ (34.9)
D町 92​ (31.5)
居住年数a 10年未満 26​ (8.9)
10~14年 23​ (7.9)
15~19年 12​ (4.1)
20~24年 17​ (5.8)
25年以上 213​ (73.2)
主観的健康状態a とてもよい 31​ (10.7)
まあよい 212​ (72.9)
あまりよくない 42​ (14.4)
よくない 6​ (2.1)
冬期間の気象の外出への影響a よく思う 33​ (11.3)
まあ思う 98​ (33.7)
あまり思わない 112​ (38.5)
ほとんど思わない 48​ (16.5)

a N=291

2) 他者とのつきあい

対象者の他者とのつきあいについて,表23に示した.友人とのつきあいについては,会う頻度は週に数回以上91名(31.4%),月に数回以下199名(68.6%)であり,会うことに満足している266名(92.7%)であった.近所とのつきあいについては,会う頻度は週に数回以上175名(60.4%),月に数回以下115名(39.6%)であり,会うことに満足している254名(87.6%)であった.ソーシャルサポートについては,情緒的サポートでは,受領の相手がいる者233名(80.6%),提供の相手がいる者237名(82.0%)であった.手段的サポートでは,受領の相手がいる者266名(91.7%),提供の相手がいる者205名(70.2%)であった.

表2  友人および近所との対面接触(N=292)
n (%)
友人と会う頻度a ほとんど毎日 15​ (5.2)
週に数回 76​ (26.2)
月に数回 117​ (40.3)
年に数回 68​ (23.4)
会っていない 14​ (4.8)
友人と会う満足度b とても満足している 66​ (23.0)
まあ満足している 200​ (69.7)
あまり満足でない 18​ (6.3)
満足でない 3​ (1.0)
近所と会う頻度a ほとんど毎日 44​ (15.2)
週に数回 131​ (45.2)
月に数回 85​ (29.3)
年に数回 25​ (8.6)
会っていない 5​ (1.7)
近所と会う満足度a とても満足している 31​ (10.7)
まあ満足している 223​ (76.9)
あまり満足でない 30​ (10.3)
満足でない 6​ (2.1)
近所づきあいの程度a たがいに相談したり日用品の貸し借りをする 46​ (15.9)
日常的に立ち話をする程度のつきあい 176​ (60.7)
あいさつ程度の最小限のつきあい 66​ (22.8)
つきあいは全くしていない 2​ (0.7)

a N=290,b N=287

表3  ソーシャルサポートの有無(N=292)
n (%)
情緒的サポート 受領の相手a いる 233​ (80.6)
いない 56​ (19.4)
提供の相手a いる 237​ (82.0)
いない 52​ (18.0)
受領の相手b いる 266​ (91.7)
いない 24​ (8.3)
手段的サポート 提供の相手 いる 205​ (70.2)
いない 87​ (29.8)

a N=289,b N=290

3) 孤独感

AOK孤独感尺度の平均得点は1.41±2.17点,中央値は0点であった.合計得点は0点151名(51.7%),1点以上141名(48.3%)で,1点以上のうち,最も多かったのは1点55名(18.8%),最高値は10点3名(1.0%)であった.

2. 他者とのつきあいと孤独感との関連

1) 他者とのつきあいと孤独感との関連(単変量解析)

対象者の他者とのつきあいと孤独感との関連について,単変量解析の結果を表4に示した.

表4  他者とのつきあいと孤独感との関連(N=292)
孤独感 感じている 感じていない P
n (%) n (%)
友人と会う頻度a 週に数回以上 27​ (29.7) 64​ (70.3) <0.001
月に数回以下 113​ (56.8) 86​ (43.2)
友人と会う満足度b 満足している 119​ (44.7) 147​ (55.3) <0.001
満足していない 19​ (90.5) 2​ (9.5)
近所と会う頻度a 週に数回以上 62​ (35.4) 113​ (64.6) <0.001
月に数回以下 78​ (67.8) 37​ (32.2)
近所と会う満足度a 満足している 109​ (42.9) 145​ (57.1) <0.001
満足していない 31​ (86.1) 5​ (13.9)
情緒的サポート 受領の相手c いる 94​ (40.3) 139​ (59.7) <0.001
いない 46​ (82.1) 10​ (17.9)
情緒的サポート 提供の相手c いる 94​ (39.7) 143​ (60.3) <0.001
いない 44​ (84.6) 8​ (15.4)
手段的サポート 受領の相手a いる 123​ (46.2) 143​ (53.8) 0.055
いない 16​ (66.7) 8​ (33.3)
手段的サポート 提供の相手 いる 85​ (41.5) 120​ (58.5) <0.001
いない 56​ (64.4) 31​ (35.6)

注)検定方法χ2検定

a N=290,b N=287,c N=289

(1) 友人との会う頻度および満足度との関連

友人と会う頻度と孤独感との関連に有意差が認められ,孤独を感じている者は友人と会う頻度が月に数回以下の者で有意に多かった(P<0.001).また,友人と会う満足度と孤独感との関連に有意差が認められ,孤独を感じている者は友人と会うことに満足していない者で有意に多かった(P<0.001).

(2) 近所との会う頻度および満足度との関連

友人と会う頻度および満足度と孤独感との分析の結果と同様に,孤独を感じている者は近所と会う頻度が月に数回以下の者で有意に多かった(P<0.001).また,孤独を感じている者は近所と会うことに満足していない者で有意に多かった(P<0.001).

(3) ソーシャルサポートとの関連

情緒的サポートにおいては,受領および提供の相手の有無と孤独感との間に有意な関連が認められ,孤独を感じている者は,情緒的サポート受領および提供の相手がいない者で有意に多かった(P<0.001).手段的サポートにおいては,受領の相手の有無と孤独感との間に有意な関連は認められなかった.提供の相手の有無と孤独感との間に有意な関連が認められ,孤独を感じている者は,手段的サポート提供の相手がいない者で有意に多かった(P<0.001).

2) 他者とのつきあいと孤独感との関連(多変量解析)

独立変数および調整変数の多重共線性を確認した結果,VIFはいずれも2未満であり,変数同士の多重共線性は認められなかった.性別や年齢などの個人要因を調整したうえでの他者とのつきあいと孤独感との関連をみるため,多重ロジスティック回帰分析の結果を表5に示した.孤独感との間に有意な関連がみられた変数は,友人と会う満足度,近所と会う頻度,近所と会う満足度,情緒的サポート受領の相手の有無であった.友人と会う満足度が「満足している」者に対し,「満足していない」者は,孤独を感じているORが5.718(95%CI: 1.017–32.135, P=0.048)であった.近所と会う頻度が「週に数回以上」の者に対し,「月に数回以下」の者は,孤独を感じているORが2.935(95%CI: 1.574–5.472, P=0.001)であった.近所と会う満足度が「満足している」者に対し,「満足していない」者は,孤独を感じているORが3.149(95%CI: 1.036–9.574, P=0.043)であった.情緒的サポート受領の相手が「いる」者に対し,「いない」者は,孤独を感じているORが2.814(95%CI: 1.019–7.770, P=0.046)であった.

表5  他者とのつきあいと孤独感との関連(N=274)
独立変数 偏回帰係数 オッズ比 95%信頼区間 P
性別(女性=0,男性=1) 0.438 1.550 0.814–2.950 0.182
年齢(65~69歳=0,70~74歳=1) 0.294 1.341 0.735–2.447 0.338
世帯状況 (同居=0,独居=1) 0.158 1.171 0.403–3.402 0.771
居住年数 (25年以上=0,20~24年=1) –1.117 0.327 0.080–1.334 0.119
(25年以上=0,15~19年=1) 0.558 1.747 0.436–7.005 0.431
(25年以上=0,10~14年=1) 0.229 1.257 0.413–3.827 0.687
(25年以上=0,10年未満=1) –0.303 0.738 0.252–2.160 0.580
主観的健康状態(よい=0,よくない=1) 0.478 1.613 0.706–3.686 0.257
冬期間の気象の影響の認識(ないと思う=0,あると思う=1) 0.790 2.204 1.190–4.081 0.012
友人と会う満足度(満足=0,満足でない=1) 1.744 5.718 1.017−32.135 0.048
近所と会う頻度(週数回以上=0,月数回以下=1) 1.077 2.935 1.574−5.472 0.001
近所と会う満足度(満足=0,満足でない=1) 1.147 3.149 1.036−9.574 0.043
情緒的サポート受領(相手がいる=0,いない=1) 1.035 2.814 1.019−7.770 0.046
情緒的サポート提供(相手がいる=0,いない=1) 1.017 2.764 0.929−8.222 0.068
手段的サポート提供(相手がいる=0,いない=1) 0.611 1.843 0.941−3.608 0.074
定数 –2.001 0.135 <0.001

注1)多重ロジスティック回帰分析

注2)判別的中率 73.0%

注3)性別,年齢,世帯状況,居住年数,主観的健康状態,冬期間の気象の影響の認識を調整変数として投入.友人および近所とのつきあい,ソーシャルサポートの有無を目的変数としてステップワイズ法で投入.

IV. 考察

1. 他者とのつきあいと孤独感との関連

他者とのつきあいのうち,前期高齢者の孤独感の有無に影響を与えている要因は,友人と会う満足度,近所と会う頻度および満足度,情緒的サポート受領の相手の有無であった.積雪地域に居住する前期高齢者においては,積雪による外出への影響の認識にかかわらず,友人や近所と会うことに満足していない者や,近所と会う頻度が月に数回以下の者,情緒的サポートをしてくれる相手がいない者が孤独を感じているといえる.ORから,近所と会う満足度よりも友人と会う満足度が,より孤独感に影響を与えていると考えられる.また,友人と会う頻度は,多変量解析のモデルに投入されなかったことから,孤独感に対しては,友人と近所とのつきあいのどちらにおいても,会う頻度よりも満足度が影響を及ぼしていた.

高齢者に関する研究において,一緒に趣味などの活動をしたり,余暇を過ごす関係「交遊」は「情緒的一体感」と重なる次元であり,その相手は友人・知人が多い(西村ら,2000)ことや,郊外部の高齢者では,浅い交流としての「日常的・義務的な交流」に対し,深い交流としての「生きがいを感じる交流」は別居家族や趣味等の友人を中心に行う(三原ら,2000)ことが明らかになっている.高齢者の趣味の活動などを通じたより親密なつきあいは,友人を中心に行われていると考えられる.

また,孤独感に関しては,近所づきあいの程度よりも満足度の方が孤独感との相関係数が大きい(小窪ら,1998b)ことや,情緒的一体感を感じる近隣・友人の数が,孤独感を低減させる(浅川ら,1998)ことから,孤独感には,満足度や一体感のような質的・情緒的側面も重要である.さらに,高齢者における対人的ネットワークの中では,友人関係が最も強く孤独感と関係している(小窪ら,1998b).本研究の結果は,友人および近所とのつきあいの満足度の高さが前期高齢者の孤独感に影響しており,これらの孤独感に関する先行研究と同様の結果を示している.また,本研究では,近所とのつきあいにおいてのみ,つきあいの頻度も孤独感に影響しており,友人との関係との差異が示唆された.

現在,平均寿命および健康寿命が延伸し,65歳を迎えても健康度の高い高齢者は,地域を支える立場としての活躍が期待されている.前期高齢期は生活の場として地域に適応し,地域活動の中で楽しみや生きがいを得て,心身の健康の維持をはかることが望まれる時期だといえる.その契機として,地域内で友人などの他者との対面接触によるつきあいを行うことは孤独感の軽減に重要と考えられる.本研究の対象者は現在住んでいる町に25年以上居住している者が多く,平均年齢を勘案すると,40代頃より現在の町に居住し,地域内で友人や近所との関係をもっている者が多いと推察される.一方で,地域でのつきあいがなく,退職などを機に,地域への適応にむけ,新たなつきあいを構築しなければならない者も存在すると推測できる.本結果から,孤独感を低減させるうえで,近所との間には,会う頻度が必要であるが,それに加え,友人および近所とのつきあいでは,頻度によらず,会えば満足度が得られるような親密な関係が重要だといえる.このような関係の構築および維持のためには,主に対面のもとで行われる,楽しみや充実感をもたらすような趣味の活動などを契機に,会う際の満足感を高めることが前期高齢者の時点で精神的健康を維持するために望ましいと考えられる.

友人および近所とのつきあいの他に,情緒的サポートの受領が孤独感と有意に関連していた.50~75歳を対象にした豊島ら(2013)の研究では,情緒的サポートの授受の有無の認知が孤独感を低減させることが示されている.一方で,独居高齢者の孤独感を軽減する要因として,手段的サポートを報告している研究(桂ら,1998)も存在している.豊島ら(2013)によると,手段的サポートは直接的な問題介入や,問題解決につながる情報提供や援助を示すため,孤独感という主観的経験とは関連が低いと述べられている.本研究の結果,情緒的サポートの受領の有無が前期高齢者の孤独感に影響しており,豊島ら(2013)の研究結果と同様の傾向にあるといえる.

普段からよく会う友人との関係では,悩みを打ち明けるなどの会話コミュニケーションが,高齢者が日常生活を安心して過ごす上で重要な機能を果たしている(丹野,2010).ソーシャルサポートの中でも,自分の心配事や愚痴を人に聞いてもらうという情緒的サポートの受領により,友人をはじめとした誰かに自分のことを打ち明けられるという安心感,満足感が,孤独感を軽減させると考えられる.他者の心配事や愚痴を聞く情緒的サポートの提供は,相談役を担い他者を助ける行為であり,自身の安心感などの感情には関係せず,孤独感自体には影響しなかったと推測できる.また,本研究の対象者は要介護認定を受けていない前期高齢者であり,看病や世話などのサポートを多くは必要としていないと考えられる.これにより,他者と互いに世話をするなどの手段的サポートが前期高齢者の孤独感に影響しなかったと推察される.高齢期は加齢に伴い健康度の衰退や死別による独居など,サポート源の喪失やサポートの必要度の増加が予測される.したがって,現時点の前期高齢期の孤独感への効果に加えて,後期高齢期における地域での支えあいへの効果にむけ,サポートの授受を重視したつきあいを構築および維持していくことが必要といえる.

2. 研究の限界

1つ目に,本研究の対象者は,A県の3町に居住する要介護認定を受けていない74歳以下の者であることから,結果の一般化については検討が必要である.2つ目に,孤独感を有無として2群化したことから,孤独感の有無に関する影響は判断できるが,より強い程度の孤独感に対する影響要因は判断できないといえる.3つ目に,他者とのつきあいにソーシャルサポートの相手の有無を変数として用いたが,教示文で明確な定義をしておらず,友人や近所に限定されないサポート相手や,非対面によるサポートの授受もモデルに含まれている可能性がある.そのため,ソーシャルサポートに関する解釈には十分な注意を払う必要がある.

今後は,親族などとの関係性や非対面接触にも着目し,同居および別居家族との親しさや家庭内役割等の関係性,外出の頻度なども考慮した調査が必要だと考える.

V. 結語

A県の3町に居住する前期高齢者の孤独感に関連する要因を検討した結果,友人と会う満足度,近所と会う頻度および会う満足度,情緒的サポート受領の相手の有無が孤独感との関連を示した.前期高齢者は,他者とのつきあいにより感じる楽しさなどの感情を通し,つきあいに満足することで孤独感を軽減できることが示唆された.高齢者は加齢に伴い健康度の低下や死別による独居等,心身および社会的な喪失を経験することが予測される.前期高齢期より友人との充実した交流および近所とよく会う充実した関係の構築や維持をすることが,後期高齢期に日常生活でのサポートが必要になった際の,友人や近所によるサポートの受領および提供にもつながると考えられる.

謝辞

本研究にご協力いただきました対象者の皆様,並びに自治体の皆様に心より感謝申し上げます.また,本研究に対し貴重なアドバイスをくださいました前北海道大学大学院保健科学研究院の佐伯和子教授に感謝申し上げます.

本研究に開示すべきCOI状態はない.

文献
 
© 2019 Japan Academy of Public Health Nursing
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