Japanese Journal of Public Health Nursing
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ISSN-L : 2187-7122
Research Article
Relationship between Changes Perceived by Participants in Voluntary Health Promotion Activities and Their Participation in Community Activities
Haruka OdaMami KikuchiNami YamauchiHibiki TakenakaHiroki AbeMiki OichiRyuta OnishiMichiyo Hirano
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2020 Volume 9 Issue 3 Pages 146-155

Details
Abstract

目的:健康づくり自主活動参加者が捉える活動参加による変化と地域活動への参加の関連を明らかにする.

方法:A市B区の健康づくり自主活動の参加者152名を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った.調査内容は基本属性,所属活動グループの特性,健康づくり自主活動参加による活動内での変化,地域活動への参加状況で構成し,地域活動への参加頻度を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った.

結果:健康づくり自主活動参加による活動内での変化として,7割以上が友人の増加,友人との仲の深まり,情報量の増加,社交性の向上,主体性の向上を捉えていた.情報量の増加(OR=5.064),社交性の向上(OR=7.598),主体性の向上(OR=3.231)を認識した者ほど,地域活動への参加頻度の増加を捉えていた.

考察:健康づくり自主活動参加者は,能動的な活動への参加を通じて社交性や主体性の向上を実感できることで,地域活動への参加を拡大できる可能性がある.

Translated Abstract

Objective: We aimed to determine the relationship between changes resulting from engagement in voluntary health promotion activities and participation in other community activities by elderly people living in a community, to emphasize the perceived benefits of participation and provide insights into how to promote participation in other community activities.

Methods: We enlisted 152 elderly people who engaged in voluntary health promotion activities. Each participant completed an anonymous self-report questionnaire, which included questions regarding basic attitude, characteristics of the voluntary health promotion group, perceived changes after engaging in voluntary health promotion activities, and their participation in other community activities. Multiple logistic regression analysis was conducted using the frequency of participation in other community activities as the dependent variable.

Results: More than 70% elderly people were aware of the changes that they experienced after engaging in voluntary health promotion activities, including making new friends and bonding with friends during an activity, increasing knowledge of the community, and feeling more sociable and independent. The items significantly related to the frequency of participation in other community activities, after adjusting for individual factors, were increased knowledge of the community (OR=5.064), increased sociability (OR=7.598), and increased independence (OR=3.231).

Discussion: To promote participation among members of voluntary activities in other community activities, it is important to implement measures that facilitate them acquiring information, and upgrading personality traits by allowing them to create content for the activities themselves.

I. 緒言

近年,地域包括ケアシステムの構築が推進されており,住民が主体となって運営する通いの場における健康づくり活動(以下,健康づくり自主活動)の活性化が求められている.健康づくり自主活動は,住民同士での支え合いのもと,身近な生活の場で活動ができるため,より多くの高齢者が健康増進や介護予防に継続的に取り組める場として期待されている(厚生労働省,2017a).

健康づくり自主活動の活動形態の特徴として,参加者の中に必ずしも健康づくりサポーターやボランティアがいるとは限らないことが挙げられる.参加者全員が活動内容の検討に関与し,活動内で役割を担い,会場準備から片付けまでを行う特徴がある(厚生労働省,2017b).そのため,健康づくり自主活動の参加者には能動的な参加態度が求められる.参加者は,能動的に活動に参加することで,主体性や社交性の向上,活動内での新たな友人関係の形成,地域に関する情報の獲得といった活動内での変化を経験すると予測される.

これらの健康づくり自主活動参加による活動内での変化は,参加者の地域活動全般への参加に結びつく可能性がある.実際に,健康づくり自主活動への継続的な参加が町内会行事などの地域活動への参加につながるとされている(保田,2011).健康づくり自主活動は,住民主体の活動という特徴を持つことから,身体的健康の増進に加え,参加者の地域でのつながりを形成するきっかけとして機能する可能性がある.

高齢者が地域活動への参加により地域でのつながりを構築・拡大することは,フレイル予防(吉澤ら,2019)や生活満足度の向上(石川ら,2009a)のため重要である.一般的に高齢期は,退職や子育ての終了に伴い,余暇時間の拡大や社会関係の変容が生じる時期である.高齢者は,こうした変化に適応し,地域を基盤とした人とのつながりを自身の社会関係に取り込むことで,健康で充実した暮らしを営むことができる.

地域活動に関連する研究は,地域参加の規定要因(Talo, 2018),地域参加による効果(Haldane et al., 2019)などについてシステマティックレビューにより報告されている.一方,健康づくり自主活動に関連する先行研究は限られており,主に質的研究が多く,活動の発足過程や(福嶋ら,2014),参加および継続の要因(後藤ら,2016),活動参加による効果(百瀬ら,2001),健康づくりに対する経験と価値(石川ら,2009b)が報告されている.また,量的研究では,活動参加と心身社会的健康との関連(本田ら,2010)や社会経済的要因との関連(Osborne et al., 2008)が報告されているが,健康づくり自主活動参加による活動内での変化を具体的に取り上げ,地域活動への参加との関連について報告した研究はない.健康づくり自主活動参加による活動内での変化と地域活動への参加との関連の検証により,高齢者の地域とのつながりの構築・拡大における健康づくり自主活動の役割・機能を明確化できる.それにより,今後の健康づくり自主活動のあり方および支援について検討することができる.

そこで,本研究は健康づくり自主活動参加による活動内での変化の実態を参加者の認識を通じて明らかにする.さらに,健康づくり自主活動内での変化と地域活動への参加との関連を明らかにする.

II. 方法

1. 研究デザイン

量的記述的横断研究デザインとした.

2. 対象者の選定および対象地域

対象者は,A市B区の5ヶ所の健康づくり自主活動に登録している65歳以上の高齢者のうち,調査実施日の活動に参加していた152名とした.対象者の選定は,まずB区C介護予防センターに対象者の紹介を文書と口頭にて依頼した.次に,C介護予防センターが支援を行っている健康づくり自主活動グループ13ヶ所のうち,協力が得られた5ヶ所について紹介を受けた.

対象者が居住するA市B区は,人口約13万人,世帯数約6万5000戸,高齢化率約30%であり,A市内でも特に高齢化率の高い地区である.A市では地域包括支援センターと介護予防センターが介護予防活動を行っている.介護予防センターは,介護予防教室の運営や教室を健康づくり自主活動に発展させる支援,結成後の健康づくり自主活動に対するアフターフォローの支援を行っている.13ヶ所の健康づくり自主活動は活動歴1~3年のグループであり,週1回から月1回程度の活動を行っている.活動内容は介護予防や健康増進を目的とした体操を基本として,グループの活動目的に応じて「お茶会」などをプログラムに取り入れている.これらの健康づくり自主活動に対し,C介護予防センターは運営上の相談や運動指導・健康講話などを通じて支援している.

3. データ収集方法

2018年7月~9月,無記名自記式質問紙を用いた集合調査を実施した.研究者が健康づくり自主活動の開催日に会場に出向き,その場で調査票の配布と回収を行った.対象者には,文書と口頭にて研究概要および研究協力への拒否権,協力取り止めの権利,その他倫理的配慮事項について説明した.研究への協力には無理強いせず,協力に前向きな意志がある者のみ調査票への回答をするよう促し,調査票の回答および回収をもって研究協力への同意とみなした.なお,調査票は対象者用とグループ代表者用の2種類を用意し,グループ代表者には両方の調査票への回答を依頼した.

4. 調査項目

調査内容は,基本属性,所属する活動グループの特性,健康づくり自主活動参加による活動内での変化,健康づくり自主活動参加後の地域活動への参加状況で構成した.以下の調査内容は,高齢者が適切かつ容易に理解できる内容とするため,高齢者13名に対する予備調査と,C介護予防センターの社会福祉士の確認によって,表面妥当性を確保した.

1) 基本属性

基本属性は,性別,年齢,家族構成,現住所の居住歴,最終学歴,暮らし向きの6項目で構成した.

2) 所属する活動グループの特性

グループ代表者用の調査票を用いて,活動グループの登録者数,活動頻度,活動内容の3項目について回答を求めた.活動内容は「体操」,「脳トレ」,「お茶会」,「レクリエーション」,「外出行事」,「専門職からの講話や指導」について複数選択で回答を求めた.

3) 健康づくり自主活動参加による活動内での変化

健康づくり自主活動参加による活動内での変化の設問は,先行研究と,C介護予防センター社会福祉士に対するB区の健康づくり自主活動に関する聞き取り内容を参考に検討した.先行研究では,健康づくり自主活動への参加が,参加者の社会関係の拡大や自己認識の変化に寄与すること(百瀬ら,2001),支え合う友人関係の構築や情報交換の機会となること(石川ら,2009b)が報告されている.また,B区の自主活動参加者は能動的に活動内で役割を担うことが求められ,参加者間の交流では,積極的な情報のやり取りや,友人関係の構築が生じている.

これらを踏まえ,本研究では参加者の活動内での変化として,活動内での友人関係の拡大や関係の深まり,活動内での役割や地域に関する情報の獲得に着目した.また,参加者の社会的側面に関する自己認識の変化として,能動的な活動参加や他者との交流により社交性と主体性の向上が生じている可能性に着目した.

以上の検討を経て,設問は,「この活動内の友人が増えた(以下,友人の増加)」,「この活動内での友人との仲が深まった(以下,友人との仲の深まり)」,「この活動内の自分の役割が増えた(以下,役割の増加)」,「この活動に参加することによって,地域・地域住民の情報量が増えた(以下,情報量の増加)」,「この活動に参加することによって,社交的になった(以下,社交性の向上)」,「この活動に参加することによって,自分の判断で行動することが増えた(以下,主体性の向上)」の6項目で構成した.各設問に「そう思う」から「そう思わない」の4件法で尋ねた.

4) 健康づくり自主活動参加後の地域活動への参加状況

健康づくり自主活動参加後の地域活動への参加状況の項目は,先行研究とB区の地域活動の実情を踏まえ以下の手順で検討した.まず,高橋ら(2000)の社会活動の4側面のうち社会参加・奉仕活動の側面の項目をもとに,「地域行事や町内会」,「趣味の会」,「ボランティア活動」の3種類の地域活動を取り上げた.次に,B区では複数の健康づくり自主活動が行われており,特定の者が複数の活動グループに参加する場合があるため,「他グループ」を地域活動として追加した.そして,健康づくり自主活動参加後の4種類の地域活動について主観的な参加頻度の増加を測定した.なお,主観的な参加頻度の増加を測定した理由は,高齢者を対象に,横断研究デザインにおいて,健康づくり自主活動参加の前後の地域活動参加頻度の数値を問うことは困難であると考えたためである.

各設問は「地域行事(お祭り・盆踊りなど)・町内会活動への参加頻度が増えた」,「地域内の他のグループへの参加頻度が増えた」,「趣味の会など仲間うちの活動への参加頻度が増えた」,「ボランティア活動への参加頻度が増えた」とした.回答選択肢は,「そう思う」から「そう思わない」の4件法で尋ねた.

5. 欠損値の取り扱い

本研究では,152名のうち32名に欠損値が確認された.年齢と性別が未記入の2名と,「健康づくり自主活動参加による活動内での変化」または「活動参加後の地域活動への参加状況」の項目が全て欠損していた5名は分析対象外とした.残り25名のうち,「健康づくり自主活動参加による活動内での変化」または「活動参加後の地域活動への参加状況」の一部の項目に欠損がみられた16名に対し予測値の代入を行った.なお,基本属性等の上記項目以外の欠損値には代入は行わず,欠損データとして扱った.代入処理を行った理由は,代入処理をせずに多変量解析行うと結果に偏りが生じる可能性や検出力の低下が生じるため(中山,2018)である.

予測値の代入手順は以下の通りである.初めに欠損値を含むケースの群と含まない群に分け,全ての変数に対してχ2検定または,Mann-WhitneyのU検定を行い,群間差がないことを確認した.次に,hot deckの手法により類似したケースを特定し,その値を代入した.類似ケースの特定では,まず欠損ケースが持つ欠損項目と他の変数における相関係数を算出した.その上で,相関係数の高い変数から順番に,欠損ケースと同値を持つ他のケースを探し,この操作を繰り返すことで1つのケースに絞り込み類似ケースとした.

6. 分析方法

分析に際し,健康づくり自主活動参加による活動内での変化の項目は,「そう思う」「まあそう思う」を「思う群」,「あまり思わない」「そう思わない」を「思わない群」とした.健康づくり自主活動参加後の地域活動への参加状況は4種類の地域活動のいずれかについて,「そう思う」「まあそう思う」を選択した者を「『地域活動への参加頻度の増加』を思う群」,4種類全ての地域活動に対して「あまり思わない」「そう思わない」を選択した者を「『地域活動への参加頻度の増加』を思わない群」に分類した.

分析手順は,まず健康づくり自主活動参加による活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加との関連を検証するためχ2検定またはFisherの直接確率検定を行った.次に,基本属性と所属グループの特性を制御した上で,健康づくり自主活動参加による活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加の関連を検討するため,「地域活動への参加頻度の増加」を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.説明変数は健康づくり自主活動参加による活動内での変化の6項目とし,制御変数は性別,年齢,家族構成,現住所の居住歴,所属グループの登録人数,所属グループの活動頻度,活動内容(お茶会の有無)とした.各変数を強制投入法により投入してロジスティック回帰モデルを構築し,オッズ比(以下,OR)と95%信頼区間(以下,95%CI)を算出した.なお,モデル構築にあたり,制御変数と説明変数間での多重共線性がないことを確認するため,各変数のVIFが10未満であることを確認した.解析にはJMP Pro14を使用し,有意水準は5%とした.

7. 倫理的配慮

C介護予防センター,健康づくり自主活動の代表者ならびに対象者に対し,研究概要や個人情報の取り扱いについて文書と口頭にて説明した.特に調査票の配布の際,研究協力への自由意志および協力拒否権,研究協力への同意の撤回権の保障について丁寧に説明し,研究協力しない場合でも一切不利益は被らないことを伝えた.また,調査票の回答に際する対象者の負担軽減のため,調査項目は厳選し,回答選択肢等の工夫について十分吟味した.本研究は北海道大学大学院保健科学研究院倫理審査委員会の承認を受け実施した(承認日:2018年7月25日,承認番号:18-29).

III. 結果

配布数152部,回収数152部(回収率100.0%),有効回答数は145部(有効回答率95.4%)であった.

1. 対象者の基本属性(表1
表1  対象者の個人要因 N=145
  n %
性別 41​ 28.3
104​ 71.7
年齢 平均±SD 77.27±6.96
家族構成a 一人暮らし 31​ 22.1
夫婦のみ 62​ 44.3
二世代,三世代世帯 32​ 22.9
その他 15​ 10.7
居住歴b ~10年 24​ 16.7
11年~20年 16​ 11.1
21年~30年 48​ 33.3
31年~40年 46​ 31.9
41年~ 10​ 6.9
最終学歴c 小学校 4​ 2.8
中学校 16​ 11.3
高等学校 96​ 68.1
短大・大学以上 23​ 16.3
その他 2​ 1.4
暮らし向きd 非常に心配 3​ 2.1
多少心配 54​ 37.8
それほど心配ない 61​ 42.7
全く心配ない 25​ 17.5
所属組織の特性 登録人数 50人未満 61​ 42.1
50人以上 84​ 57.9
活動頻度 週1回 42​ 29.0
週1回より少ない 103​ 71.0
活動内容 体操 あり 145​ 100.0
なし 0​ 0.0
脳トレ あり 97​ 66.9
なし 48​ 33.1
お茶会 あり 78​ 53.8
なし 67​ 46.2
レクリエーション あり 126​ 86.9
なし 19​ 13.1
専門職による講話や指導 あり 97​ 66.9
なし 48​ 33.1

an=140,bn=144,cn=141,dn=143

性別は男性41名(28.3%),平均年齢は77.27±6.96,家族構成は「一人暮らし」31名(22.1%),居住歴は「10年以下」が24名(16.7%),「21年~30年」以下の年数の者が88名(61.1%)であった.

2. 対象者の所属グループの特性(表1

登録人数が50名以上のグループの者は84名(57.9%),活動頻度が週1回のグループの者は42名(29.0%)であった.活動内容に「お茶会」が含まれるグループの者は78名(53.8%)であった.

3. 健康づくり自主活動参加による活動内での変化(表2
表2  健康づくり自主活動参加による活動内での変化 N=145
n %
友人との仲の深まり そう思う 52​ 35.9
まあそう思う 75​ 51.7
あまりそう思わない 13​ 9.0
そう思わない 5​ 3.4
友人の増加 そう思う 66​ 45.5
まあそう思う 59​ 40.7
あまりそう思わない 14​ 9.7
そう思わない 6​ 4.1
情報量の増加 そう思う 49​ 33.8
まあそう思う 69​ 47.6
あまりそう思わない 24​ 16.6
そう思わない 3​ 2.1
社交性の向上 そう思う 40​ 27.6
まあそう思う 70​ 48.3
あまりそう思わない 25​ 17.2
そう思わない 10​ 6.9
主体性の向上 そう思う 41​ 28.3
まあそう思う 63​ 43.4
あまりそう思わない 34​ 23.4
そう思わない 7​ 4.8
役割の増加 そう思う 24​ 16.6
まあそう思う 33​ 22.8
あまりそう思わない 39​ 26.9
そう思わない 49​ 33.8

健康づくり自主活動参加による活動内での変化について「友人との仲の深まり」の「『そう思う』『まあそう思う』」との「思う群」は127名(87.6%),「友人の増加」の「思う群」は125名(86.2%),「情報量の増加」の「思う群」は118名(81.4%),「社交性の向上」の「思う群」は110名(75.9%),「主体性の向上」の「思う群」は104名(71.7%),「役割の増加」の「思う群」は57名(39.3%)であった.

4. 健康づくり自主活動参加後における地域活動への参加状況(表3
表3  健康づくり自主活動参加後における地域活動への参加状況 N=145
n %
趣味の会への参加頻度の増加 そう思う 34​ 23.4
まあそう思う 52​ 35.9
あまりそう思わない 43​ 29.7
そう思わない 16​ 11.0
地域行事・町内会活動への参加頻度の増加 そう思う 25​ 17.2
まあそう思う 54​ 37.2
あまりそう思わない 48​ 33.1
そう思わない 18​ 12.4
地域内の他グループへの参加頻度の増加 そう思う 20​ 13.8
まあそう思う 52​ 35.9
あまりそう思わない 53​ 36.6
そう思わない 20​ 13.8
ボランティア活動への参加頻度の増加 そう思う 16​ 11.0
まあそう思う 42​ 29.0
あまりそう思わない 53​ 36.6
そう思わない 34​ 23.4
地域活動への参加頻度の増加a 思う 106​ 73.1
思わない 39​ 26.9

a:「趣味の会への参加頻度の増加」「地域行事・町内会活動への参加頻度の増加」「地域内の他グループへの参加頻度の増加」「ボランティア活動への参加頻度の増加」のいずれかにおいて「そう思う」「まあそう思う」を選択した者を「思う」,全てにおいて「あまりそう思わない」「そう思わない」を選択した者を「思わない」に分類した.

健康づくり自主活動参加後の地域活動への参加状況について「趣味の会への参加頻度の増加」を「そう思う」「まあそう思う」と回答した者は86名(59.3%),「地域行事・町内会活動への参加頻度の増加」を「そう思う」「まあそう思う」と回答した者は79名(54.5%),「地域内の他グループの活動頻度の増加」を「そう思う」「まあそう思う」と回答した者は72名(49.7%),「ボランティア活動への参加頻度の増加」を「そう思う」「まあそう思う」と回答した者は58名(40.0%)であった.

上記の4種類のうちいずれか1つでも「そう思う」「まあそう思う」と回答した者で構成される「地域活動への参加頻度の増加」の「思う群」は106名(73.1%),4種類全てにおいて「あまりそう思わない」「そう思わない」と回答した「地域活動への参加頻度の増加」の「思わない群」は39名(26.9%)であった.

5. 健康づくり自主活動参加による活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加との関連の単変量解析(表4
表4  健康づくり自主活動参加による活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加との関連(単変量解析) N=145
地域活動への参加頻度の増加 P
思う(n=106) 思わない(n=39)
n % n %
自主活動参加による変化 友人との仲の深まり 思う(n=127) 96 75.6 31 24.4 0.069a
思わない(n=18) 10 55.6 8 44.4
友人の増加 思う(n=125) 94 75.2 31 24.8 0.154
思わない(n=20) 12 60.0 8 40.0
情報量の増加 思う(n=118) 94 79.7 24 20.3 <0.001
思わない(n=27) 12 44.4 15 55.6
社交性の向上 思う(n=110) 91 82.7 19 17.3 <0.001
思わない(n=35) 15 42.9 20 57.1
主体性の向上 思う(n=104) 88 84.6 16 15.4 <0.001
思わない(n=41) 18 43.9 23 56.1
役割の増加 思う(n=57) 48 84.2 9 15.8 0.015
思わない(n=88) 58 65.9 30 34.1

注)検定方法χ2検定

a:Fisher’s exact test

単変量解析の結果,健康づくり自主活動参加による活動内での変化のうち地域活動への参加頻度の増加と有意な関連が認められたのは,情報量の増加,社交性の向上,主体性の向上,役割の増加であった.

6. 健康づくり自主活動参加による活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加との関連の多変量解析(表5
表5  健康づくり自主活動参加による活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加との関連(多変量解析) N=139
偏回帰係数 オッズ比 95%信頼区間 P
制御変数 性別 –0.217 1.000
0.649 0.163–2.581 0.539
年齢 75歳未満 0.362 1.000
75歳以上 2.061 0.668–6.361 0.209
家族構成a 一人暮らし 0.540 1.000
同居者あり 2.947 0.886–9.805 0.078
居住歴b 30年以下 –0.114 1.000
31年以上 0.796 0.287–2.209 0.661
所属組織の登録人数 50人未満 –0.200 1.000
50人以上 0.671 0.112–4.022 0.662
所属組織の活動頻度 週1回より少ない 0.379 1.000
週1回 2.133 0.212–21.501 0.521
所属組織の活動内容 お茶会なし 0.037 1.000
お茶会あり 1.076 0.212–5.466 0.930
説明変数 友人との仲の深まり 思わない –0.066 1.000
思う 0.877 0.094–8.203 0.908
友人の増加 思わない –0.798 1.000
思う 0.203 0.019–2.178 0.188
情報量の増加 思わない 0.811 1.000
思う 5.064 1.564–16.398 0.007
社交性の向上 思わない 1.014 1.000
思う 7.598 2.016–28.632 0.003
主体性の向上 思わない 0.586 1.000
思う 3.231 1.100–9.484 0.033
役割の増加 思わない 0.494 1.000
思う 2.686 0.906–7.963 0.075
定数項 0.460

注1)多重ロジスティック回帰分析

注2)モデル適合度指標

モデルχ2検定:χ2値48.811,p<.0001 AIC:145.649 AUC:0.845 判別的中率:82.734

注3)「地域活動への参加頻度の増加」を目的変数としてモデルを構築

注4)性別,年齢,居住歴,所属組織の登録人数,所属組織の活動頻度,所属組織の活動内容 を制御変数として投入.自主活動参加による変化の6項目を説明変数として強制投入.

a:家族構成は「一人暮らし」を独居,「夫婦のみ」「二世代三世代世帯」「その他」を同居者ありに分類.

b:居住歴は「~10年」「11~20年」「21~30年」を30年以下,「31~40年」「41年~」を31年以上に分類.

多変量解析の結果,健康づくり自主活動参加による活動内での変化のうち地域活動への参加頻度の増加と有意な関連が認められたのは,情報量の増加(OR=5.064, 95%CI: 1.564–16.398),社交性の向上(OR=7.598, 95%CI: 2.016–28.632),主体性の向上(OR=3.231, 95%CI: 1.100–9.484)であった.

IV. 考察

1. 健康づくり自主活動が参加者に与える変化の特徴

8割以上の参加者が,活動内での友人の増加や友人との仲の深まりを感じていた.健康づくり自主活動は,参加者が交友関係を維持,拡大するための場として機能していると考えられる.また,7割以上の参加者が社交性と主体性の向上を捉えていた.健康づくり自主活動参加による自己認識の変化の一側面として,参加者の新たな自己や価値観の発見が報告されているが(百瀬ら,2001),社交性と主体性の側面は本研究により初めて示された.健康づくり自主活動は,運営者と参加者の役回りが分かれた他の活動と異なり,参加者が一様に役割を担い,能動的に参加することが多い.そのため,参加者は一部の人に限らず,社交性や主体性の向上を捉えたと考えられる.高齢者の外向性の高さとフレイルへの罹患の少なさが関連する(Stephan et al., 2017)ことを踏まえると,健康づくり自主活動は体操などの直接的な健康増進に加え,外向性の向上を介した間接的な健康増進の効果も期待できる可能性がある.

一方,役割の増加を認識した者は4割程度と他の変化に比べ少ない割合に留まった.健康づくり自主活動は,できる限り多くの参加者が役割を担うことで,参加者全員で協力して運営することが特徴である(厚生労働省,2017b).しかし,実際には,特定の参加者に役割が偏っている可能性や,参加者が何らかの役割を担っていたとしてもそれを役割と捉えていない可能性が推察される.

2. 健康づくり自主活動参加による活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加との関係

多変量解析において,健康づくり自主活動参加後の地域活動への参加頻度の増加と関連が認められた項目は,情報量の増加,社交性の向上,主体性の向上であった.

地域に関する情報獲得は社会活動の実施の関連要因である(坂上ら,2017)ことを踏まえると,本研究の参加者も健康づくり自主活動での情報獲得をきっかけに地域活動の参加を拡大していたと推察される.また,地域活動への参加により地域への関心が高まり,健康づくり自主活動内での情報獲得が促された者もいると推察される.地域に関する情報獲得が地域活動の参加と密接に関わっていることが本研究により再確認された.

社交性の向上を捉えた者は,新たな地域の人々との関係構築における心理的ハードルが低下したことで,地域活動への参加頻度の増加に結びついたと考えられる.一方,地域活動への参加頻度の増加に伴って人との交流や地域活動への意識が変化し,健康づくり自主活動において社交性が高まった者もいたと推察される.外向性が高い高齢者は,社会的役割が維持されやすいとされており(岩佐ら,2010),健康づくり自主活動や地域活動全般への参加をきっかけに,参加者の社交性が向上することは高齢者の社会とつながる力を保つ上で重要だと考えられる.

主体性の向上を捉えた参加者は,自分の判断で能動的に行動するようになったことで,自己選択的に他の地域活動へ参加するようになったことが推察される.一方,様々な地域活動への参加を通じて主体的に行動するようになり,健康づくり自主活動においても主体性の向上を捉えた者もいたと推察される.Tomioka et al.(2017)は社会参加が心身の健康に良好な効果をもたらすには,自発的に社会参加している必要があると報告している.主体性を伴って健康づくり自主活動などの地域活動に参加することは,単に地域とのつながりが強化されるだけでなく,参加者の心身の健康増進としても意味があると考えられる.

一方,健康づくり自主活動における交友関係の変化は,活動参加後の地域活動の参加頻度と関連がみられなかった.自主活動のメンバーと他の地域活動のメンバーは必ずしも一致せず,自主活動内での交友関係の変化は,活動内部における人間関係の変化に留まることから,地域活動の参加との関連がみられなかったと考えられる.活動内での仲間の存在は活動の継続要因(後藤ら,2016)とされており,活動内での交友関係は,参加者の意識を活動外ではなく活動内に向ける働きを有していると推察される.

3. 今後の健康づくり自主活動のあり方と支援への示唆

健康づくり自主活動は,社交性と主体性といった社会関係の拡大に関わる参加者の自己認識について,一部の参加者に限らず変容を促す可能性がある.また,健康づくり自主活動参加者の活動を通じた社交性や主体性の向上は,活動参加後の地域活動への参加と関係することが示唆された.健康づくり自主活動の運営では,参加者が受け身にならず,能動的に参加できるような体制整備が,参加者の地域とのつながりの形成に向けて重要である.

保健師は,健康づくり自主活動に対し,活動発足からの専門職の手を離れるまでの支援過程の中で,参加者の情報獲得,社交性や主体性の向上に着目し,関わることが重要である.これにより,健康づくり自主活動が参加者の社会関係を拡大する機能を強化できる可能性がある.

4. 本研究の限界と今後の課題

1つ目に,本研究は研究デザイン上の限界がある.本研究は健康づくり自主活動の活動内での変化と活動参加後の地域活動への参加について因果関係を想定しつつも,因果関係の検証が難しい横断研究デザインで計画されている.また,本研究は横断研究デザインであるため,健康づくり自主活動内での変化と地域活動への参加頻度の増加を数値の変量として捉えられず,対象者の主観に基づいて測定している.これによる思い出しバイアスが生じた可能性がある.2つ目に,健康づくり自主活動参加による活動内での変化の項目は信頼性と妥当性が検証されていない.3つ目に,本研究はB区の限定的な地域における健康づくり自主活動のデータであるため,一般化には限界がある.また,B区の13ヶ所のグループから便宜的に5ヶ所が選択されており,選択バイアスの可能性が否めない.4つ目に,対象者の健康状態や元々の地域活動への参加状況を考慮した分析はできていない.今後は,本研究の結果を踏まえ,仮説検証型の縦断研究デザインにて,多様な健康づくり自主活動における活動内での変化と地域活動への参加との因果関係の検証が求められる.

謝辞

本研究を進めるにあたり,アンケートに調査にご協力いただいた皆様,ならびに調査に多大なるご協力をいただきましたC介護予防センター職員の皆様に心より感謝申し上げます.なお,本研究に開示すべきCOI状態はない.

文献
 
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