2023 年 43 巻 2 号 p. 60-66
序論:クマによる外傷は増加傾向にある。クマ外傷の特徴や診療の注意点を検討した。
方法:2016年1月から2020年12月までに当院で経験したクマ外傷について,診療録を基に後ろ向きに性別,年齢,受傷状況,受傷部位,初期治療,受傷後の経過について検討した。
結果:男性8例,女性2例で,平均年齢は73歳であった。10月の午前中,晴れ,人の生活圏(里山地域),頭頚部や上肢に受傷した例が多かった。顔面に受傷した半数以上で顔面骨骨折を認め,全例で軟部組織損傷を認め,即日再建手術が行われた。全例で予防的抗菌薬が投与され,感染例は認めなかった。
考察:受傷月や受傷時間,受傷部位は他の報告と同様であったが,受傷場所は他の報告と異なっていた。これは,里地里山の荒廃や食糧不足などでクマが人の生活圏に出現し,人里での受傷が増加したことによると考えられる。今後もクマ外傷は増加する可能性があり,特徴を把握することは治療に有用である。