日本レーザー歯学会誌
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学術論文
Er,Cr:YSGGレーザー照射歯質に対するコンポジットレジンの接着強さ
王 翔宇岩田 有弘保尾 謙三吉川 一志山本 一世
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2021 年 31 巻 2 号 p. 58-67

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抄録

近年,様々なレーザーが開発され,様々なレーザーが歯科治療に使用されている。その中のEr,Cr:YSGGレーザーは硬組織切削が可能である。今回我々はEr,Cr:YSGGレーザー照射後のエナメル質,象牙質に対する1ボトル1ステップボンディングシステムによるコンポジットレジンの接着強さと臨床的な器具による変性象牙質の除去が接着強さに与える影響について検討した。1ボトル1ステップボンディングシステムとして,G-BOND PLUS(GC,GP),AdperTM EASY BOND(3M,EB)を使用した。被験歯として牛歯を用い,エナメル質,象牙質にレーザーを均一に照射したレーザー照射(LI)と非照射(Control)の歯質接着強さを計測した。また象牙質についてはレーザーによる変性象牙質の除去を目的として,レーザー照射後,20秒間リン酸エッチング処理(LI+PA),レーザー照射後20秒間ラウンドバー,もしくはスプーンエキスカベーターにて切削(RB,SE),その後20秒間リン酸エッチング(RB+PA,SE+PA)の5条件で接着強さを計測し,破断面のSEM観察を行った(n=5)。測定結果は二元配置分散処理およびTukeyの検定により統計処理を行った(P<0.05)。なお本実験は,大阪歯科大学動物実験委員会の承認を得て行われた(承認番号16-09004)。
Er,Cr:YSGGレーザー照射がエナメル質,象牙質接着強さに与える影響について二元配置分散分析を行った結果,接着システムおよびレーザー照射の有無は,エナメル質の引張接着強さに対して影響は与えず,両因子による交互作用は認められなかった。しかし,接着システムおよびレーザー照射の有無は,象牙質の引張接着強さに対して高度に有意な影響を与え,両因子による交互作用が認められた。変性象牙質の除去が象牙質接着強さに与える影響について,RB群の引張接着強さは,GPではLI,LI+PA,SE+PAより,EBではLI,SE+PAより有意に高かった。今回の実験結果でEr,Cr:YSGGレーザー照射後の歯質に対する1ボトル1ステップボンディングシステムの接着についてEr,Cr:YSGGレーザー照射後のエナメル質への接着強さは良好であるが,象牙質への接着強さは問題があり,接着強さの回復に検討が必要であることが示唆された。またEr,Cr:YSGGレーザー照射象牙質へのラウンドバーによる変性層の除去は,コンポジットレジンへの接着強さの回復に有効であった。

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