日本レーザー歯学会誌
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歯牙硬組織切削におけるEr: YAGレーザーの照射方向による形態学的影響
善入 邦男井上 昌孝吉川 一志白石 充井上 正義熊崎 護
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1999 年 10 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

Er: YAGレーザーを, エナメル小柱あるいは象牙細管の走行に対して平行および直角に照射し, 照射面の形態学的特徴と照射方向との関連性について検討した. 大阪歯科大学歯科保存学講座および口腔外科学講座にて採取した新鮮抜去臼歯を, 歯科用ディスクによって注水下で近遠心的に2分割し, 耐水ペーパー (#600番) で研磨仕上げを行った. Er: YAGレーザー機器としてはアーウィン (モリタ社・ホヤ社製) を用いた. 照射方向は, エナメル小柱あるいは象牙細管の走行に対して平行 (平行照射), および直角 (直角照射) とした. 照射条件は, 180mJ, 1ppsとし, エナメル質においては2秒間, 象牙質においては1秒の照射とした. レーザー照射したエナメル質面・象牙質面, および照射による切削片を通法によって金蒸着し, SEM観察した. エナメル質への直角照射においては花咲き状の像が観察され, 平行照射ではロッド状の像が認められた. 切削片は, 平行照射の方が垂直照射に比べて大きかった. この理由は, エナメル小柱および小柱間質よりも小柱鞘の方が水分含有量が多いため, 水に対する吸収率が高いEr: YAGレーザーの照射によって小柱鞘が選択的に破壊され, 直 角照射よりも平行照射の場合が, 破壊が大きくなったものと考えられた. 一方, 象牙質面においては, 照射方向の違いによる形態学的特徴の差はあまり見られなかった. これは, エナメル質に比べて象牙質の水の含有量が十数倍多いため, 照射方向による切削の異なりに差が現われなかったものと考えられた.

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