日本レーザー歯学会誌
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超短パルスレーザー照射による硬組織の組織学的評価
内園 岳志五十嵐 章浩加藤 純二平井 義人毛利 大介粟津 邦男
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2006 年 17 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

近年, レーザーパルス幅がピコ秒からフェムト秒オーダーである超短パルスレーザーが様々な分野に応用されている。このレーザーは, 最小限の熱影響で, 金属や半導体, 高分子材料そして生体組織を加工することが可能である。歯科分野において, 既存のレーザーシステムでの治療もしくは基礎研究から, 硬組織の熱影響またはクラック発生などの副作用が報告されている。記述した特性を持つている超短パルスレーザーは, このような問題の解決を期待できるため, 硬組織への超短パルスレーザー照射効果の有効性が研究されている。本研究では, 歯牙硬組織への超短パルスレーザーの照射効果の有効性及び安全性を評価するために, 超短パルスレーザー照射前・後の歯牙硬組織の形態的な変化と光学的な変化を調べた。照射対象はプレート状に加工したウシ歯エナメル質・象牙質であった。レーザーは, 発振波長800nm, 繰り返し周波数1kHz, パルス幅130fsecのTi: sapphireレーザーを使用した。レーザーの平均パワー密度は, 90, 180, 360W/cm2であった。レーザー照射後の対象の照射表面はSEMとEDXを用いて評価した。対象の光学的変化の評価は, FTIRを用いた対象の吸収スペクトル変化の観察によって行った。SEM観察によつて, 超短パルスレーザーの照射は, 硬組織表面の炭化及びクラックを誘起せずに切削が可能であることが明らかとなった。EDX計測において, レーザー照射前・後の硬組織のP/Caは変化しておらず, また, FTIR計測では赤外吸収スペクトルの変化は照射前・後で変化は見られなかつた。レーザー照射の場合, これらの変化が起こる要因は, 主に熱的な影響であることが報告されていることから, 超短パルスレーザーは熱影響を最小限にして硬組織を切削できることが明らかとなった。

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