2025 年 3 巻 2 号 p. 55-56
第60回日本理学療法学術研修大会にて,IFPOHEと日本産業理学療法研究会によるProfessional Session 2”a basic introduction to OHP:Occupational Health Physiotherapy Practice”が開催された.7か国による産業保健理学療法の実践紹介,IFPOHEメンバーのポスター発表,参加型の事例検討を通じ,各国の多様性と共通する専門職としての役割が共有された.国際連携の重要性を再確認し,今後の日本における活動発展への示唆が得られた.
2025年6月1日,第60回日本理学療法学術研修大会のプログラムの一つとしてProfessional Session 2 “A Basic Introduction to OHP: Occupational Health Physiotherapy Practice(産業保健理学療法の実践に関する基礎)”が東京国際フォーラムにおいて開催されました.本セッションは,IFPOHE(The International Federation of Physical Therapists Physiotherapists Working in Occupational Health and Ergonomics)と日本産業理学療法研究会の合同企画として,IFPOHE登壇者および研究会国際委員会のメンバーを中心に企画・運営を進めたものです.
今回のセッションは「相互交流」を目指して,言語の壁を越えて学び合うことを重視しました.英語でのセッションではありましたが,有志メンバーによる通訳サポートや日本語訳付きスライドを用意したことで,登壇者と参加者の双方向的なやり取りが促進されました.英語による初めての質疑に挑戦する参加者もおり,活発な意見交換が行われたことは,国際的なつながりを実感する貴重な機会となりました(図1).

左から,Gayline Manalang先生(フィリピン),Marco Leppe先生(チリ),Kjerstin Stigmar先生(スウェーデン),Vasiliki Sakellari先生(ギリシャ),Yvonne van Zaanen先生(オランダ),Rose Boucaut先生(オーストラリア)
セッションは,IFPOHE代表・Rose先生によるIFPOHEの紹介から始まりました.続いて,オーストラリア,オランダ,ギリシャ,スウェーデン,チリ,フィリピン,日本の7か国から,産業保健理学療法の実践と課題に関する発表が行われました.各国の背景(産業保健分野の成り立ち,保険制度,文化,職業特性,理学療法士の歴史・権限など)は大きく異なり,求められる活動やアプローチも多様です.しかし,「労働者が最大限の能力を発揮できるよう支援する」という産業保健チームにおける理学療法士の役割は,どの国でも共通していることが印象的でした.
続くポスター発表では,IFPOHEメンバー4名による研究発表が行われました.登壇者の希望により,参加者と距離の近い会場前方で発表が行われ,国際学会さながらの臨場感と密度の高い議論が展開されました.
最後の事例検討は,2名のIFPOHEメンバーによるクイズ形式の参加型セッションでした.国や職域によって主要な対象疾患や介入が異なることを実感し,産業保健理学療法の視点が多様であることを改めて理解できる内容でした.また,講師が実際にドライバーに指導している体操を会場全体で体験する場面もあり,会場が一体となって身体的にも心理的にもリラックスした雰囲気に包まれました(図2,3).


産業保健理学療法とは,理学療法士が産業医学を基盤に専門的知識を生かし,働く人々の心身機能の維持・改善,快適で安全な職場環境の形成,労働生産性向上に寄与する活動です(日本産業理学療法研究会, 2024).
日本ではまだ比較的新しい分野ですが,既に蓄積された海外の知見を参考にしつつ,日本の現状に適した活動を構築していくうえで,国際的なネットワークの構築と日本の取り組みの発信が不可欠であることを,今回のセッションを通じて改めて実感しました.国際委員会では,今後も日本と世界をつなぎ,日本の産業保健理学療法がより社会に根ざすよう,試行錯誤を続けながら活動を展開してまいります.引き続き皆様のご支援を賜りますとともに,ご意見やご要望がありましたら,ぜひお寄せください(図4).

今回のセッション開催にあたり,多くの皆様より多大なるご支援を賜りました.快く登壇をお引き受けいただき,企画段階からともに議論を重ねてくださったIFPOHEメンバーの皆様,準備から当日の運営に至るまで尽力くださった国際委員会のメンバーの皆様,そして日本産業理学療法研究会ならびに日本理学療法学術研修大会の事務局の皆様をはじめ,ご協力いただいたすべての方々に心より感謝申し上げます.