抄録
片肺欠損は稀な疾患で輪状軟骨などの気道疾患や先天性心疾患などの合併症を有する症例が多く, 呼吸器症状を示さずに経過するものから重篤な呼吸不全に陥るものまで様々である.今回, 私共は生後5ヶ月時に感染を契機に初めて喘鳴が出現した大血管による気管の圧迫狭窄と気管軟化症を伴う右肺欠損の1男児例を経験した.本症例では病態に即した体位が非常に効果的であり, その病態把握に気管支ファイバースコピーやCTによる形態学的評価と, 換気量モニターによる機能的評価が有用であった
自験例を含め1990年から2003年までの報告33例の片肺欠損症例における呼吸障害の重症化因子の検討では,(1) 欠損肺側が右側,(2) 2本以上の大血管による気管の圧迫狭窄,(3) 気管軟化症または輪状軟骨を伴う,(4) 呼吸器症状出現時期が出生後早期である, 以上4点が重要と考えられた.