1992 年 3 巻 1 号 p. 35-41
気管支拡張症による進行性の呼吸不全を呈したcommon variable immunodeficiencyの1例を経験した。5歳頃から両側下腿に皮下膿瘍が出現し, 以後下気道感染を繰り返し8歳時には両側の気管支拡張症が認められた。12歳から低IgA血症, 続いて低IgG血症が出現し, 下気道感染が難治となったため15歳時からγ-globulin置換療法を開始した。免疫学的検査ではT細胞系B細胞系両系の機能不全を認め, common variable immunodeficiencyと診断した。置換療法開始後は, 一時的に感染頻度が減少したが, 呼吸状態は進行性に悪化した。18歳時肺炎を契機に呼吸不全が増悪し, 肺性心をきたした。一時的に在宅酸素療法も可能であったが, 19歳時呼吸不全により死亡した。原発性免疫不全症候群において繰り返す下気道感染は気管支拡張症を合併し, 予後に決定的な影響を与える。特にT細胞機能不全を有する場合, 肺合併症に対して早期からのより緻密な日常管理が必要と思われる。