日本補綴歯科学会雑誌
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欠損歯列における咬合支持と短縮歯列の考え
その運用と限界
五十嵐 順正山下 秀一郎藤牧 伸成丸山 雄介桐原 孝尚
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2003 年 47 巻 5 号 p. 721-735

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抄録

種々な原因により歯が失われ, 欠損を生じたなら顎堤の治癒を待ってただちに欠損補綴することは, 歯科補綴学において従来からのいわばゴールデンルールとして万人に認知されてきた.現在も多くの臨床・教育場面でこのコンセプトは生き続けている.しかし, 一方では補綴装置の装着により, 多面的な残存諸組織の障害が発生し, 齲蝕・歯周病・顎堤吸収が惹起され, 次第に残存歯を損なって行くという実態も否めない事実であることが明らかとされてきた.近年, 歯の欠損, 特に後方大臼歯のみの欠損は, 補綴しないほうが良いのではないかという考え方が現れてきた.オランダのKayserらは1981年以来一連の臨床論文を発表し, この短縮歯列 (Shortened dental arch: SDA) の考えを喧伝してきた.現在では, 西欧から北欧において, 教育の場においてもこの考え方が主流となりつつある.日本補綴歯科学会では, 2003年度にこの問題に対し, はじめての臨床シンポジウムを行い, これまでの臨床, 研究上の問題点の洗い出し, 現状における顎機能研究, 臨床疫学的検討などから, 学会としての一定のコンセンサスを得たいと思って活動をはじめた.本稿は第1回目のシンポジウムを踏まえ, そもそも短縮歯列とはいかなる考えで生じてきたものか, 従来の咬合支持の概念と何が異なるのか, 短縮歯列の危険性はないのかなどについて論考した.

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